5.モゲた勇者in棺桶、西へ!
ニンニキと鼻歌を歌いながら、王都を出て一月。今俺達は、生まれ故郷ファーディナル国から西側の隣国カンサスへ行くための峠道入り口で立ち往生している。そこには俺達だけじゃなく、三つ程の商隊も並んでいた。何がどうなっているのやら、近くにいるおっちゃんに聞いてみっか?。
「すみません、どうしたんですか、いったい?」
「んん? ああ、土砂崩れだよ土砂崩れ。この辺りは二週間ほど前から雨が続いていてなぁ、そんでもってこの二日間の豪雨ときたもんだ。おかげですんげぇ広い範囲で土砂崩れになっちまったらしくて、道が斜面ごと無くなっちまってんだよ」
「道がないって……どうすんですか?」
「まあ、こうなると斜面に新しく道を削って行くか、崩れたとこ埋めて道を作るか、迂回路を別に作るしかねぇんだが、斜面が削られた分だけ角度がきつくなってる上に、緩んだ地盤のために作るにせよ埋めるにせよ、今んとこ手が出せないってわけだ。この辺の地形から迂回路は無理だとわかってるしな。
こんなんじゃあ、俺らでは手が出ねぇ。商隊の主次第だろう。このまま待つか、引き返すか、北の国へと抜けて大きく迂回するか。まあそっちは半年ほどかかるから、ありえないだろうけど。南は知っての通り、エルフ共が、森に入った人族を彷徨わせる【迷いの結界】を張っているからどうにもならねぇしな」
「なるほど。つまりはお偉いさん次第なんですねぇ」
結局俺達は、商隊と共に峠手前の村に戻って村長に相談したんだが、崩れた山の斜面を見てあまりの酷さに絶句していた。道が途中からなくなって三十メートル程の絶壁になっていたのだから無理もない。村長から地元の領主様へと報告をして、何がしかの手を打ってもらうにしても、先を急ぐ俺達に待つ余裕はない。さて困ったなと思った時だった。
「おい! そこの小僧!」
「……何ですか?」
ああ、これは定番の無礼に無茶振りをして来るやつだな。テンプレテンプレ。
振り向くと、豪奢な刺繍が施された服に身を包んだ太った男がいる。商隊の主かな?
「あのデカイ黒馬はお前のものか?!」
「……いいえ、俺が連れているこの馬達は、全てファーディナル国の国王陛下の持ち馬です。どなたにもお譲り……」
「ええい構わん! ワシに売れ! 黙っていれば誰にも判らないし、お前も金が手に入るだろう! 金貨300枚でどうだ?!」
シュヴァルツをたった金貨300枚とは、馬鹿にするにも程がある。鋼の剣より安いなんてな。
あ、シュヴァルツのこめかみに太い血管がうく。
「イヤイヤ、それはダメですよ。国に帰れなくなってしまいます」
「逃げれば良いではないか! その程度もできんのか、お前は?!」
「そういう問題じゃ……」
「ゴチャゴチャうるさい! お前は黙ってワシに従えばいいんだ!」
最初からそのつもりかよ……
「生憎ですが、この黒馬は俺の言うことしか聞かないですよ」
「ふん! 諸国を股にかける大商人・ガメッツにできぬ事などないわ!」
そう叫びながらシュヴァルツへと鞭を振ろうとするバカデブ。その自信の根拠はどこから来るんだか。
ドカン!
「ギャアアアアアアッ!」
「あ、やっぱり」
あっさりとシュヴァルツの前蹴りで馬車まで吹き飛んだ。荷物にぶつかり、地面に転がる。クッションになったか。
「生意気な馬め!」
頭から血を流し、鼻血を垂れ流しながらシュヴァルツに再挑戦。今度は近くの岩に叩き付けられた。シュヴァルツの奴、相当頭に来てんな。
あれ? 動かない? 商隊の人が三人ほど駆け寄る。
「……だめだ。死んでる」
「……そうか……」
「ああ、清々したな」
なん……だと……?
