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幻想の現実≠東方空界霊  作者: 幻将 彼
最終章
59/62

第肆拾陸話 花の色は ウツるにけりな

【永宴】


 所移って―――敷物に乗ってる連中の面々は、永遠亭の。

「永琳先生ぃ、診察に来たぞぉ」

 鈴仙は、戻って来てないようだ。

「遅かったわね。医者を差し置いて他の女の所にふら付くなんて、良い度胸してるわ」

 ヴッ。

「すんません」

「冗談よ、無礼講だもの。此れくらいは挨拶にしといて……いや、挨拶は此れくらいにしといて、ね、うん。寄り道してた時間からしても、身体に問題は無いわね」

「ああ、ありがとう」

「いいえ、私は何もしてないわよ。正直に言って、眠ってる時の貴方って、何も手が付けれない程危篤状態だったもの」

「……マジで?」

「マジで。でもこの数日間、正確には三日間ね、丸で治る事が当然かのように着々と回復して行ったのよね。医者である私がこんな事言うのも何だけど、神の思し召しって話よね」

「……ま、そうだな。毎回世話には為ってる」

 右手で髪を撫でる。正確には、頭部右側の黒い部分。

 変な髪形は動物を模し、又、体部の何処かも箇所繊細に決められているのだ。

 美少女になると聞いた手前、自分の頭だが触る場所には注意しよう……コレぞ本当の、触らぬ髪神に祟りなし。

「何にせよ、貴方には壮大な借りが出来たわね。若し又具合が悪くなったら何時でもいらっしゃい。膝枕耳掃除は勿論、タダで診察して上げるわ」

 あの竹林大分入り組むの領域から逸脱してたから大丈夫かな……。

「道案内なら問題無いわよ。十中十であの案内人が寄り道の草を咥える事無く送ってくれるでしょうから」

 あの人そういう人。

「―――処で貴方ヒツキ君、此方が永遠亭の姫様よ?」

「んぁ?」

 永琳が座る場の奥側で、平安を思わせるとても貴賓な衣を纏われた、長い黒髪の既に会った事の有る’蓬莱山輝夜’が酒を本日良く嗜んで居たのか、顔をうつらうつらに揺らして今にも眠りそうだ。

 そんな中、呼ばれた事を察して視力を取り戻し、互いが目を合わせると、何かを月光の速さで電波傍受したかの如き阿吽の呼吸で、高貴と下人の構図が展開される。

 ざっくり言ってしまえば、姿勢の正しい座禅のお姫様と、土に顔を下げる座禅のナンカコレである。

「これはこれは、彼の英雄様ではございませぬか。初めまして、私の名は’蓬莱山輝夜’。この度は私の住まうこの土地、”幻想郷”を護って頂き、謝礼でしか申し上げれないこのような形をご容赦願います」

