表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/169

其は、消えた少女

其は、消えた少女だった。

「メルナ……メルナって、あの……!?」

ヨヅキの心を通わせた幼馴染みであり、二年前に失踪したという少女が、彼女というのか。

「どうして……まさか、ずっとここに……」

エルルさんの涙が含まれた問いかけに、メルナは少し困ったように笑いながら答えた。

「そう。ずーっと、誰かが来るのを待ってたの。ずっと、ここでね」

「ぐっ……!」

瞬間、エルルさんが走りだし、メルナに抱きつこうとその体に手を伸ばした、が。


その手は、虚空を空振った。


「え……?」

空振りの反動でそのままバランスを崩し、その巨体がメルナ目掛けて倒れこみ……


メルナを透き通り、体が地面に衝突した。


沈黙、そして悲痛な現実が空間を走り抜ける。


「そんな、そんなぁ……そんなぁ……!!」

途端、感情の波がエルルさんを襲い、涙を流し出した。

拳を床に打ち付け、溢れる涙を止めようともしない。

俺たちは黙り、それを見ることしか出来ない。

サクラは唇を噛み締め、ウェルは俯く。

そしてリアシュルテはというと、顔には出さずともその肩が小刻みに震えている。

メルナはまた困った顔をして、しかし笑いながら、こう

答えた。

「ごめんね、エルルさん。私……死んじゃったの……」

その時、部屋の右側にある大窓から、夕焼けの光が射し込む。光は真っ直ぐに伸び、メルナを照らし出す。そして同時に、メルナの姿を薄く透過させる。

彼女はもうこの世にはいない、ただそれだけを無情に語る光だった。

エルルさんから更に多くの涙が流れ、それ以外の音がこの世から消えた気がした。

「さっきまでみんなが戦ってた死霊さんたちは、私が生み出したの。でも、やりたくてやったんじゃないの。私がもう一度だけ、ヨヅキに会いたいって強く思ったら、あの人たちが出てきたの。でも、みんなもうやられちゃったね……」

そして、明かされた重要問題。まったくの予想外。

「そんな……それは……だって……!」

エルルさんは言葉にすら出来ず、意味を成さぬ単語が出てくるばかり。

それはそうだ。死霊は自分の生み出したもの、と言われれば結果的に、数々のリーデの民を拐ったのがメルナの死霊だということを明らかにし、同時にメルナの死因が死霊とは関係がないことを意味する。

「まったく関係ないリーデの人たちを拐ったって言われてたけど、それは少しだけ違うの。その人たちを故意に拐いたかったんじゃなくて、連れ去ってでも、もう一度みんなに会いたかっただけなの……」

「じゃあ、その人たちは今何処に!?」

メルナは俺の問いかけに、ゆっくり優しくこう答えた。

「大丈夫。みんなに痛いことはしてないよ。それに、きっと今はみんな寝てる」

思わず胸を撫で下ろすエルルさん。

「お母さんとお父さんも、ただもう一度だけ会いたかっただけなの。それ、見ちゃったんだよね……ごめんね……」

「いや、いいんだ……いいんだよ……」

しかし、重要なところが聞けていない。

そう。そもそもの話だ。誰も切り出さない、切り出さなければいけない、これこそが"真実"。

リアシュルテの言う"真実"こそ、

「なぁ……ど、どうしてお前は……死んだんだ……?」

エルルさんが意を決し、震える声で微かに問いかけた、それなのではないか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