「良い所で死んでくれたな」
「ああ。これで自由になれるってものだ」
「じゃあ、みんなで荷物を分けようぜ。これらが俺達の元手になる」
そう言いながら死んだ男の懐をまさぐる。そして一つの水晶を見つけた。
「これのおかげで……」
「ああ、随分と碌でもない目に遭ったな」
「だがこれで、自由だ!」
その場にいた男達が指に傷を付け、その血を水晶に擦り付ける。死んだ男を含めて全員が付け終わったところで、岩に叩き付けて粉々に割った。すると、そこに居た者達から光る靄が立ち上り、蒸気が消えるように薄くなって消えた。
それから商隊にいた者達が、俺とシュヴァルツの前に来て頭を下げる。
「……あの、どういうこと?」
「ありがとうございます。あの男が死んで、奴隷のような立場から解放されました。
我々は奴に借金したばかりに全てを奪われ、悪どい商売ばかりをさせられていたんです。
元々は行商人であった者達ばかりなので、あいつのやり方には憤慨させられていたんです」
「これで俺達もやっと、真っ当に商いができる。こんなに嬉しいことはありません」
「そうでしたか。……で、あの男の死因と遺体はどうします?」
「魔物に襲われたということにして、ここに埋めましょう」
やけにあっさりだなヲイ。
解放されたという連中が総動員でやたらと深い穴を掘り、数人がかりで蹴りまくって穴に叩き込んだ。そして、そこらに転がっている大きめの石から叩き付けるように投げ込み、土で埋めて全員で蹴りつけるように踏み固めた。それが終わった時の彼らの笑顔は、いい仕事をしたと言わんばかりの爽やかな笑顔なのが何とも……(とーい目)。どんだけ恨まれてんだよ。
それはともかく、俺はちょっと疑問に思った事があるので聞いてみた。
「そういえば、あの死んだ奴が持っていた水晶って、結局何だったんです?」
「ああ、あれは【誓いの水晶】って言って、元々は仲間内でパーティーを組む時に使う物なんですよ。でもあいつは、借金を返せなかった我々に服従を誓わせ、それでこの商隊に縛り付けていたんです」
「んじゃ、これだけ人数がいたのに、今まで誰もあの水晶を取り上げようとしなかったのは?」
「あいつに手を出さない・危害を加えないというのも、その誓いの中に入っていたんです。借金の事で頭が一杯で、視野が狭まっていたんですね。今なら陥れられてたって事が判ります」
お互いが対等に誓いの言葉を述べるなら、対等の関係でパーティーが組めるって事かー。
でも、俺達はそんなの使ってないけど、パーティーが組めてるよな。これも俺の持つ祝福の恩恵って奴なのかねー?
ま、どっちでもいいや。
「そういえば、あの水晶を割る前にあいつと皆の血を付けてましたね。何で?」
「普通は、あの水晶を割ればパーティーは解散されます。しかしその解散の条件に、【パーティー構成員の血が付いている】事を混ぜていたんですよ。一人でも欠けている状態であの水晶が割れると、奴以外の全員が死ぬようになってたんです」
「なるほど。だから、【危害を加えない】という条件が二重の意味で生きてくるんですね」
「そういうことです」
なんともややこしい。そんで狡賢い。
ま、これで何となく解決って事で、移動を始めようか。
「それじゃ、俺達はもう行きます。シュヴァルツ、北に向かうよ!」
「あっ! ちょっと待……」
シュタっと手を挙げ、馬車の御者席に飛び乗る。引き留めようとする声も無視無視。こういう所からはさっさと離れるに限るべ。
とは言っても回り道のために、峠ふもとの村から北に伸びる川沿いの街道へ馬車を回さざるを得なかった。神殿で時間を取られたのが仇になったな。この時間の遅れが後々にどう響いて来るのか、できれば良い判断だといいなぁ……
一週間程街道を北へと進み、そろそろ長雨で増水した川を渡りたいんだが、こういう場合はしっかりした橋がかかっている場所を渡るのがセオリーだ。それにしても渡れる橋まで一週間かかったのは、早かったのか遅かったのか……。途中、三箇所ほど橋が壊れていたしなぁ(とーい目)。まあ、渡れるだけでも良しとしよう。
