4.おお勇者よ、死んでしまうとは情けない
マジ情けない死に方でした。orz
経緯も情けないものだったが……
俺が、この間の大レベルアップで使えるようになっていた空間転移の魔法で、勇者ハーレムの三人を王都へ連れて行ったんだけど、戻って来たら馬車の中に手紙が一通だけ残ってたんだ。
『魔王退治は俺一人でやるから、追って来なくていいぞ。お前は王都へ帰れ』
文面は殊勝なものだが、内心浮かれているだろうことが、書かれた文字の乱れ具合で解る。何より、日本語で書かれていたから、本来のこっちの者には読めないってのを全く考えもしてないな。
それに妊娠した三人のことには触れていないから、巡った街ごとに女の子をナンパしまくろうという腹づもりなんだろう。そして宿に連れ込んでハッスルしまくるに違いない。ま、やってることは今までと変わらないって事だよな。
こうなると、セシーとイープがいても仕方がない。勇者様専用馬車が必要なくなったからだ。
「シュヴァルツー」
「ブルル?」
「勇者が逃げ出してしまったから、馬車はいらないみたい」
「ブル」
「で、セシーとイープはお前の子供を身籠もっているから、大事をとって王都に戻した方がいいと思うんだが、お前はどう思う?」
俺の問いにシュヴァルツはしばし悩み、首を縦に振る。
その瞬間、セシーとイープから俺に対して尋常でない圧力がかかってきた。
くっ……ぶっちゃけシュヴァルツを超えている。下手をすると魔王よりもオソロシイかもしれん。おかげでこっちはマジで腰が引けて股間がキュッてなってるぞ。
「なんつープレッシャーだよ、ヲイ。落ち着け、お前ら」
セシーは鼻息荒くこちらに迫ってこようとするし、イープは黙ったまま怒りの波動を叩き付けてくる。
俺は頭をかきながら、言いくるめる言葉を考えた。
「いいか、シュヴァルツの子供を身篭っているお前らには、しっかりと丈夫な子供を産んで欲しいんだよ。そのためには王都へ戻るのが一番なんだ。それにシュヴァルツも、お前らと子供を守りながら魔物と戦うのは厳しいというのもある。今までは弱かった魔物も今後は強くなっていくだろうし、予想できない攻撃で不意を突かれることもあるだろう。そんな時、お前たちが傷ついたらシュヴァルツが荒れるからな。そんな事態は避けたいんだよ」
俺の説得に暫らく躊躇い、うな垂れるように頷いた。
「馬車があると王都に転移魔法で行くのはできないから、来た道を戻る事になる。勇者様がいないから、早く戻れるだろ。魔王を倒すのは、勇者を見つけてからだな」
全く、余計な手間をかけさせてくれる。
ってなわけで、王都に向かって戻ることにした。これまで辿った道だから、全く不自由はない。
そんな風に思っていた時期が俺にもありました。(AA略
王都へ向けて移動を始めて五日目、国境近くの大きな街へ辿り着いた俺達。
「ん? 街の雰囲気が暗いな……」
街のあちこちからすすり泣きが聞こえる。それもかなりの人数だ。
たまたま街道を巡回していた兵士に聞いてみると、街の宿で勇者様が死んでしまい、教会で葬儀を行っているという。
ヤバイ。近衛団長閣下からは、もしも勇者様が志半ばで倒れられた場合についての対処法を教わっている。この時、墓に埋められた時点で対処法が使えなくなるらしいので、俺は血の気が引いた。
教会へ急いで馬車を回して行くと、人々の群れが隣の墓地へと移動しているところだった。
馬車から飛び降り、人々をかき分けて神父様への元へ辿り着く。
間に合った! 棺はまだ、墓穴には入っていない。
「神父様、お待ち下さい!」
「君は? この葬儀が勇者様のものだと分かっていて止めるのかね?」
「はい。私は勇者様のお供で御者をしている者です。実は、勇者様を生き返らせる方法があるのです」
「……なんと恐れ多い……一度死した者を生き返らせるなど、神への冒涜です!」
顔をしかめる神父様。だが、こちらには特別な物が近衛団長閣下から与えられているので問題無い。
「神父様、勇者様の馬車にはこんなこともあろうかと、神の祝福を受けた棺がございます。そして、勇者様が祝福を受ける際にあった宣託により、生き返る方法もまた伝えられております」