「何を申しまするか。貴女様の様な高潔で見女麗しい姫君を護れた事、不躾乍ら自己紹介を致します、この’陽月さくら’……本懐に達する誉れに御座いますれば」

「まぁ、嬉しい事を言ってくれる殿方ですこと」

「―――あなた達知り合いだったのね」

「「何故で解ったの?!」」

 ―――茶番終了。互いに急いて永琳を見る。

「挨拶が出来過ぎて逆に不自然よ…」

「ッハァ~…廻り巡る二つの月同士なら天才を出し抜けると思ったのにぃ~」

「だってアレ対象が違いますもん。僕ら関係ないっスよ何なら私は裏面である貴様を穀物にすべく地獄から舞い戻った」

 ―――茶番継続。

「いやね~物騒よ全く。私と仲が悪いのはフジワラ家の忘れ形見だけで充分よ。其れ此れだけどあの話良かったわね~個人的に好きよ?」

「簡単なサイドストーリーですけどね」

「「何の話だよ!」」

 本当だよ。

「仲良しなのは解ったわ。てゐ、貴女からも何か言う事無い?」

「おっ、ヒツキ居たのかぁ~。コッチコッチ、おいで」

 幼い姿の垂れ耳兎に誘われる。

 そういう店の従業員かな? 詳しくは知らない。俺ってピュア。

 ―――して、純粋無垢な私目は、無邪気な兎の策略延いてはn時間目の物理学で差しては落とし穴に、嵌ま―――

「アヒャヒャヒャヒャ……! や~い、英雄が堕ち、たぁ~…ァ………」

 ―――らず、パンジ・ステーク、乱杙なんて呼ばれる物もおまけに設置されて居たお陰で、脚に刺さりそう一寸の所で、身体はふわりと上がり、元の地面に戻る。

「永琳先生、此れが神の……髪神の思し召しです」

「頼もしいわね」

『恐れ入ります』

 天才に褒められ、鼻と言うか嘴の高い凰。

『「さて―――」』

 逃げるだろうと着地する迄に既に、速足兎は反重力壁で確保済み。

「巫女さんに境内に穴空けてましたよって御馳走提供するか、俺に絞められるか」

『ヌシ様。下名は耳絞めを手伝い、基、髪伝いましょう』

 此奴も冗談を言うンだな。

「いやぁ本当幻想郷を救ってくれて有難う。お礼に鈴仙と此れからの生活を円満に送れるよう溢れる秤の幸せをお贈り致します」

「胡散臭い外交販売は間に合ってます。兎は月で餅突いてる、ってのが外界の見方なんだが実践してみない?」

「いやぁ~、地上の穢れた兎には、月に立つ事すら恐れおワアアアァァァァ……」

 直上に投げ飛ばされ、月と重なる星となった兎……星食って奴か。

 明くる日には穢れた地に戻って来た。あゴメン地は穢れて無いです。普通に土埃とかね。うん。

 幸せ兎を投げ飛ばすって、俺って大分、悪縁起(演技)?

「鈴仙は如何してるのかしら?」

 星となったてゐの事は、姫様共々見上げても気には留めず、俺の起床に真っ先に向かって来た夜間学校生徒を気にする永琳。

「さあね。小動物みたいで抱えて此処に返したかったけど……あぁ、いや、言い訳だな」

「ウドンゲが小動物……ふふ、丸めてるのかしら?」

 絵面が凄いな。

 お姫様抱っこが適切か。

 しかしまぁ何だ、兎ってのは万年のアレって言われてるよな。

「あ。あんまり過剰過ぎるのも煩わしいから、出来れば冷め薬とか、無関心漢方とか注文出来ないですか?」

「それは誘導尋問かしら? それともまんまのお誘い? 何方にせよ、私でも治せは出来ないわ。言わずもがな―――」

惚れた病に薬なし。敵いもしませぬ名医でも、草津の湯でも。……いやいや、温泉一緒に入らない? なんて私が誘い掛けますかいな。…………。

「えぇ、ご相伴に預かるわよ?」

「何も言ってませんけど」

 無関心漢方欲しい。



【白宴】


「いらっしゃい。あ、色男君じゃないか! 寄って貰ってってよ。出来立てだよ~、超巨大ヤツメウナギの串焼き」

 ミスティア・ローレライ。神社でも出店をしてるのか。ご苦労様です。

「それとも此の、繁殖して産卵した後に狩られた夫婦ウナギのペア焼きにするかい?」

「でっかいので良いよ」

 ペア何とかってのを食うに当たって前置きが辛いわ。喰い辛いわ。

「おっ、男前だね~! まぁとやかく言うのは建前! 幻想郷を救ってくれた恩人にケチ事は申しません! 全部貰ってってください!」

 何の選択肢だったんだ。金の斧銀の斧云々なら正直ってポジティブより遠慮のネガティブが強いから寧ろ良心痛まれる。

「冥界の所とご一緒にどうぞ!」

 余計だよ。まぁ良い手土産にはなったよ。

「処で私、歌を歌うんだ。知ってる? プリズムリバー三姉妹って騒霊の音楽妖怪。今回はユニットを汲んで貴方の英雄譚を音楽で奏でるの♪」

「ほぉ、そりゃあ趣。観ないが聴いてるよ」

「それで好いよ。楽しんで♪」

 自分の英雄譚なんぞ、ビデオカメラを再生する事と同じ位こっぱずかしい事は無いさ。

 まぁ詩とかでは無いだろうけど。

「~♪」

 伴奏から始まり、歌がコーラスで流れて来る。

 成程、音色で語る英雄譚か。

 所々強まったり弱まったり、速くなったり遅くなったり、段々と上がったり下がったり、楽器が一つだ三つだ二つだアカペラだ、それはどこかのシーンを連想出来る様な演奏なのだろう。