馬車を引く雌馬のスールとディズは、王都からここに来るまでにレベルが40を超えた。俺達とパーティーを組んでいるという扱いになっている上に、この辺りの魔物はゴブリン・オーク・キルバードといった、王都周辺よりもレベルが高い魔物ばかりだから、経験値獲得量が多いんだろう。エンカウント率も結構高いしな。
ちなみにゴブリンやオークはテンプレ通りの連中を想像してもらえばいい。キルバードというのは鑑定して初めて魔物と分かった。見た目はほとんど鷹のような猛禽類で、翼がナイフのような羽に覆われている。それが音も無く急降下してきて獲物を切り裂くのだから、気付かずに殺られる事も多いだろう。シュヴァルツには簡単な相手だけどな。
魔物を狩る時はシュヴァルツが威圧をかけ、硬直したところを蹂躙している。ゴブリン程度はプチっと踏み潰し、オークは蹴りでパンッと弾ける。汚ねぇ花火の連発だ。キルバードもかなりの高さから落ちるので、大抵その衝撃で死ぬ。対魔物戦はシュヴァルツが全てやってくれるので、コッチは楽でいい。周囲が血まみれになるが、俺の浄化魔法できれいにしている。そうでないと瘴気が溜まって、動物が魔物になってしまうからな。
レベルが上がったおかげでスールとディズは、セシーやイープほどではないが馬体もだいぶ大きくなってきている。もう少し大きくなれば、シュヴァルツの相手もできるだろう。王都を出て一週間程経った頃からキャノン砲のエネルギー充填が120%を超え、エネルギー漏れすら起こっている。
定期的に空撃ちしてるようだけど、こいつの子種が垂れ流しなのはもったいないよなぁ。もう少ししたら正常な発射態勢に移行できるからな。辛抱してくれよな。
橋を渡り、西を目指す。
北側の国・エレファルト帝国との国境へと差し掛かる。ここには山間を利用した砦があるようだ。大きな門が見えてくる。門前には商人の馬車や旅人が並び、意外と人の出入りは多いようだ。
門はでかいんだがシュヴァルツはもっとでかいので、珍しく頭を下げて入る。門を守る衛兵達が口を大きく開けて唖然とシュヴァルツを見上げていた。道を歩く人々や店にいる人達も、シュヴァルツのあまりのデカさに呆然としている。
砦内は外から見た感じよりも大きく、ちょっと大きめの村という印象だ。武器屋・防具屋・道具屋・食堂に宿。それぞれ三店舗ずつが離れて営業している。
今日は、一番大きい宿に泊まることにした。シュヴァルツが居られる裏の空き地があるからだ。尤も、シュヴァルツは厩舎に入れない程でかいので、その前にいる。
宿の宿泊名簿に記帳をして、二泊分の料金を前払いする。そして厩舎から秣等を出してシュヴァルツ達の世話をした。こいつら馬体がデカすぎるから、宿から出た分の秣じゃあ量が足りないだろう。通りへ出て野菜や果物を樽の二つ分一杯に買い込んでくる。久しぶりの新鮮な食い物に、みんながっついて食べた。旅の間じゃあ野草ばかりで、少々栄養が偏るだろうからな。その間にも水を出したりブラッシングしたり、馬具の手入れをしたりと色々作業をする。
一通り世話も終わり、風呂に入って食事をとった。落ち着いて眠れるのも王都を出て以来だなぁ……
翌日も朝からシュヴァルツ達の世話をし、それが終わったので旅の食料の買い込みと武器・防具を見に行く。
日持ちの良い食材と調味料を仕入れ、防具屋へと入る。
「こんちわー。防具が欲しいんですけどー」
「いらっしゃい。どんなのが欲しいんです?」
奥からは背の高い優男が出てきた。
「これからエレファルト帝国に向かうので、そこに合った物が良いです」
「北行きですね。それなら、アイスベアの皮鎧が良いですよ。内側にはスノーラビッツの毛皮が張ってあるので、保温性に優れてます」
そう言って奥から持ってきたのは、ほとんどフルアーマーのセットだった。
「ちょっ、そんな大げさな物じゃなくてもいいんですけど……」
「これぐらいでないと、凍え死にますよ?」
「マジ?」
店主の顔が怖いまま頷く。う~~~~ん、仕方ないか~~。
「いくら?」
「金貨で130万枚」
高っ! めっちゃ高っ! でも買えるから買う!
