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影使いの街  作者: やぎざ
第三章 業と力
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業と力 24

 鴉丸の発言に、黄仙は驚愕した。


 「教えた……だと? このお嬢さんに?」


 目の前で神妙な顔付きをし、手の平に青黒い粒子を渦巻かせる鴉丸は空返事で「うん」と言う。

 黄仙の視線は鴉丸の横でハムサンドを無心で齧る、黒髪の少女に。


 「君、それでは全く意味が無いじゃないか」

 「なんだろうな。そう言うのでの勝利って何時か無くなるものだと思うんだよ」

 「どういうことだ?」


 混戦の練習が数回失敗したところで、鴉丸は足元のボトルを手に取り口を付けた。冷えた身に伝う水滴。それが、廃屋のカフェの砂埃を吸うようにしてまとわり付いていた。


 「いずれは月影にも、他の人間にも発見されるんじゃないかってことだ。『混戦』に変わる技術が」

 「……ふむ」

 「一つの技術を小出しして、経験値を相手に貯めさせなければ対抗策の発見が遅れ勝つことはできる。だが、その手札の理解にはつながらない」

 「相手に教えてでも、より実戦経験を積んだ方が勝てる……と?」


 黄仙の問いかけに、鴉丸はボトルにキャップをして床に置く。


 「さあな。でも、いざという時にその札の弱点を知らず、その弱点を相手だけが気づいていたとしたら?」

 「なる程な」


 鴉丸は再度手の平の上に粒子の渦を発生させた。個々が巨大で、まだまだその効果は黄仙らのそれには及ばないとのことだった。障壁侵蝕率テストを行っても実践レベルと呼ぶには首を掲げる程度。ラウンジで競い合う影使いらの評価はその程度だった。


 「気づきと機転の力。その速度。本当の意味での格上ってもんはそれらを持ち合わせていると思う」

 「私は?」

 「さあ。アンタとやり合ったのはあの夜の一回だけだ。アレだけではまだ分からない」

 「フォローのつもりかね」

 「アンタも性根がネジ曲がっているな」


 また黒い粒子が弾けて消えた。

 鴉丸は一つ伸びをしてから外を眺める。休日の昼下がり。薄い雲のかかる空の下で、今日も暇な影使いらは何かを競いあっている。

 それを自尊心と呼ぶ者も居れば、力と呼んだり、業と呼んだり……


 「鴉丸ァ! 今日こそ俺の自尊心に変わりやがれェ!」


 轟く咆哮の源。そこに居たのは黄金と漆黒の影を混雑させる金髪の男の姿だった。


 「黄仙。助かった」

 「何、若者の成長を見送ることが、老体の勤めだよ」


 ハムサンドを食べ終わった少女は腹をさすりながら鴉丸を流し目で見送る。何も言うことはなかった。

 光るハゲ頭を尻目に通り過ぎる鴉丸。上着を一つ脱ぎ捨て、身を屈めてから叫び、黄金の影を司る者へと駆け出していった。


 「来やがれェ!」

※別にコレ読んでおかなくちゃ話について行けなくなるよ! 的な補足でも何でもないメモ※


月詠サラク

女?   :0~1歳

身長   :162cm

髪色など :黒髪のショートとボブとセミロングの中間。ネコ科の耳のような羽角のような跳っ毛が特徴。

血液型  :解析不明

出身   :高層区A-付近の一帯と思われる。

誕生日  :4月頃

趣味   :おつまみ作り、雑誌や小説を読む、抗争

大切なもの:鴉丸スイレン

嫌いなもの:孤独

欲しいもの:人としての感性


スペクトキリング型と呼ばれる、特定の誰か個人を殺す衝動に飢えるタイプの月影。

『銀咲のハウライト』という名前で観測班の探知には引っかかる。

皮肉屋で人を誂うのが好きだが、節操無く人に絡むわけではない。

鴉丸を殺したいという衝動の中に、鴉丸から人間とは何かという哲学的な部分を探ろうとしている。

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