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転職乱用・2

「何をした!?一体我に!何を!?」

「何って言われても……」

背中から黒い煙を上げ、鎧を無視して血を流す騎士が問いかける。

数十秒前の威厳と余裕はとうに消え去っている。そんなに焦るような攻撃だっただろうか。

あと、干渉権限って何?

「どうやった!?どうやって干渉権限を操作した!?何故だ!?何故そこまでの権限が!?教えろ!教えろ!!」

俺に今にも飛びかかってきそうな雰囲気で騎士が叫んでくる。だからさ、教えろって言われても。

「干渉権限って何だよ?」

そう言い放てば、ヨルオルの動きがピタリと止まる。

血走った目が更に大きく見開かれ、あんぐりと開きっぱなしの口は顎外れないか心配なくらい。

そしてようやく、ヨルオルが震える声で微かに問いかける。

「貴様……本気で、干渉権限を知らぬと……?」

「いや……なんか騎英のスキルにそんなのがあったような気がするけど……」

そこで、ヨルオルがガタリと崩れ落ちた。項垂れて言葉を失い、俺の言葉に我をも失う。

見れば拳はわなわなと震え、肩もガタガタ揺れている。これは、怒りを堪えている?

「貴様……」

静かに聞こえた俺を指すその声。

それは、トリガーだった。

「貴様……貴様貴様貴様貴様貴様貴様ァッッ!!!何故だ!?何故貴様のような者に、神は与するというのだ!!有り得ぬ!!認めぬ!!神は我をお選びになられたはずだ!!我の願いを果たすがために!!」

突然再び叫びだし、狂ったように神を語る騎士。唾をあちこちに撒き散らし、拳を白満ちに打ち付け、死でもみたかのように叫ぶ。傷から余計に血が出ている。本当に、あの冷静沈着とした姿は何処へ行ったのか。

少し怖くもある。

「いや、だからそう言われても―――」

「いや、待て。これは……そうか!そうなのですね!」

俺の言葉を遮り、急に落ち着きを取り戻したヨルオルが1人ぶつぶつと何かを呟く。

かと思えば突然、両手を真っ黒の空に掲げ、空を見上げ、また叫ぶ。

「おお、敬愛する神!これは、貴女樣がお与えになった我への試練なのですね!我が願いを叶えるに相応しい器か、試されておられると!なるほど、道理で干渉権限が強い訳だ!」

これは、不味い。確実に狂ってしまっている。

人は危機的状況に陥った時、思考能力が低下すると聞いたことがある。

自分を必死で擁護するらしい。裏切られたなどと信じないために。

その最終形態がこの堕ちた騎士という訳か。

「待て!俺は神の試練なんかじゃない!俺は俺の意思でここにいる!お前と会ったのも偶然で!」

そう叫ぶが、今のヨルオルには何も届かない。

ただ空を見上げて感嘆するだけ。

「ああ神よ、我の願いへの意思……お見せ致します。その少年は我の全霊を持ってして、なるべく綺麗に消し去る」

そう言いつつ立ち上がり、ふらふらとこちらを向くヨルオル。

顔がふと上がり、そこにあったのは。

「という訳だ少年。我の願いのために、死にたまえ」

残虐な笑みと威厳を取り戻した、騎士の顔だった。

そのまま、騎士は目を閉じる。

「鎧よ捧げよ」

そう唱えれば、ヨルオルが纏っていた鎧が突然消えた。

「籠手よ捧げよ」

剣を握っていた籠手が消え、剣を握るその手が顕になる。

「鞘よ捧げよ、鎧靴よ捧げよ」

鞘、そして鎧の靴が消え、殆ど装備のないヨルオルがそこに立っている。

そのヨルオルが、剣を俺に真っ直ぐ向けると。

「我、捧げし物に散りばめられた剣の光よ、此処に現界し、我に答えたまえ!!」

その瞬間、雷を纏ったヨルオルの剣が一層強く光輝き、形を変えていった。


後で聞いた話だが、この魔法は「儀式魔法」の類いであったらしく、「概念化」という力を宿したその剣だからこそ可能であったもので、分離された概念を「強制召還」で呼び出す、ヨルオルだからこそ可能だった魔法らしい。


剣「イデリオギル」

神の落とし物とされるその剣は、このゼァネールにて継承されてきた神器。

その力は、

「概念化」による完全攻撃。

つまり、絶対の剣。


それが、ヨルオルの腕に構えられているのだ。

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