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異世界に行ったら最強になった  作者: 志良内達夫
第五章 スラーレン法国編
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5-13.トーマスとナディ

 ソリアが冒険者協会から戻ってきて

「会長も冒険者協会の立て直しを考えるようだとか言いはじめたわ」

と話した。

「まあ何も名案は浮かばないようだけど」

「とりあえず何かあったらすぐ情報がわかればな。テレビやラジオはないからスピーカーで流してくれれば、ああ、あれも電気が必要か」

 すると美緒が

「じゃあ電気を作ろうか」

と悠介に言った。

「え? どうやって?」

「大学まで進学したんでしょう? 電気の作り方とか起こし方は知っているでしょう?」

「そういえば学校で習ったような・・」

「モーターを回して電気を起こすのが簡単ね。街には川もないけど、牧場のほうなら山の方にも滝があるんじゃない?」

「またオーグとか出てきたらやっかいだ」

 悠介は魔獣や魔族の存在を気にしながらも

「貯水池の排水口に小型の水力発電機を設置すれば電気をつくれるかも」

とひらめいた。

「やってみましょうよ。この世界はのどかでのんびり暮らすにはいい処なんだけど、私たちの世界は電気も自動車もあって当たり前の環境だったから、そこが少し物足りないのよね」

「チーズの次は電気か・・モーターはどうする?」

「銅線があればコイルをつくって発電出来るわ。そのくらいの知識は私もある。ナディさんに相談してみて」

「いいけど」

 悠介はナディの名を出されて快諾した。

「ほら、鼻の下が伸びてきた」

「そんなに伸びるか」

 ◇

 翌日、悠介はナターシャを教会に送ると、街の巡回をしながら『なんでも屋』に行った。そしてナディに

「また相談なんだけど」

と話かけた。

「銅線ってあるかな」

「銅線? 街にはあるかなぁ。工業団地では扱っているかも知れないけど、一般は立ち入り禁止だから。板金を扱っているトーマスさんならわかるかも」


 悠介はトーマスを訪ねた。

「銅線でコイルをねぇ。街では扱う用途がないからなぁ。工業団地につてがあるから手に入るか聞いてみるよ」

「お願いします。それと、こんなものをつくれないかな」

 悠介は図面を見せた。扇風機の羽根のような図面だった。

「これは羽根か? 飛行船に付いている大きな物は見たことがある」

「それを小型化したようなものだ。それとこれらを取り付ける金属製の箱もつくってほしい」

「ふむ。・・何が出来るかはわからないが、図面を見たら作りたくなってきたな。これとコイルで何が出来るんだ?」

「びっくりするものだ」

「チーズとかバターも驚いたが」

「食べ物ではないけど」

「冗談だよ。そのくらいはわかる」

 悠介は、トーマスを面白い人間(人族)だと思った。そして悠介は思い出した。

「俺はトーマスさんのような人、嫌いじゃないよ。この前もナディをからかっていたし」

 すると

「ナディか・・からかうつもりはない。彼女は不憫なんだ。娘のような存在なんだ」

とトーマスが真面目に語り出した。

「あんたなら話しても不味くはないだろう。但し、他言無用だ」

「・・わかった」

「まずはワリキュール国について話しておこう」


*****


 かつてこの地に移動してきた民族があった。彼らは山を越えてきて、広々とした大地にワリキュール国をつくった。だが周りの山々には魔物が棲んでいて、それらから守るために軍も組織した。そして集まってきた他の人々には城の外のエリアに街をつくらせ、自らは貴族とし、別であるように一線を引いた。襲ってくる魔物たちに貴族たちだけでは国全体を守り切れなかったため、街の人々に冒険者協会をつくらせ、腕に覚えのある者、魔術師たちを冒険者として雇い、街を守らせた。

 そのうち、王族の中から独立した国を作りたい者が現れ、近隣を開拓してイミナス国、エランデル国をそれぞれつくった。

 ナディの元彼氏は、人手を募った軍に応募し、軍人として街の守りについたが魔物との戦いで命を落とした。

 ワリキュール国の王宮内でも内紛が起こり、前国王のリステルが居に沿わない貴族たちを粛清し、ワリキュール王国を強固なものにした。

 スラーレン法国からシルビアがリステルに嫁いでくると、周りの山々に結界が張られ、ワリキュール王国は魔物たちから襲われなくなった。そして冒険者協会もあまり必要としなくなり、活気を無くしていった。

 その後、リステルがイミナス国やエランデル国に進攻して、雅則たちの活躍でリステルもシルビアも亡くなり今に至っている。


*****


「ナディは幼いころから知っていてね。両親は街に魔物たちが襲ってきたとき犠牲になった。私とナディの両親は旧知の仲だったので、ナディは私が守った」

「そういう過去が・・」

「もし、ナディの力になってもらえるなら頼みたい。彼女は性格は明るく、街でも必要な『なんでも屋』を懸命にこなしてくれている。だが、心は寂しいはずだ。ラッセルもそれを知っているから彼なりに気遣っている」

「そういう関係だったんだ。わかった。俺もナディの力になる。約束する」










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