 ドラマが有り戦闘が有りの起承転結、伝説は清く美しく有る物だ。音楽知識はドレミから難解だが、良いBGMだ。耳が癒される。でっかいヤツメウナギと二つのヤツメウナギを串が辿って片手ずつに、歩を進める。


「あら? ヒツキ君じゃない~。どうしたの、そんな大きいウナギを手に?」

 見つけた。相変わらずおっとりな口調で話すお姉さん系幽霊、西行寺幽々子。

「土産だ、冥土の―――な」

「あらあら、此処は現世だけど、有難く頂戴するわぁ」

 と、大きなヤツメウナギを当然の様に手を伸ばす幽々子様。先に目を付け言葉に出したのがこのウナギだったので、何か矢っ張りって感じの、案の定で手渡す。

 ヤツメウナギは口のデカい魚だが、其れ以上に幽々子姉さんも行ける口らしい。

 ………この色調で大食いの丸いキャラクターがいたな。

 まぁ淑女がガッツリとか、急に口が魚以上に大きくなって丸呑みする海外アニメじゃないからな、もっもっ、と齧って食べる、ゆっくりハムスター。

「あ、ところで妖夢が拵えた弁当が有るのよ。うなぎのお返しに貴方も如何かしら?」

 すっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっごくこの場を借りて脱靴して寛いで頂きたい。

 エプロン割烹着姿の妖夢が作ったとか最高じゃないですか。とは言わず……

「他の奴等にも挨拶したいから、まぁ、味見程度に」

 と、膝だけをシートに付けて、跪座で白玉楼処にお邪魔する。

「じゃあちょっと待ってね……えーっと、ウナギは何処に置こうかしら……」

「……あ~……持ちますよ?」

 専用の皿も貰って来れば良かったな。大き過ぎんだろ、鯉以上にデカい魚の串焼きとか、良く焼けたな。

「あらあら、折角貰ったのに悪いわねぇ~…」

 と、デカい鰻は再び此方の手に渡り戻り、幽々子様は箸を手に、箸の先には卵焼き。

「卵焼きって剣術と同じでお料理界の武の極致だと私は思うの。そんな妖夢作、わたし御自慢の究極卵焼き。はい、あ~ん……」

 鰻の次は、多分鳥の卵を溶いて焼いて固めて出来た+過程で味付けた。を差し出される。

 俺は何の躊躇もなく顔を突き出し、卵焼きを口に丸々放り込む。

 噛んで広がる卵と出汁の味は舌全体を覆うように広がり、その世界は美味と、穏やかで優しい風が揺らす草原の中で産んだ鶏の卵を連想させ―――……良く分かんないだろうが俺も良く分かんない。兎に角、起きてから何にも食べて無かったのだから、三日振りの飯なのだから、超絶空腹なのだから、「美味しい」の一言に尽きる。おまけに「とても」を付けて置こう。いや更に前置に「物凄く」も。