「なんと……これも神の思し召しでありましたか……」
神父様は手を組み祈りを捧げた後、空を仰ぎ見た。そして片手を上げて葬儀の進行を止める。
「皆さん! 神の思し召しにより、勇者様は生き返る方法があるようです!」
おおっ! と、弔問に訪れた人々の間からどよめきが起こる。
「勇者様の御遺体を教会へと戻しましょう!」
あれほど暗かった葬送の列が、かなり明るいものへと変わる。まだ遺体であるがゆえに、お祭り騒ぎとまではならないだけの分別はあるらしい。中には本当に生き返らせることができるのかという疑問を持つ者もいるだろうが、今の所何も聞かれてはいない。
教会に戻ると、俺が回してきた勇者様専用馬車を見た人々は感嘆の溜息を漏らす。確かに豪奢な飾りも着いてはいるが、それ以上に馬車そのものを魔道具にしている器具や付随している魔石などが、庶民には縁のないほどふんだんに使われている。馬車の値段だけで、八人家族が二十年は働かずに暮らせるだろう。
それだけの格を見せる馬車に人々は、せめて一目だけでもと取り囲む。ただし、遠巻きに。
何故なら、異様な迫力を撒き散らすシュヴァルツがいるからだ。
俺は急いで馬車の下に格納されている『勇者様専用保存棺』を引っ張り出す。それなりの大きさがあるので、街の人たちが手伝ってくれた。俺達はそれを勇者様の棺の隣に置き、早速御遺体を移し替える。蓋を閉じて五ヶ所にある金具を止めると、棺全体に魔法陣が光って浮かび上がった。
どよめきが起こると、神父様が片手を上げて神への感謝を捧げた。そして俺と街の人たちで棺を馬車へと運ぶ。所定の場所に棺を入れて蓋を閉じると、まるで鍵をかけるように丸い魔法陣が浮かび、開けなくなった。
「これでひと段落ですね。今後はどのように?」
「一度王都へ戻ります。万が一の為に、王都で指示を仰ぐことになっています」
「王都にその手段があるのですか?」
「それは俺にも知らされておりません。報告もありますし、王都へ戻るのは仕方ありません」
「そうですか。困ったら教会を訪ねて下さい。きっと力になるでしょう」
「はい、ありがとうございます。
ところで、勇者様はどのようにして亡くなったのでしょうか?」
国王陛下にご報告しなければならないからな。こればかりは疎かにできない。
「詳しいことは警邏隊が調べ上げているはずです。詰所まで案内しましょう」
「お願いします」
俺は頭を下げ、御者台へと上がった。神父様も隣に座る。シュヴァルツは俺の隣に来た。
神父様の案内で警邏隊の詰所へ来た。
そして勇者様が死んだ経緯を聞いて、俺は……俺は……頭が頭痛で痛くなった。
ああ、言葉の使い方が間違っているというのは分かっている。でも、そう表現するにふさわしいバカバカしさだったんだよ。だから頭が頭痛で痛くなったんだ。大事なことなので二回。
まあ、その経緯なんだが、今から四日前、勇者様が街に現れたらしい。その時にはいくらかのお金と大量の魔物の毛皮を持ってきたんだそうな。それを売り払って、中ぐらいよりはいくらか上質の宿へと十日ほど泊まることになった。料金も前払いで済ませるほど景気が良かったらしい。
拠点を定めた勇者様は、街のあちこちでナンパを始めたんだそうな。また、街の門を通る時に勇者様であることが、門番から警邏隊を通じて領主様へと伝わったという。そうなると、その街の有力者達が勇者様を訪れ、手を替え品を替えて取り入ってきた。その品には若い女性も含まれていたわけで。
んで、死ぬ前日の夕方から十二名の女性を相手にヤり放題と……
ここでただの腹上死なら、ある意味男の本懐だろう。とーい目で勇者様を見ながら、
「この世界にリ◯インは無いんだから、二十四時間は勃てられないだろ! 無茶しやがって(星空に浮かぶ勇者の笑顔に皆で敬礼のAA略。だけど若いんだから仕方ないね!」
で終わる。だが、今回はここからが悲惨となった。
勇者様を死なせてしまった女性は、篭り始めた翌日の昼にやってきた。街を含むこの辺りの地方を治める領主様の娘で、妾に産ませた四女だそうだ。彼女は十五歳。丁度結婚適齢期であったので、領主様はあわよくばそのまま嫁入りさせて、身内に取り込もうと企んだわけだ。
