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白の賢者 ~転生先は魔法の世界~  作者: 春野霞
第一章 
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6 原っぱの奥は綺麗だった

 あたし、背が少し伸びたみたい。テリトリーも結構広がったよ。我が家を中心に500メートルくらい。まだ走ったりするとバランス取れなくってこけちゃう事も有るけど、ずいぶん早く歩けるようにはなったのよ。家の奥の原っぱも500メートルくらい奥まで毎日踏み固めて道を作ってたりする。


 あたしの魔力って、どのくらいになったんだろう。伸び率が落ちてしまったのは仕方ないけどね。だって魔力が空になるまで【認識】君も【魔力探知】さんも使え切れないのよ。魔力を空にすると伸びるって仮定が正しいとすると、空にしないといけないんだけどねぇ・・。


 ふと、魔法を使うのでなくて、魔力を放出したらどうかしらと思いついた。魔力を放出する魔法を魔力を放出して使う、あれ?どっちがどう先になるか・・・って、オッカムの剃刀パターンかしらこれ?


 それは置いておいて


 驚いた事に我が家には魔力の固まりが有ったのよ。しかもキッチンに。そう、コンロの中に5ミリくらいの石(魔石って言うそうだ)が入っていて、ガスレンジみたいに熱を放出するの。放出すると魔力が抜けて行って、空になる。使えなくなっちゃうから交換しないといけないんだとか、プロパンガスのボンベみたいな物って事な訳ね。

 それにあたしがガス充填じゃなくて魔力充填できないかしら・・って。ちなみに文明の利器らしきものはコンロだけでした。水道も冷蔵庫も無い、お風呂すら無くって、エアコンなんて夢のまた夢。

 まあ、四季の寒暖の差があまり強く無いから、石で出来た暖炉みたいな所で木を燃やした位で過ごせてるんだけどね。


 かーさまに無断で持ち出しちゃったよ、空になった魔石。火が出て火事になったらいやだから、ポケットに隠しておいてお外でね。


 原っぱの真ん中で魔石を取り出して両手で包み込むようにしながら、魔力充填、魔力を充填、まりょくをこめる、はいりなさいよぉ・・・と念じつつ・・・無理だった。

 思えば出来るくらいなら皆やってますよね。


 【魔力探知】さんの逆をすればいいのかしら。【魔力探知】さんは魔力を感じ取る、すなわち魔力を受け入れるって事だから、その逆をすれば魔力が放出できるのかも。


 両手に魔力が集まって、手のひらが熱くなり始めて・・・これは成功か、と思ったらぴきっと手の中から音が。手を開いてみると魔石が割れていた。

 あわわ、どうしよう、かあさまにばれちゃうぅぅ。

 割れた欠片を組み合わせて一つにしてくっついてぇと願っても、割れてしまったものがそうそう元に戻るはずもないですよね。


 お家に帰って、恐る恐る「魔石をいたずらしていたら落としてしまって、割れちゃったの」と、かーさまに言ったら案の定こっぴどく怒られた。

「危ないから駄目でしょうが」鬼の目ってのはこの事かと。その夜はジュースを貰えなくてベッドで泣きましたとも。



 ポケットに小さく割れてしまった魔石の欠片が残っていたのを見つけて、もう一度チャレンジしてみたのは数日後の事。前回に懲りて、ゆっくりと魔力を注ぎ込んでみたら、あっけなく充填されてしまい拍子抜けしちゃった。ほんの小さな欠片なので大した魔力は貯められてないと思うけど、やったぁって飛び上がって喜んじゃったよぉ。

 これって、元通りに使えるのかなあ?小さすぎて砂粒ほどのそれを手のひらに載せてしげしげと見ながら、もっと魔力込めたら割れちゃうのかな、そんな疑問を持ってしまったあたし。


 実験実験。もう一度魔石の欠片を手のひらで包む様にしながら、魔力を注ぎ込んでいくと・・・なんと言う事でしょう、魔石がじわじわと大きくなっていくではないですか。

いや、リフォームの番組じゃないですけどね


 考えてみると、魔石というのは魔動物が魔力を溜め込んで結晶化した物だから、魔力を増やせば大きくなるっていうのも頷ける事だわ。どこまで大きくなるのかしら。興味深々に魔力を注ぎ込んでみた。



