幕間・宮條の眠れない夜
俺、宮條巴矢の住む五十年のマンション内。机、洗濯機、キッチンなど、生活必需品が一つの部屋に揃っている。それほど広くない和室の畳には、シミの目立つ白い布団が、何もない位置に敷いてあった。
暗転した部屋で、眼鏡の横にあったスマートフォンが光って震える。布団から細く鍛えられた手が伸び、スマホの「通話」ボタンを押す。
「……なんだ」
『すごいにゃ! 今度こそすごいの出たにゃ! 三十連ガチャで、SSRの烈火竜の頭とURの白神竜の翼が――』
「お前、何度電話するんだ……! 夜中の3時だぞ!?」
眼鏡を外した俺の頭が、布団から飛び出る。眠そうな表情で怒鳴っていた。
まさか夜中に人気のソーシャルスマホゲーム『ドラゴンステータスⅡ』の話を連続でされるとは思わなかった。
『だーって、事務所にはそんな興味ないんだにゃ。それに、こういうゲームの話に付き合ってくれる人間は他にいないんだにゃ』
「事務所に興味がないなら掛けてくるな!! それに、俺は、ゲームが嫌いだ!!」
怒声を振り絞り、「通話終了」ボタンを押す。勢いでスマホの電源も切った。
やっと一息吐ける。体勢を立て直し、真っ直ぐ仰向けに寝る。……どこか寂しい気分もした。夜中にずっと通話する友達とか、昔、そういうのに憧れていた。さすがに申し訳ないのでは、という気持ちがあった。
しかし、その朝。着信履歴を見て、夜中に七回も電話はあり得んと思った。




