↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白の賢者 ~転生先は魔法の世界~  作者: 春野霞
第二章
33/44

14 結婚式

 成り行きから地竜を倒してしまい、危うく目立ってしまう羽目に陥りそうだったあたしだけど、何とか誤魔化して手柄はコアのマスター達に擦り付けたの。チームで倒した事にすれば、チームマスターに視線が集まるじゃないですか。それでなくても結婚式の準備で忙しいのに、ドラゴン倒したなんて噂にでもなったら大変よ。まだ目立つのは早いもの。


 あの後何日かは体のだるさが取れなくてうだうだしていたけど、そんな事もして居られない。またあたふたと式の準備に急がしい毎日が始まっちゃったの。

 ああ、コアのみんなとの狩が懐かしいわ・・・遠い目をしても、何の解決にもならないんだけどね。



 やっと準備が全部整ったのは式の前の日の午後だったよ。もう死ぬ、勘弁して。結婚式準備室のソファーでごろんと横になって一息ついていたら王妃様が侍女さんと二人で現われたの。

 「あらあら、マリーちゃんこんなところで寝ていたら駄目じゃない。疲れたときはお風呂がいいわ。今、はいれるかしら」

 「ええ、いつでも大丈夫なように用意してございます」

 「行くわよ」

 なんだか二人の会話は他人事で聞いていたんだけど、わしっと両脇をつかまれて持ち上げられてしまったよ。なんか最近こういうのが多いなあ、あたし荷物扱いされてるのかしら。


 「へっ?な。なんざんしょ」

 いや、王妃様に向かっていう言葉じゃ無いんだけどね。反射的に口から出てしまったのよ。

 「聞いてなかったの?お・ふ・ろ」

 いやその単語はさっき右の耳から入って、左の耳から抜けていったんですけどね。

 「ええと、おととい入りましたのでご遠慮もうし・・」

 「おとといだなんて、かわいい乙女が何をしているのかしら。お風呂って言うところは毎日入ってこそお風呂というのよ」

 せめて、最後まで言わせて貰いたいんですが、問答無用なんですね。それでも抵抗はしましたよ、じたばたじたばた。無駄でしたけどね。何せ脇を持ち上げられていて、足が床についていないんですもん。


 そのままお風呂へと連れて行かれてしまったあたし、侍女さんの脱がす手際が速いのなんのって、あっという間にすっぽんぽんに。その脇で服を脱いでる王妃様、あの、何をなされているのでしょうか。そんな視線に気づいたのかあたしのほうを向いて一言。

 「洗ってあげるわ」

 にこりと笑うお顔が怖いんですけど。逃げてもいいでしょうか。

 侍女さんが最後に残っていた布切れ-パンツじゃないよ、目を隠す布だよ-に手をかけてきた。これを解かれると不味い、慌てて手で押さえるけど、無駄な抵抗はよせとばかりに王妃様が脇をくすぐる。反射的に手を降ろしてしまうと布は頭から離れていき、隠していた碧の左の瞳を見られてしまったの。


 「ま、まあ、その目・・とーっても可愛いじゃないの、なぜ隠したりしているの。顔に怪我でもしてしまって、気にして隠しているのかと思ったのよ。そんなの気にしないでって言おうとしたのに、色が違うのを気にして居たのね」


 それでも隠そうとしたあたしの手を掴んで降ろさせるとまじまじと顔を見てくる王妃様。

 「決めたわ、明日の結婚式の記念品贈呈、あなたがやりなさい」


 な、なんですとぉー。そんな目立つ事、駄目ですってば。ぶんぶんと顔を左右に振るけど、王妃様はもう決定事項とばかりに王女様が昔着ていたドレスから何枚か持って来る様にと侍女さんに言いつけ終わっていたの。


 手を引かれて連れて行かれた浴室で念入りに石鹸で体も髪も洗われて、ぴかぴかになったあたしを待っていたのは、真紅のドレスを広げている侍女さんだった。あの・・せめて下着も下さいませ。