「ン~♪」

「あら、でも能々考えたら間接吻っていうのかしら、コレ?」

 良く噛んで食べた卵焼きを飲み込む。

「道理で一入美味い」

「あらアラ……」

 頬に手を当てる幽々子姉さんは何だか楽しそうだし嬉しそうだ。

「ご堪能頂いて居る様で何よりです、師匠」

「ヒュッ…」

 夜ですから明るみにでも夏の風とか怪談とか肝試しとかエクストラエトセトラエヌカイメゲンカイメ。妖夢が物凄い感情の死んだ声で同じ座高で後ろから話し掛けて来た。

 後別件で背中が刺々しいって言う私の背筋とても敏感。

「応、妖夢。無事だったか」

 取り敢えず、渡すって感じで夫婦鰻の一匹を差し出す。

「無事ですよ、半霊が全霊になりそうでしたけど」

 おもしろおまえ。

 靴を脱いでから、鰻を受け取り、再び自己陣地で正座を為して寛ぐ妖夢。

「……師匠、魔理沙と言いあんまり簡単に誑かされないでください。只でさえ此処は雌狐が多い」

 鰻を丸齧る妖夢。

 言い方よ。いや俺も厭らしい女だとか英単語化したけども。

「なーに言ってるか解んねぇな。俺は俺だ」

「そうです師匠は師匠です。幽々子様も応援する様でさらっと寝取るような事は止めてください。師匠は、私の、師匠です」

 おぉ、紫陽花が良く似合いそうな独占欲強調。

「寝取ろうだなんてとんでもないわぁ。だってこのお箸、妖夢が使ってたお箸ですもの」

 食を再開する妖夢が、物と箸を咥えて固まる。

 俺も固まる。

 だが確かに、間接吻とは言ったが、誰のとは指定してなかったな。

 妖夢のだったのか、有無。

 妖夢は物を飲み込み、箸を凝視して、赤面震声で此方に話し掛ける。

「ししし、師匠……あの、あの、あの………」

 壊れたレコーダーみたいに、熱を帯びて話す妖夢さん。

 俺は多分、嘗てない程の暗めのキャラが本編には出さないオープニングムービーの一カットの様に笑みを浮かべて、とても明るい口調で、彼女に伝えた。

「ご馳走様でしたっ」

 尚、表情については、語尾に[だったと思う。]を、添えて。

 立ち上がり、―――じゃあ幽々子姐さん、また何れ。えぇ、又いらしてね。と挨拶を交わし、妖夢、またな。と、完全硬直をした妖夢にも一声掛けて、その場を去る。

 師匠の言葉に返しの無い妖夢の事が気になった幽々子は彼女を突っつくと、其の状態の儘バタンと倒れた。

「全く、お師匠さんも某事半人前だけど、貴女もつくづく半人前ね、妖夢」



【紅宴】


「やっと来たわね。運命通り遅かったわよ? 我が下僕」

 レミリア・スカーレット、運命を操る程度の能力を持つ吸血鬼。

 正確には突如選択肢系でふとして選ぶみたいなものらしい。

「おまけに、妙にお連れの多い事ね。見た感じ保護者か何か?」

 氷の最強妖精チルノ、名もないしがない大妖精、嫁兼娘兼マスコットのルーミア。



 ―――事の顛末を話すとしよう。

 白玉楼コンビから別れた後、ヤツメウナギを齧り付き乍らブラブラと歩いて居れば、探したぞと言わん秤の大声がする方を見やれば、俺に指差して探されていたのは俺だった事を俺は自覚する。

「アタイの朋友、ヒザマクラ・サレタじゃないか! こんな所に居た!」

 前述話した通りの人物の内の一人、チルノが俺に用が有ったらしい。

 事実と、地味な母音合わせと文字選びが赤点ギリギリ回避の名前、そして堂々朋友呼ばわれに私、一周回って反論出来ない。後、鰻を口に頬張ってるのも一つで。

 朋友と呼ばれる様になった話は、新居の地域探索の時の話です。

 事の顛末の中の事の顛末をざっくり話すと、紅魔館より帰属した点で、配下から朋友にグレードアップしました。この子が朋友と言う言語を取り扱えるなんて感涙に咽ぶ。オーイオイオイオイ。

「チ、チルノちゃん…また名前が変わってない?」

 隣には、サイドテールで髪を結った、見た感じ妖精の類の少女がオロオロと慌てて訂正を促す。彼女は大妖精の大ちゃん。彼女も又配下部類だったが、ちゃんとチルノの友達として、何時でも一緒に居るような姉妹的存在だ。どっちだろうな。