しかし勇者様はそんな事を気にもせず、また彼女が処女である事にも気遣いせず、妊娠させた女性達にしていたようにいきなり激しく吶喊した。そして彼女の身体はその激しさと未経験の快楽に耐えきれなかったらしく、全身が痙攣を起こしてしまう。特に、合体パーツを受け入れている部分が酷く、勇者様がいくら「痛いよ離せ!」と叫んでも、「離すもんかソーセージ!」とばかりにガッチリと締め付けてきた。周囲にいた女性達が手伝って引き離そうとしても、抜けることはない。そして締め付けが限界を超え、勇者様の合体パーツはモゲた…………大量に血液の溜まったパーツをモガれ、赤チン塗っても治らないほどの傷口から更なる大量出血によって、勇者様はバカバカしく失血死した。周囲で聞いていた男達が渋い顔で内股になり、キュッと腰を引いたのは男の本能だ。俺も腰が引けたし。
よく、モテ野郎に対して「リア充死ね」とか「モゲロ」とかの怨嗟の声が聞かれるが、まさか本当にモゲて死ぬとは、想定外というか情けないにもほどがある。
冒頭でorzになった俺の気持ちが少しは解ってもらえただろうか。これが戦いで命を落としたのなら、『勇者、死す!』と格好もついたというのに。
ともかく、勇者様は死んだ。故に、王都を出発する前に聞いていた、勇者様が万が一死んだ場合の対策を教えてもらうために、一度王都に戻らなければならない。
ちなみに、出発前に生き返らせるための方法を尋ねたところ、俺からそれが他者に漏れ、他の人々や貴族達に知られたら世の中が混乱すると言うことであった。まあ想像はつくので、その場では聞かないことにしたわけだが、こんなにも早々と死んでしまうのは想定外にもほどがある。
今はもう、どうにでもなあ〜れっていう心境だ。
「では、失礼します」
神父様を教会まで送り、王都に向けて出発する。
シュヴァルツ達は賢いので、王都へ向かうことはわかっている。だから俺は、考えるべきことに没頭していた。
それは、勇者様が俺達より先にこの街へ着いている件について。
俺達ですら五日かかっているのだ。それをたった一日でこの街にたどり着いていること自体、異常である。それはつまり、勇者様も俺と同じように空間転移の魔法を使えたんじゃないかという推測が成り立つわけだ。徒歩が馬車より早いなんて、余程でない限りあり得ない。どこかに別の場所をつなぐゲートの類でも使わなければ不可能だ。そんなものは聞いたこともなかったけどな。俺が知らないだけかもしれんが……
まあ、王都を出た時点で勇者様のレベルは30を超えていたから、その時には空間転移の魔法を覚えていたとしても不思議では無いし、その方が自然である。空間転移の魔法の修得レベルがどれくらいなのかは知らないけどな。
金については俺が全額管理していたので、街に入る前に森で獣を乱獲したんだろう。そのドロップした毛皮を売って、宿泊の足しにしたってところか。レベル差があるから、狩りは余裕だったろうな。実際はどうだったのかはわからないが、大体の流れはこんなもんだろう。あとは勇者様の名の下に、街の女性達を相手にやりたい放題ヤり放題と……
うん。同情の余地は無いな。
グダグダ考えている間に、街の西門に辿り着く。王都に比べればどの街も小さく感じるな。でも、国境近くだからこそ、この街は大きい方である。村レベルになると、集落を通り抜けるのに三十分もかからないくらいだ。
それはさて置き、門を通って王都への道をひた走る。シュヴァルツのおかげで小物の魔物は出てこない。余計な足手まといもいないから、サクサク移動できる。だから、王都には二十日を切る日数で帰って来た。
勇者様の馬車ということで民衆に囲まれるのを避けるため、騎士団や貴族様方が使われる北の門から入って厩舎へ向かう。
「おおっ?! シュヴァルツか?! チョット見ねぇ間に随分とでかくなったというか立派になったなぁ……」
