1話
西暦2026年4月頃にそれは起こった。
『私はこの世界の神です。これから人類に試練を与えます。』
その声が人類全体の脳裏に直接的に流れた。神の声は続けて……。
『それぞれの国ごとに国境で空間を切り分け、別れた国の国民は試練の場である塔を100階層まで登ってください。それが試練です。塔の内部にはモンスターやトラップがありますが、今の人類では塔を登ることは難しいでしょう。その為、人類全体に力を授けます。与えられた力を持って試練に挑んでください。一つの国に7つの塔が現れ、1人が100階層まで登る毎に登った1人と100000人の生存を認めましょう。100年、それが人類に与えられた時間です。時間までにそれぞれの国は試練を達成する様に。』
神が宣言を行なってすぐにそれぞれの国の国境を境に白い光の壁が生み出さられ、それぞれの国に住む国民以外の外国人はそれぞれの国に転移させられた。
そんな事が起こってから10年の月日が経った頃、日本では塔に登る者を探索者と呼び、そして10年で未だに一番強い者たちでも30階層までしか進めていなかった。
この物語はたった1人で試練に挑み、7つ全ての塔を登り切った男の物語である。
「いつ見てもやっぱりでっかいなぁ。試練の塔は!……。」
後ろに首が倒れるほどに大きな建造物である試練の塔を男は眺める。
男の名前は相葉マサキ。15歳。高校に進学せずに中学校を卒業してすぐに探索者としての資格を取った男だ。
神の試練を受ける事になって10年経つがマサキの歳で探索者になる者はそこまで珍しくはない。何故なら探索者を育成する学校があるからだ。でもマサキの様に中学校を卒業して探索者を仕事にする様な者は数少ない。
そんな全体として少数派のマサキは本格的に試練の塔に今日初めて登り始める。
「装備よし!回復薬も大丈夫!登るぞ、塔を!」
しっかりと自身の身に着けている装備や魔法薬の用意を確認してから塔の入り口を潜って中に入っていく。
塔の1階層に到着したマサキは1階層のフィールドである草原エリアを見回していく。
「平日だからあんまり人が居ないな。」
視界の見える範囲にまばらに人影があるのが見える。
平日の、更に朝の早い時間帯だからここまで探索者が居ないのだろうと思ったマサキは今は強くなることを目標に草原エリアの探索を行なっていく。
「あ、これって治癒草の花か?」
探索者になる為の講習の時に教わった採取素材である治癒草を発見した。治癒草は花も含めて採取する事で1本あたり二百円くらいで買取してくれたりする。
「そこまで荷物にならないし採取しておくかな。」
なるべく花の部分を傷付けない様にしながら採取ようのナイフで地面近くから刈り取って採取すると、マサキは背負っているリュックの中から採取した草花を仕舞う採取箱に収納した。
「これで大丈夫だな。」
これでモンスターと戦闘して激しく動いても治癒草が傷付くことはなくなっただろう。
採取箱をリュックに仕舞って立ち上がったマサキが探索に戻ろうとした時に視界にマサキに向かって移動してくるモンスターを発見する。
「ようやく1匹目だな。来い!」
マサキは片手に持っていた槍を両手で握って構え、マサキの方に向かって飛び跳ねながら来るスライムを警戒する。
講習の時にスライムとは一度戦ったが、今から行なう戦闘はマサキに取って本当に1人で戦う初めての戦闘である。
万が一の時に守ってくれる者が居ない状況での戦闘に若干の緊張をしながらもマサキはスライムが近付いて来るのを待った。
「あのスライムは体当たりだけだ。大丈夫、俺なら倒せる。やれる。」
自己暗示の様に自分に言い聞かせながらスライムの方から接近して来るのをマサキは待つ。
「来た!ここだ!!」
マサキは槍の攻撃範囲にまでスライムが接近して来たタイミングで攻撃を仕掛ける。
スライムが着地したタイミングで繰り出された槍の刺突はスライムに突き刺さった。
「外したッ!まずは距離を取る!」
スライムの弱点であるスライム核に槍の刃先が命中する事はなかったマサキはすぐにスライムとの距離を取る為に後方に向かって槍を引き抜きながら下がった。
すんなりと槍の穂先はスライムから引き抜け、マサキとスライムとの距離は離れたことでスライムの攻撃範囲からマサキは逃れる。
スライムは傷付けられた箇所から体液の様にスライムゼリーを流しながらマサキとの距離を詰める為に飛び跳ねて移動してくる。
「【倍加】!はぁああ!!!」
マサキはこの一撃で仕留める覚悟を決めると、難しい刺突によるスライム核を狙うのを止めて叩き潰すことにした一撃である振り下ろしをスライムに行なった。
その一撃はスライムを二つに分けると、スライムはドロッとその体からスライムゼリーを溢れさせて動かなくなる。
「ふぅー、最初からこうしておけばよかった。」
難しい刺突でスライム核を狙わずに振り下ろしを最初からしておけばよかったと思いながら今の自身の体の調子を確認する。
「少し疲れたくらいか?」
マサキの固有スキルである【倍加】。それは体力を消費して倍にする効果を持ったマサキのみが持った固有のスキルだ。
今回は槍を叩き付けた際の威力を【倍加】で2倍にして繰り出したからこそ、スライムは真っ二つになるほどのダメージを受けたのだろう。
「一応確認しよう。レベルかステータスが上がってるかな。まあレベルは上がってないけど。」
ステータス
レベル1
生命力0
体力0
魔力0
筋力0
耐久力0
精神力0
敏捷0
器用0
固有スキル 【倍加】
アクティブスキル 【】【】【】【】【】【】【】【】【】【】
パッシブスキル 【】【】【】【】【】
「上がってないか。」
レベルもステータスの能力値も上がってはいなかった。
ちなみに、レベルが上がれば能力値の上げられる最大限が上がるけど、レベルが上がるにはステータスの能力値が全てレベル×3は必要になる。能力値は試練の塔での行動や特殊なアイテムを使うことで上昇する。
マサキはステータスを閉じるとその頃には消えていた倒したスライムの跡を確認した。そこにはモンスターから確定ドロップする魔石とスライムのドロップアイテムであるスライムゼリーが落ちていた。
魔石は魔石用の回収箱にスライムゼリーも別の回収箱に仕舞うとリュックの中に入れ直して探索にマサキは戻った。




