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試練の塔  作者: 甲羅に籠る亀


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12/12

12話

 後方の野犬の群れにマサキは向かう。


 距離を詰めて野犬の群れに接近しながらマサキは片手を野犬の群れの1匹の野犬に向けた。


 「倍加、魔力弾!」


 野犬でも直撃させられれば瀕死か即死させられるくらいの威力になっている魔力弾の速度を2倍にして野犬に放った。


 「キャイン!?」と悲鳴を上げて野犬の1匹は動かなくなるのを視界に入れながら、マサキは距離を詰めた野犬に槍を振り回す。


 今は野犬の群れの野犬に少しでもダメージを与えて万全な状態にさせないことを優先してとにかくダメージを与えていく。


 もちろん倒せるのならそのまま野犬に致命傷を負わせて倒していくのだが、後ろの方で巨大野犬が口内のダメージから復帰している気配がする。


 「遅かったか!」


 野犬の群れを完全に倒しきる前に巨大野犬がマサキを睨んで動き出そうとしている姿が眼に映った。


 今の野犬の群れの中で万全な状態の野犬は1匹も居ないが、それでも戦える野犬はいるだろうし、巨大野犬だけに意識を集中させて戦える状況ではなくなった。


 「仕方ないか。」


 マサキはとりあえず野犬を先に倒してしまうことにした。


 もちろん意識を野犬の群れだけに向けるのではなく、巨大野犬に意識の半分以上を向けて、常に巨大野犬が視界に入るように野犬の群れを倒していくことに決めた。


 まずは野犬の群れの中でもそこまでダメージを負っていない個体の元まで全力で接近して槍で串刺しにする。


 串刺しの野犬は苦しみに悲鳴を上げているが、そこは無視して今にもマサキに向かって駆け出して来ている巨大野犬に向かって全力で槍を振るい、槍の穂先に突き刺さっている野犬を放り投げる。


 穂先から抜けた野犬はそのままマサキに向かって駆け出して来ていた巨大野犬に衝突する。


 巨大野犬もいきなり飛んできた野犬を見てすぐには回避出来なかったのか、野犬は巨大野犬の顔面に直撃した。


 怯む巨大野犬は動きを止めたし、投げ付けられた野犬は槍に突き刺された影響とそれまでの蓄積していたダメージに巨大野犬に衝突したダメージもあってそのまま動かなくなった。


 これで残っている野犬の群れの野犬は残り2匹だけになる。


 2匹並んでマサキを睨み付けて威嚇している野犬の群れに向かって全力でダッシュ。


 そのまま接近したマサキは野犬たちが何かをする前に野犬の1匹に前蹴りを喰らわして、残りの1匹の野犬に槍を突き刺して再び巨大野犬に向かって放り投げる。


 「流石に2回目は避けるか。」


 2度目の野犬の投擲は巨大野犬に回避されてしまった。


 全力で走っていたのなら巨大野犬も回避は出来ずに衝突してもおかしくはなかっただろうが、流石に動いていない立ち止まっている状態なら野犬くらいのサイズの投擲物を回避するくらいは問題なかったようだ。


 地面に叩き付けられて投擲した野犬はそのまま死んでいくだろう。


 これで残りの野犬の群れの野犬は1匹だけになる。


 その1匹も先ほど蹴りを喰らわせてダメージを与えたから当分は動くことも出来ないだろうが、マサキは蹴りのダメージで身動きが出来ていない野犬に魔力弾を放ってトドメを刺しておく。


 これでボスエリアに生きている存在はマサキと巨大野犬だけになった。


 既に巨大野犬は臨戦状態でいつでもマサキに飛び掛かって襲う準備を終えている状態だ。


 マサキの方も槍を構えてすぐにでもどんな方向にも動けるように準備をしている。


 先に動いたのは巨大野犬の方だった。


 先ほど口の中に倍加した魔力弾を叩き込まれたからか、巨大野犬はその口を閉じてマサキに向かって一気に距離を詰めて前足を振るってきた。


 マサキは振るわれた巨大野犬の前足を回避するが、巨大野犬の前足は地面に叩き付けられて地面にヒビが出来る。


 しかも更に巨大野犬は反対の前足でマサキに攻撃を仕掛けていく。


 右前足が地面を叩き、左前足が地面を叩いて、右前足が再び地面を叩き、また左前足が地面を叩いた。


 連続で前足を何度も何度も振るってはマサキに回避されて地面を叩くことになる巨大野犬。


 攻撃を躱し続けて体力を身体能力の倍加も合わさって減っていくマサキ。


 このままだとマサキの方が体力を先に使い果たしてしまうことになり、それは不味いからとマサキは巨大野犬に向けて手のひらを向けた。


 とにかくダメージを与えて少しでも数秒でもいいから怯ませる為にマサキは速度に倍加をかけた魔力弾を放った。


 「ラッキー!」


 運が良かった。


 マサキが放った速度2倍の魔力弾が巨大野犬の右目に直撃したのだ。


 目にダメージを受けて動きを完全に止めた巨大野犬に対して、マサキは全力で距離を詰めていく。


 「倍加!はぁあああ!!!!」


 槍の貫通力に倍加を使ってマサキは全力で巨大野犬の胸部に槍を突き刺した。


 ずぶずぶずぶと槍さ巨大野犬の胸部から体内に入っていく。


 「ギャォオオォオオンンッ!?!??!」


 槍は穂先から柄の半分くらいまで巨大野犬の体内に入り込んでいった。


 でも巨大野犬は槍が突き刺さっても死ぬような気配はない。


 大量の血液を「ゴホッ!ゲホッ!!」と吐き出しているが、マサキを睨み付ける眼光は鋭いまま。


 それでも致命傷クラスのダメージは与えているようで巨大野犬の動きが万全な頃に比べて格段に落ちている。


 このまま逃げ回っていても巨大野犬の方が先に力尽きて死んでしまうだろう。


 でもそれだと今回マサキがボス戦に挑戦した意味がない。


 このまま確実にマサキ自身の手で巨大野犬を仕留める為にマサキは前に出る。


 そんなマサキを狙うようにして最後の力を振り絞っているのか、巨大野犬は大口を開けてマサキを噛み砕こうとしてきた。


 「倍加だぁああ!!!!」


 2倍になっている身体能力のお陰で巨大野犬の動きに付いて行けるマサキは全力の力を込めて噛み砕こうとしている巨大野犬の顔面に威力を倍加した拳で反撃を食らわせる。


 バキンッと、拳が折れる音が聞こえた。


 でもマサキの一撃は巨大野犬の顔面を捉えて巨大野犬の頭部を弾いてしまう。


 巨大野犬の噛み砕き攻撃をカウンターのように反撃の拳で返り打ちにした代償に拳が砕けたのか折れたのかしたマサキは巨大野犬の様子を伺う。


 ドターン、と巨大野犬は地面に大きな音を立てて倒れた。


 元々の致命傷に近いダメージもあったのだろうが、マサキの一撃が巨大野犬にトドメを刺した様だ。


 

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