厩舎勤めのオヤジさん達が目を丸くしている。シュヴァルツも出発時は、親父さん達の頭が腹の真横くらいの高さだったんだよ。それが今じゃあ、腹の下だ。目の前にシュヴァルツのオスの象徴が大砲のように黒光りしている。
「……で……でけぇ……」
「……すごく……大きいです……」
セシーとイープもひと回り程でかくなっているんだがな、シュヴァルツのインパクトがデカすぎたらしい。あの大レベルアップの時からだ。シュヴァルツは馬具を付けないから何ともなかったが、セシーとイープはベルトなどが身体に食い込んでいたので、休憩時に見つけた時は焦ったものだった。
厩舎に着くと、あまりに早い帰還に驚かれたが、重大事が起きたからと馬達を親父達に任せ、厩舎責任者であるテルマット子爵様の元へと急いだ。
「勇者様が亡くなりました」の一言で、テルマット子爵様は俺を近衛団長閣下の下へと連れて行く。ほとんどフリーパス状態で部屋まで通されると、詳しい事情を聞かれた。
リア充がモゲて死んだという下りに、御二方は深い深〜〜い溜息をつき、労いの言葉をかけて下さった。
「よもや、これ程早く蘇生の術に頼ることになろうとは……」
「やはり彼に節操を求めるのは無意味であったか……」
「愚かな者に仕えさせることになってすまない。だが、魔王を倒すには勇者の力が必要だ」
「うむ。魔王を倒すまでは頼むぞ」
「はい」
まあ、俺やシュヴァルツの力では魔王に届かないんだろうな。それを打破する力が勇者にはあると。それだけのために、勇者の力が必要なんだろうな。
「さて、勇者殿を生き返らせる方法についてだが、まずは国王陛下に事の次第を申し上げなければならない。王城へ行くぞ」
「は!」
近衛団長閣下に連れられ、俺は王城へと向かう。テルマット子爵様は厩舎へと戻られた。
国王陛下への謁見の間は、微妙に重苦しい空気が漂っている。
陛下を始め、宰相閣下や各大臣殿はいずれも、勇者様の死に様に渋い顰め面となっている。『モゲて死んだ』などという、男なら誰でも情けないと思えるような凄惨な死に方では、渋面を作ってしまうのは仕方ない。死に至るまでの過程が馬鹿馬鹿しいとなればなおのことだろう。
「経緯はともかく、勇者殿を生き返らせる必要はある。魔王退治には必要不可欠であるからな。
供の者よ、中央教会へ行き、大司祭様に会うのだ。死者蘇生の方法は禁忌に当たる。よって、勇者殿だけは特別の計らいで使われるのだ。不心得者に知られたら大事になり、下手をすれば国が乱れてしまうだろう。心して動くように」
「はっ!」
ここは承諾しかないからな〜。勇者様のお守りなんて願い下げなんだけど、どうにもならんわ。
謁見の間を退室した近衛団長閣下と俺は、お城の西側にある中央教会へと足を運ぶ。……歩いて。……5キロくらいあるけどな。
近衛団長閣下のおかげで大司教猊下へのお目通りは簡単に叶い、その応接室で待っている。
「お待たせしました」
装飾が派手な服装に白髪白髭の御老体と、やや地味な服装に赤髪赤髭の中年男性が入ってきた。
近衛団長閣下と俺は立ち上がり、深くお辞儀をする。
「早速お話に入りましょう。何でも、勇者様が命を落とされたとか……」
「はい。東の隣国にて」
「魔王退治のためにも、急ぎ、勇者様の蘇生を行わなくてはなりません。
大司教猊下、この者にその方法を教えていただきたいのです」
二人で頭を下げる。だが、大司教猊下は難しい顔のままだ。
「困りましたね。死者蘇生の方法を知っているのは当教会の姫巫女だけなのですが、三日程前に神への儀式に入られたのです。こうなると、この儀式が終わるまで姫巫女には会えません」
「その儀式が終わるのは……」
「あと二十日程かかります」
「そうですか……ちなみにどのような儀式なんですか?」
「勇者様の旅の安全を祈る儀式です」
「……その肝心の勇者様が死んでるのだから意味がないと思うのですが?」
「…………」
「…………」
大司教猊下と近衛団長閣下との間に、微妙な空気が漂う。
「一度儀式の間に入られると、外部からは連絡できなくなります」
「食事とかはどうなさってるんですか?」
「専用の個室と倉庫がありますから」
俺と近衛団長閣下が項垂れる。連絡できなきゃどうにもならない。