「買った」
魔物からのドロップした金貨を出そうとすると、店主が慌てて止める。
「ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って! もしかして即金?!」
「うん」
「それならこっちの金貨袋に直接入れてください! 金額を頭で思うだけで、それだけの枚数の金貨が移動しますから!
っていうか、金貨130万枚なんてお店からはみ出ちゃうでしょうが!」
「そりゃそうだ」
ペシリとおでこを叩いた俺は、店主に言われた通り、店の金貨袋に直接移動させる。
四時間近くかかるとは思わなかったョ…………orz
防具を受け取り、今度は武器屋へ行く。
俺はたいした腕ではないので、金貨1万のショートソードを三本買った。おまけで手入れの砥石をもらう。粗めと細かめの物だ。
宿に戻ってシュヴァルツ達の世話をし、部屋で三つ目の砥石を造る。まず、土系統の魔法でそれぞれの砥石を三分の一ほど分け、小さい方のそれらを一つに合成し、更に細かくきれいに平たい形状へと形成した。
空の桶を出し、水魔法で半分ほど溜める。粗めの砥石を濡らし、先程買ってきたショートソードを磨く。ほとんど素人の俺が見ても、薄らと歪んでるのが判るくらいの安物なのだ。
ちなみに高い武器だと金貨一千万を軽く超える。そうなると支払いが大変だ。白金貨(金貨千枚分)やミスリル貨(白金貨百枚分)といった貨幣にしないと簡単には払えない。両替商での手数料は確か5パーセントだったから、俺の持ち金だと相当取られるだろうな。
ま、それは置いておこう。今は研いでいる剣だ。土魔法をほんのわずかに流しながら磨くと、削れた金属をへこんでいる部分に定着させる事ができる。そういうイメージが大事なんだ。そうしながら徐々に、若干反りの有る形状へと変えていった。日本刀のような反りの有る剣に憧れてたからだ。この形なら、叩き切るではなく、引き斬る事ができるだろう、多分。できなかったら、それはそれでいいや。もしかしたら抜刀術みたいなこともできるかも、多分、おそらく。
一本だけ形を整えるのが終わった時には、夕食時間をとっくに過ぎていた。
慌てて食堂に行くと、テーブル席は満席。カウンター席に座り、注文を入れる。
「マスター、お勧めのメニューは何?!」
「今日は牛肉のシチューと川魚のスープがあるが、どっちにするね?」
「牛肉!」
「そうか。それならこの組み合わせだな」
そう言って出してくれたのは、牛肉のシチューに炙った鳥モモ肉、パンに野菜サラダだった。
「飲み物は何にする?」
「う〜〜〜ん、背が高くなりたいからミルクで」
そう言った途端、周囲の連中が爆笑する。
「坊主! ママのオッパイが恋しいのか?!」
「お家に帰って甘えてきな!」
あ〜〜〜、酒場でミルクを注文すればこうなるよなぁ。これもテンプレかぁ。ああ、アニメ映画にもあったよな、こんなシーン。
「俺はもっと背が欲しいんだ? 成長期なんだからな?」
「ぶははははは! 違ぇねえ?」
「おうおう! 男はそうでないとな!」
およ? あんま雰囲気は悪くないじゃん。
出てきた大ジョッキには、並々とミルクが入っている。こんなに飲んだら腹壊さねぇ?
