欲の写身
「生まれ変わったならば何になりたい?」
既に大洲という人物なんて居ないオフィス。壁際の大窓から漏れる陽光を浴びる男が言った。銀髪の髪が煌めいて揺れている。
「なんだそりゃ」
対して答えるのは腕組みをしてデスクに座る金髪メッシュの男。猛獣の様な野蛮な目つきが鈍く光る。
「質問を変えよう、強者と弱者。選ぶならどちらか」
「そりゃ強者だ」
銀髪は指を組んでその金髪の男を見た。
「例えば?」
「猛禽類や海洋性哺乳類だな。フクロウとかシャチとか。空を自由に飛んで、海を好きなだけ泳げる。天敵も居ないし、何より楽しそうだ。さっきの質問に答える形になったな」
「じゃあ、人間をその中に加えた時、人は何を選ぶ?」
沈黙。室内には空調の小さな音だけが漏れるように響いて大気をかき回す。
「……人間」
金髪の男が絞りだす様に言った。神妙な顔つきで、またこの銀髪の男がよくわからないことを言い出した。そんな心情だ。
「そうだ。ヒトはより高次の欲を実現させるのには最も適した器だ。空を自由に飛んで、海を好きなだけ泳げる。天敵も居ないし、何より楽しい」
「フン。言葉遊びのつもりか? もっというと俺は──」
雄弁に語る銀髪の男に、金髪の男は不貞腐れたように吐き捨てた。
そして、その後に続く言葉を今喉の奥から捻り出すように……
「なんだ?」
「そもそも、生まれたくねえな。こんな汚い世界に」
「──最もだ」




