窮地に
喉へと大量に上がってくる血。抵抗することもままならず、喉を押さえても意味はなく、血液をびちゃびちゃと音を立てて吐き出す。
喉に走る、前までとは桁が違う焼け爛れたような激痛。
血が通る度に爛れ、痺れが走る。しかし、血が止められないため、享受するしか他がない。
「ああ、そうだ……右足と言ったが誤って胸を抉ってしまった。約束通り、次は右足を狙おう」
と言いはるヨルオル。その腕にはもう剣が構えられており、その剣先は、俺の右足を捉えていた。
「Bigriff……」
今狙われると確実に被弾してしまう。
戦闘継続どうこうでなく、普通に命の危機。
避けなければ……!
必死に体を歩ませる。がくん、がくんと変なリズムを刻む歩調で、当たるまいと動く。
歩く度に血が混み上がってくる。無視して動きたいが、そんなことは無理な話。
「歩け……歩けよ……!!動けよ!!」
たった四歩で、動きが止まる。思考が無視される。本能が拒否してくる。
「Veränderung……」
「頼むから……動いてくれ……!!!」
もう彼の剣には光が煌々としている。このまま歩いたところで、当たるのは確実。
まだ右足?たかが右足?
今右足を失えば、歩けないどころじゃ終わらない。
動け、動け、動け、動け、動け、動け、動け、動け、動け!!!
「転職!韋駄天!!」
問題なく、しかし辛うじて韋駄天に変わる。
これなら。これなら逃げられるはず……!
「神足ノ、行方……」
何も起こらない。
何故、何故動かない。
「神足ノ行方!」
反応がない。
「神足ノ行方!神足ノ行方!!神足ノ行方!!!」
加速しない。
代わりに、俺の視界にメッセージパネルが飛んできた。
《現在の状態では発動出来ません》
何故……何故今なんだ?
何故、こんなにも冷たいんだ?
やめろ、やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ!!!!!!!!!
「神足ノ行方っ!神足ノ行方ぇっ!神足ノ行方!神足ノ行方ッッ!神足ノ行方!!神足ノ行方ェ!!神足ノ行方!」
《現在のステータスでは使用出来ません》
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ!!!!!!!
「神足ノ行方えっっっつ!!神足ノ行方ぇぇえっ!!!神足ノ行方!!!神足ノ行方!!神足ノ行方ッッ!神足ノ……行方ェェエ!!」
《システム保証対象外》
《ガイドライン未記入》
《攻撃が足りません》
《防御が足りません》
《レベルが足りません》
《$€_足り"#|い》
《+~:;))!のππθ》
《Юдк┃┓ююΧΨヴ◯ゐ♀♂>≧℃∞」〔》
「Aufschlitzen」
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
剣。振られた。
血、流れた。
足、何かが貫いた。
血、流れた。
血だまりが出来た。
血、流れた。
「―――あああああああああああッッ!!!」
「そうだ。我はこれが見たかった。大人しく従っていれば、もっと早く逝かせてやったのだがな……Aufschlitzen」
視界が点滅して、見るものも見ることが出来ない中。
聞こえた呪いの言葉は強く強く響いて。
「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!」
左足が穿たれる。
痛い。けど、もうそこまで考えられない。
痛い。けど、どこから何が出てるのかわからないし、どうなってるかも見えない。
ただ、もうすぐ終わるらしいことだけが、ひしひしと、伝わってくる。