 鰻を食べ尽くし、串はパイロキネシスで灰にして。

「よぉ最強、無事だったか」

「無事? フフン、アタイにとって無事なんて言葉は不要だと言って良い程、今回の異変は楽勝だったわ」

 事妖精の集まる”霧の湖”は火の海に、周囲の森も、赤く燃え盛って居たと、其処で大活躍したのが彼女だ。

 氷の妖精は能力の最大限を駆使して、火の海を氷の盤上へ変貌させ、燃える森も消火し、事態を収縮した。

「そぉーか。お手柄だったな、最強」

「然し称賛されるべき私より、お前の方で宴が盛り上がっているのは何なんだ? 英雄ヒツキに乾杯とみんな口を揃えて呑んでるんだ……」

 ご機嫌斜めな氷精さん、名前言えたね。おめでとう。

「あ、あのヒツキさん……今回の異変騒動で幻想郷を救ってくださり、有難う御座いました」

 礼儀正しさの塊である大妖精、お辞儀をして謝辞を述べる。

「俺は何にもしてねーよ。今晩は、大ちゃん」

 まぁ知らぬ人の客観はそう思えるだろうが、俺は謙虚とか謙遜抜きで英雄呼ばわりされるような事をしたとは小石の斑点程、想っちゃ居ないからね。

「は、はい! こ、こんばんわです…」

 この子は少し俺が苦手と言う怖いイメージを抱いているみたいで。ぎこちなくも溶けるような良い笑顔の挨拶です。

「何―っ?! お前幻想郷を救ったのか?! 何月何日何曜日何時何分何秒何々月が何周したとこで?!」

 否定したいのかガチなのかその一世代前の典型的小学生構文・幻想郷版。

「チルノちゃんが大活躍した時だよ。幻想郷全体を燃やす異変の犯人をやっつけたんだって!」

 やっつけたって言う容姿相応の語彙力に一寸微笑ましく思う吾輩。

「そーなのかー。ヒツキ様はやっぱりそーなのかー」

 語彙がまた一層下がった声が後ろから抱き付かれて、いや、肩車形式で掛けられる。

「よぉルーミア暫く振りだな」

「久しぶりだぞヒツキ様。夜に喰っても良い人類になる算段は付いたかー?」

「付かねーよ、そぐわない事を言うんじゃありません。お前と言う癒しで何時までも過ごしタイこら指を甘噛むなぁ~…」

 頭撫でれば次は口だもんなぁ。


―――チュッ、チュッ、チュパッ、ジュル、チュー…ッ、ペロ、ペロ。


「急に年齢層上がらせる指のテクニカル甘噛み止めて貰えません?」

 一応15歳以上指定です。

「何か魚の味がしてるのだ」

 あ~……ヤツメウナギの迹ね。タレが絶妙に効いてんだ。ゴメン汚い手で撫でて。

 とは言えこの絵面やばいでしょうね。実際大ちゃんが顔を赤らめてチルノの目を防いで居る位だから、この事によって大ちゃんがソッチ系の知識に通な事が知らしめ晒された。

「大ちゃん、此れは何だ?」

「見えなくても見えるって能力のやつだよ…!」

 焦燥の余り語彙力のやつ。

「心眼だな」

「ソウデスソレデス新賀上手!」

 大ちゃん落ち着いて。

「心眼か。ところで其奴って、心眼を極めた私でも倒せるか?」

 チルノの話は異変の首謀者の所で止まって居た。更には心眼を既に会得した状態で。

「俺も心眼は低レベルで使えるが、極めても彼奴の速さは一筋縄ではいかない……難しいかもな」

「難しいのか。……あ、そうだ!」

 何かを思い付いたらしい。

「……あ~いや、矢っ張駄目だな。止めとこう」

「んぁ、如何した。その言い方はかえって気になるやつだぜ?」

「でもだって、お前を倒せば―――って考えたんだけど、友達は傷付けられないよな!」

 こんな気持ち良い事を真っ直ぐ言える。

 俺も純粋にこう願いたくなるし、だからこそ俺は此奴をこう呼ぶんだよな。

「それでこそ、最強だ」

 今も尚ルーミアが吟味してる分、チルノの目が隠れて格好付かないで居るんだけどな。



 まぁそんなこんなで「友達同士一緒に回ろう」と、漸っとルーミアが満喫し、その後手を拭いて、大妖精は「長くやりすぎると失明しちゃうから」と言う理由で手を離し、事実は一切知らずの「まぁ私は無限に問題ないけどな」と右手にチルノ、と想いきや気を使ってかの大妖精が右手に、緊張しつつも、ヒツキの手を掴む。