  安易な行為は最悪な結果をもたらすと言うのは頭に浮かばなかったのよ、この時は。



 次第に大きく成長(?)して行く魔石に面白くなってどんどんと持っていた魔力を注ぎ込んでいったわ。どのくらいまで大きくなるんかしら。失敗だったのは生まれてからずっと繰り返し魔法を使い続けていた自分の魔力がどれ位に大きくなっていたのかまで考えが及ばなかった事。気づいたら魔石は手のひらに余るほどの大きさに大きくなってしまっていたの。


 こ、これは、まずいわ。こんなものかーさまには見せられない。爆発とかはしないと思うけど、雷が落ちて発火とかしたら困るし、元がコンロなんだから・・・その辺に放置とかも危なくって出来ない、どうしよう。

 そうだ、この先に湖があるって誰かが言っていたわ。水の中なら火事にならないし、そこにぽいって捨ててしまえば良い。


 魔石をしっかりと片手で抱え込んで、どんどんと原っぱの奥へと進んでいく。なぜ片手かって?、草を掻き分けなくちゃいけないじゃない。

 はあ、はあ、意外と草の掻き分けって大変。何せ胸くらいまであるから子供の力しかないあたしは息を荒くしながらも進んでいく。 

 原っぱの奥にたどり着くと、当然その先の森の中へ入っていく事になり、下草がまばらな樹の間を縫うようにして歩いて行ったわ。


 しばらく歩いたけど、まだ湖までたどり着かないよ。だんだんと足も疲れてきた。ふと、行くての樹木の間にぽかっと空き地のような開けた空間があるのに気づいて、歩きやすそうだと方向を変えて進むあたし。なんだか空気が重くなった様に進みにくくなったけど、強引に足を進めてくの。なんなんのこれ、強い風に向かって歩いたり、海の中で走ろうとした時のような感じで思うように進めない。 


 ふっと抵抗が無くなって、進むのが楽になったと思ったら、目の前には大きな老樹と小さな泉が在って、透き通った清水がこんこんと湧いている不思議な光景。

 うわ、きれい。樹の枝から漏れる木洩れ陽がかすかに揺れる泉の水に反射してきらきらと、少しの間そんな光景に目を奪われて立ち尽くしてしまうけど、いけない、目的はこの魔石の処分。


 湖って言うのがどのくらい遠い所なのかわからないあたしは、ここで処分しても良いかしらと思ったのよ。一応水だから火事にはならないだろうし。目撃されたら現行犯・実行犯って事になるじゃない、念入りに辺りを見回して人影がないのを確認してから、泉へと魔石を落としたよ。


ちゃぽんっ。


音を立てて魔石が泉の中に沈んでいく・・・しめしめ、証拠隠滅完了だわ、とほくそ笑んでいたら、泉の水がまるで沸騰したかのようにごぼごほと音を立て初めたのよ。次第に渦を巻き始めていく様を目にすると慌ててしりもちをついてしまったあたし。


 や、やばいのかしら。魔石って、水に入れちゃいけなかったの?魔石がキッチンのコンロに使われていた事しか知らないあたしは、思っても居なかった状況に座り込んだまま後ずさり。


 やがて水面が静かに落ち着くと青く光り始め、その光が空中へと飛び上がると人のような形になって行ったの。な、なによこれ、あたしのせい?ど、どうしよう。こんな事になっちゃうなんて、水の中に落としたのがいけなかったのかしら。

 焦りまくりのあたしの頭の中に声が響いた


「貴方はどなた?」声は耳からではなく、頭の中に響いている。

「あ、あたしはメアリー。向こうの方に住んでいる子供です。ごめんなさい、悪気じゃなかったの。」

 この会話は頭の中だけで行われていた。まだこの世界の言葉を良く知らないあたしにとって、音声による会話では、まず聞こえた単語の意味からして判らないものが多く、そもそも喋ることの出来る単語が極少ないため考えている事を伝える事が出来ない。言葉を使わずに意思の疎通が出来るって事はあたしがこの世界に転生して来て初めての、制限のないコミュニケーション。


