Lügner Junge
リーデから連れ去られた人々は、おそらく元々使用人たちが寝泊まりに使用していたと思われる、超ベッドが置かれた大寝室に、丁寧に寝かされていた。
なんでも、魔術による眠りらしくそうやすやすと起きてくることはないので安心して運べとのこと。
あ、俺らが運ぶんだな……と思ったら、どこからともなく幾匹もの死霊が現れ、眠る人々を担ぎ出す。
ぶっ殺そうと飛びかかりかけたのだが、メルナに止められる。
なんと、死霊はメルナの指図で動いていると言う。
なるほど、創造主とも言える強意思を持った彼女には、必然的に従うらしい。
「この子たちは悪い子じゃない。皆、子供がいたの。私を、子代わりに優しくしてくれるの。だから、消さないで。いつか私が、優しく消すから」
確かに、この死霊からは戦意が感じられない。単純な、何か優しくて暖かいものが伝わってくる。メルナと同じだ。
そのメルナはと言うと、いつのまにか部屋の片隅にある、二つのベッドの前に立っていた。
そのベッドに眠る二人こそ、
「ママ……パパ……」
メルナの両親だった。
まったく外傷はなく、あの黒い影に悪意がなかったのだということを否応なく伝え、彼を消してしまったことへの少しの罪悪感が疼く。
メルナが、透ける腕を伸ばし、二人の胸の上にそっと手をかざした。
「ごめんね……ありがとう……うん。さよなら……」
触れられない温もりでも、彼女には伝わったのだろうか。
そっと別れを告げたメルナ。
それはつまり、ヨヅキの元へと向かえば彼女は消えてしまうのだと、そう告げていた。
「もういいよ。行こう」
二人に背を向け、そう笑いながらメルナが言った。
その目は、少しだけ潤んでいた。
城の廊下、サクラが術式を唱えている。
「座標陰式……算出、把握、特定……陽式算出……把握、特定……二次確認、設定……」
まったく何言ってるのかわからんが、転移術式を構築してるらしい。
しかも、正規の方法ではなく、神の干渉権で無理矢理編み出した非正規非合理非合法の非魔法術式だとか何だとか。非非非非うるせぇぞ。
とにかく、大人しくしてないとシバくと脅されたので、みんなで固まって静かに待機している。しかしそれも、そろそろ佳境らしい。
「三次指定……距離算出……段階二で再算出……把握、特定……設定」
と、言い終えるなり、俺たちの下を黄金の巨大な魔方陣が囲い、風が吹き付け、光をあげて回転し出した。
「さて……最後は皆で、唱えるのじゃ……!」
ますます強まる風と回転の中、サクラに最後の詠唱を迫られる。
そうだな……転移と言えば、アレしかない……!!
サクラが息を大きく吸い込んだ。
「いくぞ……せーの!!」
「「「転移!!」」」「ワープッ!!」「テレポート!!」「転移……」
バラバラじゃねーか。
黄金の光が拡散し、俺たちを「テレポート」させた。
ドアノック。
誰だ、いきなり。
もういちどドアノック。
「はい……」
嫌々ながら、ドアを開ければ。
「よう……ヨヅキ」
「こんにちは」
エルルさん、そして、キョウヤさんだった。
「ああ……どうし――――て」
瞬間、思考が終わりを告げた。
何故
何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故?
「なん……で……なんで」
なんで、彼女は
「なんで、メルナ……が」
僕が、殺したその少女が、エルルさんの後ろに立っていて。
なんで、笑ってるの?