「ヒツキさんの右手は色々消えちゃうって噂だから、チルノちゃんが最強で無くなっちゃうかも!」

 成程…と、チルノは、左手側に回る。

 大妖精は口が上手いなぁ。

 そんな大ちゃんの気持ちを無碍にするようで、然し最強のチルノ様を置いて俺が真ん中とは些かと進言した。

 事、友達だが、右腕とか左腕には頼れる相棒を据え置くモノだぞと、右翼と左翼って言い方も有るとも言えば、

「まぁ今回はお前のえむぶいぴーだからな。寛大なあたいは今回特別に真ん中を譲ってやろう」

 と、歩く。





 ―――して、レミリアの前に現れるこの構図が生まれたと言う理由で。

「レミちゃんどこ行ってたの~。先生探したんだから~」

 更には幻想幼稚園の陽月先生、爆誕。

「バカにしてる事は解ったわ打っ飛ばすわよ?」

「んま、先生をぶっ飛ばすだなんてそんな乱暴な事言っちゃいけません!」

「本当咲夜も居ないし如何してくれようかしらこのゴミクズ……」

 手に力が入るレミリア。

「まぁまぁレミぃ。無礼講なんだし、貴方の命令もきちんと遂行したんだから、お巫山戯は大目に見て、褒美を優先してこその主なんじゃない?」

 と、本を読み乍ら友人を諭す友人。

「……ハァ、解ったわ。先ずは良くやってくれたわね。私の言い付けを守った貴方には、支給金に加えたボーナスと、私直々のプレゼントを与えるわ」

 勤務日時がぼやける程少なかったが、更にお嬢から何か貰えるのか。

 ルーミアを肩から下ろし、三人には一寸待っててくれなと一声掛けて、主の下、膝を付いて贈呈品を待つ。

「此れよ」

 と、何やら包み紙に入った柔らかい物だ。

「……開けても?」

「良いわよ」

 何とか綺麗に開放すれば、中から衣類、広げれば真っ黒のパーカーが姿を現した。

「行き付けの骨董屋で見つけた服よ。聞くとアンタお尋ね者らしいじゃない。その目立つ頭を隠すのに、そのフードとやらは最適でしょう」

 中古品の様な褪せた色で、着込めば袖は穴が開き、親指を通す為のデザインだ。

 そして暑い、冬の防寒にも打って付けだな。

 何より「格好良い」

「そうでしょう。磨きの足りない貴方に私のファッションセンスで少し秤男前さが伸長されたと言う理由ね」

 痛み入りますと、胸に抱える。

「それと……此れはレミリア・スカーレット個人として……貴方に特別なお礼よ……」

「あ、キッスは一寸お子さんの前では過激なので」

「何故でネタ晴らしするのよっ!」

「ハハハハ、馬鹿正直に答えなければ馬鹿を見たのは私だったのに、このおぜう様マジ可愛いですわー」

「その上に鎌を掛けたのね~……もう良いわよっ!」

「それで良いよ。俺にファーストやるなんざぁ、高貴な吸血鬼のお口が汚レ―――」

 逸らした顔向きが強引にもレミリアの方に再び向けられ………




 彼女の柔らかい唇が、額に掛かる。


「―――?!」

「………」

 チルノ以外の幼怪三人と、読書してる魔法使いが、わぁ~…と凝視の顔を赤らめて、チルノは何だと首を傾げて。

 レミリアは、想定外の事に、混乱を隠し切れない。

 油断した所を狙った筈の口が、何時の間にかと言うか、不自然な瞬間挙動を発して、滑る様におでこに向かったのだ。

『誠僭越不躾乍ら申し訳ございません、吸血鬼の御令嬢。このロクデナシたるヌシ様の汚唇は先約済みで御座いまして……』

 と、謎とヌシに対してちゃんと無礼の気を回した内のメイドみたいな出来る神様。

「……フン。吸血鬼に吸われなかった事、何れ後悔するわよ!」

 と、腕組み首を向こうに振って、不貞腐れ気味で元位置に座り込む。

 ……初めて会った時に言った事だが、本当に俺を吸血鬼の眷属にでもしようとしたのだろうかね。


「あらラら、レミィ拗ねちゃった……私からも渡したい物が有るの」

 と、物は小悪魔事こぁちゃんに渡され、小悪魔から俺に渡る。

 物は見て分かる通り、本だ。

「偏見だけど、貴方の好きな冒険譚をあげるわ。二巻丸々ね」

 その二巻は西遊記の上巻と下巻。

 以前、ヒツキが紅魔館に初めて来館した際、パチュリーの図書館で読み耽って居た作品。

「おぉ、ありがとう。暇の時にでも読むよ」

「それが本だからね」

「だな……んぁ?」

 見えない鞄に小口側からしまい込もうとすれば、何かが地面に摺り落ちた。

「何だコレ?」