 ドレスは色こそ派手だけど、デザインは落ち着いていて縫製も最高。流石に王女様が着ていたものだわ。サイズもぴったりだし、新品に見える。ひょっとすると一度しか着てないとかありそうですねぇ。真紅の服、背中まであるあたしの金色の髪、色の違う瞳をまじまじと見た王妃様が呟くように言ったわ。

 「人とは思えないほど可愛らしいわね。天使が作った人形みたい」

 言われた本人はすごく恥ずかしいんですけど、そんな評価。


 そして、王妃様に押し切られる形で記念品贈呈をやる羽目になってしまったあたし。なんか悔しいのよね。どうしてくれよう王妃様。いや、悪巧み悪戯の類なら少しは自信有りますからね。

 


 翌日はいよいよ結婚式。会場になる王城前の広場には通路の横に木のベンチを並べてある。真ん中の通路は石畳でその横にはびっしりと蕾が一杯の鉢が置いてある。一番奥には五段ほどの段が作って有り、その上の壇が二人の誓いの座。その回りにも鉢がたくさん並んでいる。早めに会場に着いたあたしだけど、招待客が座るベンチの脇には早くも一般住民が座り始めていたの。そう、これからの結婚式は国民みんなの前で行う公開結婚式なのよ。


 やがて招待客達がベンチに座り始めて、国民達もどんどん集まって来たのよ。多分招待客の一部はこんなところで式を挙げるなんてと不快に思っているのかもしれないけどね。黒塗りの馬車が姿を現す頃には広場は人で一杯になっていたわ。もちろんベンチも満席になりましたとも。


 真ん中の通り道の端に馬車が止まった時、前の壇の脇には一人の女性が居て、落ち着いた声で話を始めるの。

 「これより、結婚式を始めます。新郎、アーサー・リビングストン様どうぞ」

 叫んでいるわけでもないのに、広場中の人の耳にはっきりと届く声。あたしが頼んで、風の精に空気の振動を広場中に伝えてもらっているからね。拡声器ってわけ。


 馬車からアーサーさんが降り立って、通路の真ん中を壇のほうへとゆっくりと歩いていくの。そして赤い布が敷いてある壇の上へと。かっこいいじゃないよぉ。やはり白い服を着てもらってよかったわ。

 「新婦、エレノア・テルエラ様どうぞ」


 もう一台通り道の端に馬車止まった馬車のドアが開き、王様が降りてくる。王女様の手を取りながらね。ステップを降りて通路へと立って、ゆっくりと段のほうへ二人で進んでいくのよ。後ろがとても長い白いドレスを引きずりながらね。顔にはベールをかぶり、手には数輪の真っ赤な花のブーケを持っているわ。


 歩く通路の脇、隙間無く置いてある鉢が次々と白い花を咲かせていくの。まるで花嫁が通るのを花達が祝福するかのような光景。そうです、花の精にお願いして咲くタイミングを合わせてもらってるのです。


 回りの人たちはそんな光景に「すごい」「どうしてこんな事が」「きれい」と小声で呟きながらも花嫁を見守っているのね。ゆっくりした歩みもついには壇の上へ着くのよ。国王はとても大事なものをしぶしぶ渡すかのように王女様の手を新郎の方へ差し出したの。それを受け取るアーサー様。


