再起動
眩い光が消え、長い長い、一人の騎士の戦いが終ったエントランス。
その片隅で、仲間に囲まれた人物が一人横たわっている。
「主……」
「キョウヤ……」
騎士との死闘の末、かなりの深手を負い、未だ目を伏せたままの少年、風間キョウヤだ。
「落ち着くのじゃ、命に危険はない。それにある程度魔術で治療は行っておる。血も止まっておるし、じき目が覚めるじゃろうて、待っておれ」
サクラが、オロオロと慌てるウェルとエルルに諭す。
ここまで心配されてるのだから、お前も愛されてるなあキョウヤ……と、サクラは改めて実感した。
そのサクラにしても、内心はずっと震えている。
『早く目を覚ませ』『そうして笑って見せろ』と、望みを懸けて震えて、『もう目を覚まさないんじゃないか』『手遅れだったんじゃないか』『生きてはいても、心が死んでしまったのではないか』『我たちが遅かったせいで彼はこうなってしまったのだ』と、恐怖からも震えている。
行動にはしないものの、祈りを抱き願いながら、静かに目を閉じてその時を待つだけだ。
ウェルも、あからさまに震えていた。
『主は死なないもんね』『主は私たちを置いて死んだりしないものね』と、どんな状況かを解っていて偽り、そう言う。
その本心はぐちゃぐちゃだ。
『私がろくに戦えなかったから』『私がもっと早くに異変に気付けていれば』『私が飛ばされなければ』『私が領域を破っていたら』『私がもっと早く行動していれば』と、失敗に震えていた。
あと、なんかここの部屋寒いなーと思って震えている。
エルルもまた、『すまない』『申し訳ない』『ごめんな』と類義語を並べて震えている。
そして、歩み寄ってくるリアシュルテも震えている。
本人に明確な意識はない。震えているということを、本人は気付いていない。そのよくわからない何かが彼女を突き動かし、震えていた。
そして、その時はやって来る。
「キョウヤ……」
「主……お願い……」
「起きろよ……」
「……」
その時、ピクリと瞼が動いた。
「……!」
「え……」
ゆっくりと持ち上がっていく瞼、そして黒い瞳が見えてくる。
その目には、しっかりと光が射し込んでいた。
「終わったんだな……」
「ああ、私たちの勝ちだ……おかえり、キョウヤ」
しっかりと喋る、そしてしっかりと話すリアシュルテを見ている。
完全に、風間キョウヤは戻ってきた。
「よくぞ戻ってきた、キョウヤ」
「ちょっと寝てただけなんだけど……」
サクラが涙目で言い、キョウヤがやれやれと言わんばかりに返す。
と、次の瞬間、キョウヤに何かが飛び付いた。
「主いいい!!」
ウェルがキョウヤの胸めがけてダイビングしたらしい。
胸に顔を擦り寄せ、年相応な笑顔をしていた。
「ちょ、ウェルそれはぁっ……!」
「もう二度と離れないもんね!」
なんとかひっぺがそうとするキョウヤだが、ウェルはがっちりホールドしている。
挙げ句、やっぱりえいやこらと格闘が始まった。
なんにも言ってこなかったエルルはというと、一人でおいおい大号泣していた。
少しの間だけ、こんな空気が続くのだった。