「メアリーさんと言うのですね?この泉になにをしました?」

問い詰める様な響きではなく、単に疑問を尋ねているような口調の声に少しだけほっとしちゃう。(頭の中の声だけどね)

「あ、あの、その、ちょっと処分に困った魔石を・・」

「・・・泉にいれたと」

 不法投棄は駄目でしたか。わかりました回収しますとも。

「そ、そうです。ごめんなさい。すぐに取り出しますから怒らないで」

「怒るって、なにを想像しているのか良くわからないわ」


 怒られるわけではないと判って、やっと目の前の人を観察する余裕がでたあたし。人間の形になった透き通った水、丈の長いドレスのような水を纏っている。透明な髪は長く腰くらいまであり、それら全てが青い光に包まれている。

 あたしは無意識に【認識】君を使っていた。


「水の精霊。水を起源として発生する妖精の上位に位置する。他の生命体と魔力による契約を行う。水に関わる魔法能力、極大。治癒に関する魔法能力、極大」


 あわわっ、と、とんでもないものが。

 妖精の上位って・・・魔法能力、極大って・・・なによそれ。



 水の精霊さんとしばらく会話をした(声に出した会話で無くって、頭の中での会話って事ね)結果を整理しよう。


1.この場所は精霊場と言われる、精霊が住む場所であり、元々水の精さんと樹の精さんと土の精さんが暮らしていた。

 泉とあの老樹と傍にあった岩に宿っていたのねぇ。


2.妖精精霊以外が入ってこないように、結界のようなものが張ってある。

 ここに来る途中で進みにくくなったのはそのせいだったのね。


3.魔石は火だけではなく、水や樹や土や風などどんな力にも転化できる。

 コンロに使っていたから火だけかと思っていけど違うんだ。


4.大きな魔石(大きな魔力)は精霊を成長させる。

 水の精霊さんはここにある泉から派生した水の精(妖精)だったけれど、泉に魔石を入れられて成長してしまい水の精霊となってしまった。感謝こそすれ怒るなんてとんでもない事らしい。


 とどのつまりは、あたしは自分の魔力を結晶化させた魔石を泉に投げ入れることによって、水の精を成長させて水の精霊としてしまったと、そういう訳だ。魔石の処分方法は間違っていなかったと。うん、安心して帰ろう。


 と思ったら、引き止められたよ。


 契約しなくて良いのかと。水の精が契約しても良いと判断できる人間と出会うのは稀な事らしい。


 水の精さんにも選ぶ権利があるんだね。イケメンさんでなくてごめん。


 いや、そうでなくて、魔力にも品質みたいなのが有って、精霊さんが希望するような品質の魔力の持ち主でないと契約しないんだそうな。契約すると水の精さんが持っている力を貸してくれるようになるんだけど、相手からは定期的に好みの魔力を貰うって事らしい。人間の魔力は香辛料みたいな味付け風味なんだとか。あたしはスパイスだったんだね。

 人間の力によって成長させられた精霊がその人間と契約しないなんて信じられない、どこかおかしいんじゃないの?とまで言われて、そんなものなのかと思ってしまった。


 まあ、契約してもこちらにとって悪いことは無いみたいだから契約しましょう。定期的な魔力の補給については、今回の魔石がまだ半分以上残ってるから当分は放置で良いらしいし。大体魔力なんて余るほど持ってるんだから、問題なしよ。


 契約自体は簡単だったよ。精霊さんのどこかに触れて魔力を渡してあげるだけだったから。魔石に充填したから魔力の放出もやり方わかってたしね。


 この間すごい速さで頭の上を通り過ぎていったのはどうやらこのあたりを根城にしている風の精らしいって事も聞いた。風だから物に宿るって事は無いそうだ。疑問も一つ解けたし、そろそろ帰りますか。


 「あの、またここに来ても良い?ここの景色綺麗だから遊びに来たいな」何時までも遊び呆けているとまたジュース抜きにされてしまう。帰り際にそう聞いてみると、大歓迎よとあっさり許可された。えと、結界はどうしたのよと思ったけど、まあいいか。



 家に帰り着いた時には、陽が大分傾いていて、またかーさまに怒られたよ。覚悟はしていたけど、ジュース抜きはやっぱり悲しい・・・


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