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そして終局へ

少しばかりの優しい時間が経った頃、ようやく落ち着きを取り戻した面々に向かい、記憶の女神は語りかける。

「そろそろ、本当のラスボスに会いに行くとしようか……」

「「は?」」

エルルさんと俺がシンクロした。無限大だ。

それもそのはず、驚いたのは同じみたいだ。

あれラスボスじゃねぇのかよ!?

だとしたらとんでない尺を奪ってるぞ。

それに、また死にかけなければいけないと。うーん、逃げていいかなあ……

思考回路が顔にでも出ていたか、リアシュルテはやれやれと溜め息をつきながら言ってきた。

「何、ラスボスと言っても事情が違う。恐らく戦闘にはならないはずだ」

「「は?」」

再びシンクロする俺とエルルさん。運命なのかな、俺たち……

顔を見合わせてうっとりする俺たちを白い目で見ながら若干引きつつリアシュルテは続ける。

「まあそこは……実際会えば分かるだろうな」

ラスボスと戦闘しないの?何、茶会でも開くの?

ラスボスが講話会議持てば降伏するなら話は早いが。

そもそも戦闘しないんじゃそれ、ラスボスとは言わないだろ。

黒幕とかだろ、正しいとしたら。

「それと、エルル。ここから最も苦しみを味わうのはお前になる。それでも、真実を知りたいか?」

いきなり場の空気がガラリと変わる。

張り詰めた空間へと変わり、圧力に押し潰されそうな空気間だ。

その行く末は、彼の言葉に任される。

しかし、エルルさんは物怖じしない。何故ならエルルさんは、最初から決めているから。

「当たり前だ。ここで断るようじゃ、そりゃきっとリーデの人間じゃない」

その声に偽りはない。それを聞いて、安心したようにリアシュルテは応える。

「模範的な回答だ」

そしてその目線を俺たち全員に回し、更に声を張り上げ彼女は告げた。

「今から目指すのはこの城の最上階、王の玉座だ。そこで、リーデの死霊たちの真実が私達を待っている。武器は要らない。楽しい座談会と行こう」



エントランスの階段を登り上の階へと上がると、そこには一直線の回廊だった。

さっきまでの戦闘が嘘だと思えるほどに静まり返った空間は、一切の気配を感じさせない。

響くのは、俺たちが歩く音だけ。

長い長い回廊の末、突き当たりに至る。そこには1つの螺旋階段があった。

先導するリアシュルテがずかずかと進んで行き、ぐるぐると回って登りだす。

上を見上げても、果てがまったく見えない。一体どれだけ登ればいいのか。

そして、登ること十分。

「ようやくか……」

やっと螺旋階段は終わりを告げた。

階段から抜け、開けたその場所を見渡せばそこは、

「またか……」

今度は幾つも分岐した廊下だった。さしずめ個室エリアと言ったところか。

「迷路だな……離れるなよ」

リアシュルテはそう言って、迷路攻略に取り掛かる。

曲がって、また曲がって、そのまま進み、でまた曲がって。

「あ間違えた」

戻って、でまた曲がって、進み、曲がって……



最後の分岐を、迷うことなく左に曲がった瞬間。

そこに現れたのは、超絶横幅のある大階段だった。

「これ、ラスボスの部屋の前にあるやつだよな……」

「絶対そうだ」

「やっとじゃ……」

各々肩を落としながら、やれやれと登りだす。

二十段に一度、踊場というか平坦なところがあるので案外楽。三度の踊場を経て、それはついに現れた。

「これが、玉座の扉……」

あからさまに存在感の違う扉。王室のものと言われれば即座に納得できる作りをしている。

この中に、ラスボスが……

「開けるぞ……」

リアシュルテはそう言い、扉をズズズ……と押し開けていく。

扉の向こうは特に奇妙なものもなく、ただポツンと玉座が置かれているだけ。

しかし、特異はそこに居た。

玉座の後ろから、人が現れる。

「やっと来てくれたね……」

白いワンピースに身を包んだ、甘栗色の髪を伸ばした幼い少女がこちらを見返すのだ。

「君は……?」

そう問いかけた時、後ろからドサリと誰か崩れ落ちる音がした。

急いで振り向けば、エルルさんが膝をつき、絶望に顔を歪めている。

蒼白な顔と、激しく揺れ動く瞳。

「そんな……なんで……」

その二つを繰り返し繰り返し、額を汗で濡らしきっている。

そもそも、こんな場所に少女が一人でいるなんておかしい。しかし、何かが普通とは更に違う。

その答えは、エルルさんの言葉にあった。

「メルナ……なのか……!!?」


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