 壇の上、広場で見ている人達の方へと向きを変える二人。

 「魂がお互いを求めし二人、今永遠の誓いを。アーサー・リビングストン様。エレノア・テルエラ様を永遠の伴侶といたしますか」 

 「ああ、この身在る限り愛する事を誓う」

 「エレノア・テルエラ様。アーサー・リビングストン様を永遠の伴侶といたしますか」

 「はい、この身失われようとも愛する事を誓います」

 「お二人の誓い、ここに集まりし皆さんが立会人です。誓いの証を」


 アーサーさんがベールを捲り、そっとエレノアさんにキスした瞬間、壇の周りで真っ赤な花が壇を隠さんばかりに花を広げた。花の精さん、グッジョブだよお。


 ん?王様が二人のところへ歩いていったよ。そんなの予定外だよぉ。 

 「こんな結婚式は初めてでわしも戸惑っているのだが、まるで花達も二人を祝福してくれているようじゃないか。みなもこの幸せそうな二人を祝福してやってくれ。そして共にこの国の平和な発展を成し遂げて欲しい」

 広場では同意の言葉が渦を巻いて大変な騒ぎに。



 やったぜい。第一段階はなんとか成功したのよ、次は披露宴ね。新郎新婦はそのまま花一杯に飾りつけた荷台だけの馬車に乗り込んで、王都内を一回りの予定。その間にあたしは次の会場へと急いだわ。


 広場に来れなかった国民への顔見せも無事に終わって、披露宴会場のお城の広間。八十人位のほんとに親しい人達だけの宴席にしたので、全員寛いだ気分の様子なの。食事もたっぷり用意して有るのよ。まあ、あたしは宴席に出席する訳ではないけどね。


 王女様は最初は白いドレスのままので始めて、途中でピンクのにお着替え。いや、もう、可愛らしい服に仕上がってよかったわぁ。宴席の人たちも噂で聞いていたのか、あれが希少な色の着いたアルケニーシルクなのか、と感心するように見ていたらしい。まあ、少なくともこの国には三着しかないからね。



 宴もたけなわ、記念品の贈呈の時間になったの。扉の外で二つおそろいの指輪を載せてトレイを持って待っているあたし。さあ、ただじゃ済まさないからね王妃一家、覚悟しておきなさいよ。


 中から扉が開けられて、あたしはトレイを持ったまま二人のところへ歩いていき、一つずつ指輪を渡すの。


 そしてポケットから短いネックレスを取り出して王女様へと。少し黒ずんだ金属のチェーンの先には水滴型の青い透明な石がついているのよ。

 「これは、あたし個人からのプレゼントです。つけてあげる」

 少し屈み込む王女様の首にネックレスを回して止めてあげたわ。アーサー様にもポケットからブレスレットを取り出して左手へと。これも黒ずんだ金属のベルトに四角い青と水色の石が並んでいるのよ。

 「ありがとう、大事にするわ」

 あたしのほっぺに王女様の唇でそっと触れる。なんか照れくさくてそのままお辞儀をして部屋から出てしまったけど、任務完了よ。後で王妃様の慌てる姿が楽しみだわ。


 物は何かって?魔宝石に決まってるじゃない。しかも水の精霊と風の精霊の加護つきだよん。何事か起きると周りにいる妖精や精霊たちが守ってくれるって、素敵な代物なのよ。多分国宝通り越して至宝クラスなんじゃないかしら。

 黒ずんだ金属は、ノームさんに一番丈夫な金属で作ってねって頼んだら、アマダンなんとやらを使ったって言ってたわ。細いチェーンにするのがめんどくさかったらしいけどね。


 案の定、その後の舞踏会で国の魔法長(魔法使いの一番偉い人ね)が気づいて、慌てふためいて居たらしいけど、それはあたしの知る範疇ではないのです。やったぜぃ。ちなみに水色のドレスもとても素敵でしたとも。



 翌日王妃に呼び出されてどういう積もりだとえらい剣幕で言われてしまったけどね。お詫びとして、王室の友達って事にさせられてしまったのは想定外でした。


 まあ、無事に終わって良かった良かった。頂いた金貨はドレスの九百枚+式の企画料が五枚。魔宝石あげたから大赤字のような気もするんだけど、まあいいや。



 沈んでいく陽に赤く染まる王都の町並みをお城の窓から眺めながら、やっと終わったとほっとしたのよぉ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。