「これではしょうがない。出直すとしよう」
「お願いします。儀式が終了次第、近衛団長閣下にご連絡を差し上げます」
「よろしくお願いします」
俺達は近衛団本部に戻り、俺は勇者関連について箝口令を受けた。こんな恥ずかしい事、誰にも話せないよなぁ。
「とりあえずお前は、連絡があるまで自宅へ帰っていて構わない。再度旅に出るまでに、準備は済ませておくように」
「はい、わかりました」
俺は一通りの注意と命令を受け、近衛団本部を後にする。
テルマット子爵様にはセシーとイープが妊娠していることを報告し、馬車を引く馬を変える必要があることを進言しなくてはいけない。だから厩舎に寄ってみた。
そこには唖然としてシュヴァルツを見上げるテルマット子爵様がいる。
「テルマット子爵様……」
「……ああ、君か……」
なんか半分呆けているな。
「如何なさいましたか?」
「ナゼこんなに大きくなったのかね?」
「実は少し前に、大量の魔物を倒しまして、その時に得た経験値のおかげで急成長をしてしまいました。
さらにセシーやイープも同様の変化を遂げています」
「なんだってっ?!」
「それともう一つ、この両馬は妊娠しています」
もう、開いた口が塞がらない状態だ。
「……そうか。それなら代わりの馬を探さなくては」
非常に悩ましい。シュヴァルツは大概の馬に恐れられているから、一緒に行けるのがとっても少ないんだよなぁ。残る雌馬はスールとディズくらいか……レベルアップすれば体格も大きくなるから、シュヴァルツにはしばらく我慢してもらわないといけないかもな。
俺の進言で、テルマット子爵様は悩むのをやめ、早速手続きの書類を書いて俺に渡す。
「ま、あまり無茶はさせないようにな」
「はい」
あの二頭なら、結構早く慣れるだろう。シュヴァルツのアレに。
二十日ほど経ち、俺は近衛団長閣下に連れられて中央教会に来た。ちなみにこの二十日間は、近衛団長閣下との訓練漬けの毎日だった。ステータスが上がっても、技量が全然ないものだから一方的にやられっぱなしだった。片手剣や両手剣は俺がレベル3なのに対し、団長閣下は50越えだとか。敵わないわけだよ、全く。
早速、大司教猊下に連れられてやってきた姫巫女様にお会いする。大司教猊下は渋い顔をなさっているが、はて?
「随分とお待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。勇者様の一大事に儀式を優先させてしまうとは、大司教も愚かな真似をしたものです」
「教会にとって大事な儀式を中断させるなど、もっての外ですぞ!」
「無意味なことに価値を見出すとは、随分と俗な考えですのね、大司教?」
「なんですと?!」
「勇者様がお倒れになった今、一刻も早く蘇生しなければ、それだけ魔王と魔族の跳梁を許し、人々が苦しめられるのです! 教会の規則がその要因となってしまうなど、本末転倒にも程があります!
それに、蘇生が遅れればそれだけ勇者様のこれまでに得た経験値が減っていきます。つまり、弱体化して行くのです。それを取り戻すために、さらにどれだけの時間がかかるのか計り知れません」
ぐうの音も出ない大司教猊下はうなだれ、醜いオブジェと化した。
「そんなことよりも、勇者様を蘇生する方法をお教えください」
「その方がいいですわね。
勇者様の蘇生方法は『聖母様』がご存知です。聖母様は、この大陸の西の果てにある港町から更に西へと向かった先にある大陸にいらっしゃるということです。オーギュスト司教をお尋ねください。彼の方が聖母様のいらっしゃる場所をご存知のはずです」
「遥か西に渡った大陸のオーギュスト司教様ですね。早速明日にでも出発します」
俺と近衛団長閣下は中央教会を出て、それぞれ別れた。早速厩舎へ行き、テルマット子爵様に旅に出ることを報告する。
「そうか、いよいよか……バカを頼むぞ」
「はい」
既に準備はできている。
翌朝、俺達は王都から西へと旅立った。
背後からの強烈なプレッシャーを感じながらだったけどな。っつーか、セシーとイープ、おまいら落ち着け。いい子を産めよ。