だが、俺はそれを半分くらい一気に飲んだ。
「っかーーーっ! うめーーーーーっ!」
「ったりめぇよ! ここいらの牛は他ンとことは一味も二味も良いからな!」
「そんならシチューにも期待が持てるな」
「ホレ、坊主。たっぷり食ってでっかくなれ」
「おお! いっただっきまーーーす!」
焦げ茶色のスープには牛肉とジャガイモ、ニンジン、豆等がゴロゴロと入ってる。肉とジャガイモを口にした瞬間、あまりの美味さに天上の楽園が見えた気がした。
「……坊主、なに泣いてんだよ?」
「……あまりの美味さに感動してんだよ。こんなに美味いシチューは初めてだ」
「そ、そうか。まあ、ガッツリ食え」
親父、照れてんな。あまり似合っちゃいないが。他の飲み客もニヤニヤ眺めている。
味も量も堪能した俺は、部屋でぐっすりと休めた。
翌朝、シュヴァルツ達の世話を終えると、追加で食料や調味料、秣といった物を買いに行く。次はいつ補給できるか判らないからな。秣は勇者様の馬車に詰めた。どうせ俺は使わないし。というか、臭いが未だ抜けないんだよ。だから倉庫として使ってる。魔物のドロップアイテムは意外と多いから、それも積めた。
夕刻までかかって買い物を終え、シュヴァルツ達の世話をする。明日は国境越えだ。
勇者様の馬車というわけですんなりと国境を越えた俺達は、更に西へと向かう。ニンニキである。
毎日の寒さが増してきてるから、正午と日没の中間くらいの時間に辿り着いた村や街で一泊。寒いの苦手だから無理はしねぇ。アイスベアの革鎧のおかげである程度は寒さが凌てはいるが、寒いのは寒い。
街で露店を開いている行商のおっちゃんが居たので、この国について聞いてみようか。ついでに買い物だ。お? 調味料入れに丁度良いツボがある。
「すんません、この小さいツボ、六つでいくら?」
「ん? これなら銀貨十八枚だな」
「え? 高いよ。十二枚くらいじゃない?」
「いいや、ここいらでは作ってる所が無いんでな。他国から取り寄せてるから、どうしても値段が上がるんだよ。よそでも似たようなもんさ」
「そっかぁ……んじゃ、それで買うよ。この国の中央……えっと……」
「帝都か?」
「そうそう! そこでも似たようなもん?」
「あっちは更に遠いからな。もっと値段は高くなるぞ。税金も上がるしな」
「うげぇ……それでどうやって生計たてんの?」
「なんだ、知らんのか。帝都は西と北が大きな山脈になってる。大規模な鉱山が幾つもあって、多種多様な金属を大量に生産してるんだ。もちろん、製品もな」
「え? 北と西が山脈?」
「そ。だから、国の許可が無い者は山には行けねぇし、その先に行く事もできねぇぞ」
な、なんてこった―――――――――っ? orz
「この国では一旦南にあるカンサス国に抜けてから、西を目指すのが普通なんだよ」
さて困った。
土砂崩れで道行きを変更し、ここまで来るのに一ヶ月。戻ったところで崩れた場所が通れるようになっているかも判らない。
……転移魔法であの村へ聞きに行ってみるか。
というわけで、街の外へ出てからあの村へと転移魔法で戻る。
村の店で聞いてみると、崩れた道は未だに回復の目処が立っていないらしい。
これではどうにもならないので、シュヴァルツ達を預けている街へと転移で戻る。街で一泊し、再び西へ。
道行きはまっすぐにはなり得ず、山間を抜けるために蛇行している。おおまかに西へ向かっているが、だいぶ北寄りでもある。
それから四日。三つの村で一泊ずつしてようやく帝都に到着だ。
国境の砦街で聞いた通り、物価はどんどん上がっていく。予め買い込んでおいて良かった~~。
だんだん雪が深くなっていくのが気がかりではあったが……
帝都の門は複数開いており、三つの門が出口、五つの門が入り口となっている。待ち時間は短く、簡単に荷物を検査されたが、これといって問題なく通過できた。相変わらず、シュヴァルツ達を見る目が驚きに満ちていたのには笑える。門がでかいので、シュヴァルツ達も頭を下げる事なく通れるのには驚いた。
街の通りはとても広い。荷物を積んだ馬車が大量に行き交う。金属製品を中心に積んでいるため、山成になっている荷物の半分以上は秣だ。馬車が壊れないようにという配慮だろうな。
どこの宿も、大型の馬車でも宿泊できるように、大型の車庫と厩舎がある。安くて入りやすい場所を探すと、七件目で見つかった。珍しい事に、シュヴァルツでも頭をつかえることなく入れる程にでかい厩舎だ。
いつものようにシュヴァルツ達の世話をし、道具屋を見て回る。
やはり高い。
金属製品は安いんだが、他が軒並み、故郷の街での五倍はする。さすが大規模に鉱山を抱える帝都だけはあるな。商売をする気はないから、できの良い調理器具を一揃え買い込み、宿に戻った。
翌日から吹雪だった(笑)
勇者が腐らなければいいなぁ。