「! 今其れは読んじゃ駄ムキュッ…!」

 左手を突き出し、圧力壁で迫るパチュリーを抑え込む。

 何だコレと傾げる頃には物は理解出来て居た。漫画だ。然も原画で、纏められて何らかの魔法で本になった、読み切りと言う同人界隈の薄いタイプだ。タイトルは―――

「“東方空界霊とうほうくうかいれい”……」

 作:Patchouli Knowledge


 ―――事、日の本の国の東側に位置しているとされる秘境が”幻想郷”。

 其処に突如として現れた謎の転生転移男が主人公。

 彼には心が無ければ生きる目的が無く死に場所を探して居たが、紅と白が特徴の巫女や白と黒が特徴の魔女と出会う事で活路を見出し、偶然にも現れた異変を起こす悪者が、幻想郷を崩壊させようと強硬策に出る。其処で主人公が不覚にも傷付けられた巫女と魔女を見て、傷付けられた友人の為、悪者に立ち向かい、苦戦しつつも、勝利を収め、無事に幻想郷の平和を保たれる。

 そして最後に、主人公は巫女と魔女に感謝の印に―――。

「……めっちゃ面白いじゃん!」

 この主人公は気に喰わないけど、とは言わず。率直な感想を大声で告げる。

「何、パチェがコレ描いたの? 絵がとても綺麗ね」

 と、右肩に乗っかってる様で蝙蝠の翼でフワフワ飛びながら一緒に見てるレミリア御嬢様もご好評のレビュー。

『下名、物凄くこの主人公好きです。救いようが無い所とか』

 逆に此奴は主人公推しらしい。まぁ男でか女でか見るからって奴かな。

「続きは、続きは無いんですか?! と言うかもっと仔細的に描いて欲しいですこの作品!」

 読み切り作品です左肩に居る大ちゃんさん。

「此処のバトルのトコロ凄いよな、勢いが! 動いてるみたいだ!」

 少年誌を読んでるやつの感想を述べる頭上左側のチルノ。バトルジャンルがお好みなようで。

「この物語は誇張や想像など作り手に寄る客観的視点で描かれ、然し乍らmodelまたはoriginalである人物のRealityに準じて居るnonfiction部分も多々有りその絶妙なBalanceが見事この短編storyにて縮図表現され、ベタ乍らも最後はしっかりとした感動の結末。星五つの中で評価を授ける形で上げるならばそれは、『星は五萬と在るのだから付けるにも付け難し。でも無限に広がるmedia或いは娯楽と言う夜の闇の中、この作品と言うnew starを見つけれて良かった』と感想も加えて言い程文句無しの星五つでしょう」

 物凄く緻密に繊細に饒舌に長々と最大究極銀河系到達高評価を述べた頭上右側に居るルーミアさんルーミアさん?!

 漫画を読んだ者達が、余りの知的振りを魅せたルーミアを一斉に凝視する。

「わは~…」

 夜だから幻覚見るわなって感じの(なんだ、何時ものルーミアか……)で漫画に視線を戻す。

 パチュリーは最早動けそうになく、小悪魔の膝元で額に冷えたタオルを乗せて寝込んで居る。

「……ハァ、作者本人の手前、口では簡単にポジティブ感想が言えるでしょうけど、杜撰な所が有るわよね……」

「なーに言ってんだよ図書委員いや、ノーレッジ先生」

「そうですよ。作画ミスってモノがプロでも無い理由ないですよ、生物ですもの」

 幻想郷流の名言。ってか、知ってるな、大妖精。

「そうだな。だから食物連鎖は出来上がる。弱肉は知恵で逃れるか運で強食かだからな」

 チルノさんらしくない、どうでも発言だ。

「そんな細かい所なんて一々見てられないわよ。大スケールで見過ごして凄いって思えるわよ、私は。揚げ足取りは暇な奴がやればいいのよ」

 と、友達にフォローの言葉を掛ける友達。

「不評が欲しけりゃ言ってやるよ。俺はこの主人公が嫌いだよ。言わずもがな」

 同族嫌悪。と言うより同一嫌悪。

「キャラクター一部を覗けば全て完璧だよ。何時から作ってたかによっては製作時間からも凄さを読み取れるぞ」

 少し顔を離すように傾けて、呟く。

「……貴方が倒れた三日の内によ」

「週刊より速いじゃん二、三話投稿できるわ」

 因むと頁は30。

 西遊記の栞として挟まれて居ても解らなかったが、開けば大量の頁数だ、魔法って凄ぇし、彼女が挟んで居ても落ちないように魔法を掛けなかったのは、其処には作者として矢張り読んで欲しい本音が有ったんだろうね。


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