↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白の賢者 ~転生先は魔法の世界~  作者: 春野霞
第一章 
10/44

10 絶望なんて許せない

 「そんなぁ。うそでしょ、かあさまとシャルちゃんがもう助からないって」

 リビングの床に寝かされたままで浅い呼吸しか出来ないかあさまとシャルちゃん。あたしは治療師のケイト先生に縋り着いた。

 「な、なんとかして下さい。二人ともまだ生きてるんだから治癒かけて、助けてあげて、お願いします」

床の二人をじっと見つめていた先生が重い口を開いた。

 「・・・・・・メアリーちゃんだったわね。治癒魔法はもう掛けたのよ。でもね、怪我が大きすぎるの。アリスは多分胸の骨が折れて体の中で刺さってる。シャルちゃんのほうはお腹を潰されてる。治癒魔法で直せる状況じゃないの。私だって治してあげたいのは山々なのよ。でも・・・残念だけれど・・・」

 「もっとえらい治療師さんに・・・」

 「私は街でもトップランクなんだよ。それにもっと大きな町からここに来るには一日以上かかる。王都からだともっと、1週間とか。誰を呼んだとしても間に合わない・・」残念そうに顔を左右に振る先生。


 そんな。そんな事って・・・。


 かあさまとシャルちゃんが死んじゃう?。

 

 お葬式に出た事が無い訳じゃない。前世では田舎に住んでいた祖父が亡くなったり、交通事故でクラスメートが亡くなったりした事も有った。でも、一緒に暮らしていた家族が目の前で死んでいくのを見ているしかないなんて・・・いや、そんなの絶対嫌。


 治癒魔法・・・そうだ水の精霊さんにお願いして何とかして貰えないだろうか。水の精霊さんから治癒を伝授してもらった時の事を思い出してみたけど、さらに絶望感が強くなってしまう。


 【治癒】は魔法で傷を治すわけではなく、自然治癒力を魔法で高めて促進する。傷は直るけど、体力・生命力を消耗する。切断された四肢を繋げる事は困難ではないけれど、欠損した所を復元するのほぼ不可能。骨折は折れた骨をきちんと真っ直ぐに直してから治癒しないと折れたままで繋がってしまう。いくら高度な強い【治癒】をかけても瀕死の人が瞬く間に元気になりはしない。


 そう、精霊が使う【治癒】だとしても体の内側の部位については修復が出来ないんだ。



 でも、諦めるなんて出来ない。なんとしてでも二人を助ける。



 治療師の先生に出来ないなら、あたしが何とかする。



 かあさまとシャルちゃんに【認識】。思い切り魔力を使って【認識】【認識】【認識】

「生命力-弱。外傷-擦過傷。体躯内-胸部肋骨複雑骨折。肺-損傷。血管-損傷」

「生命力-弱。外傷-擦過傷。体躯内-脾臓破裂。膵臓、肝臓-分断。血管-損傷」

 

 こ、これって絶対に手術しないと助からない状況だ。


 あたしはかあさまとシャルちゃんの傍にぺたっと座り込んだまま、ごくっと唾を飲み込んで覚悟を決めた。

 やるしかないわ。

 この世界に外科手術できる医師が居ようが居まいが、今この場でそういう知識があるのは自分だけ。もう、魔法が使える事を隠して置きたいとか、異世界の知識があるのがばれない様にとか、そんなのどうでもいい。


 「かあさまとシャルちゃんはあたしが助けます。手伝ってもらえますか。」あたしはゆっくりと立ち上がって、先生とイリアさんに同意を求めた。

 「助けるって・・」先生はあたしが何をする積りなのか判らなくて問いで返して来たけど、どうせもう手の施しようが無いのだからせめて娘であるあたしの好きなようにさせてあげようと思ったのか、頷いてくれた。イリアさんも私に出来る事であれば何でも、と同意してくれる。

 

 あたしは泉の精霊たちを思い浮かながら、「精霊さん助けて欲しいの」、と心の中で呼びかけた。「どうしたの、急ぐの?」とデイーネさんがすぐに答えてくれた。あかさまが怪我をして大変なの。助けたいから、みんなで手伝って欲しいのとお願いした。


 精霊さん達は手伝ってくれそうだけれど、出来れば家の中の二人にこれからする事について内緒にしてほしい。やはり魔法が使える事、異世界の知識が有る事は可能な限り秘密にしておきたい。

 「ケイト先生、イリアさん。お願いがあります。あたしはかあさまとシャルちゃんを助けたいと思うのですが、これからの事は他の人には絶対に話さないで秘密にして欲しいのです。もちろんかあさまにも、とうさまにも、シャルちゃんにも。精霊に誓っていただけますか」

 この世界では精霊が居る事は当たり前の事であり、精霊に誓うと言うのは絶対的な誓いになると言う事を精霊さん達から聞いていたあたしは真剣な顔で二人にそうお願いをした。

「あ、ああ。構わない。誓うよ」「はい、秘密にすると誓います」

先生は何が起きるんだと少し不思議そうにしながら、イリアさんはあたしがお利口さん過ぎて普通の子とは少し違っていると以前から思って居たのか、突拍子も無い事にもすぐに同意してくれた。

 


 あたしは精霊さん達を呼んだ。「来て。あたしの所に。今すぐに」。


 あたしの傍に青や緑や水色の光が現れて、柔らかな光が次第に人の形になって行く。やがて精霊さん達4人の姿がはっきり見えて来た。単なる精では無い、4人とも、あたしの魔力で成長して精霊になった人たちだ。この人達も手伝ってくれる。




 あとは、やらなければならない事を、やるだけ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。