強制召還
本体固有スキル。
職業経由のスキルではなく、本体が条件を満たすことによって取得することが出来るスキルの総称。
職業によって手に入れることも可能なスキルも有れば「転職」のように何にも属さないスキルもあり、なおその条件というのが難儀。
極端に言えば一度死にかければひとつ取得~とかそれくらいらしい。
リアシュルテやサクラ曰く、固有スキル持ってる人間は絶対に化け物だそうだ。
神がそう言うんだ、間違いない。
それってつまり、ヨルオル化け物ってことじゃん……
「強制召還」
詳細:システムの識別上で自身の所有物・存在と断定される物又は一定期間の接触があった物・存在を強制的にに右手に転移召還する。
王政の絶対権限を現世へと再降臨させた力。
理を理で征し、王は導かん。
集いしは、真の右腕となるであろう。
だからと言って、こんなやり方はないだろう!
ヨルオルが本気を出すと言った意味、まったくわかっていなかった。
本気を出すということは、強制召還を使うということ。
たかが召還ごとき……と、甘く見ていたのが全ての元凶。
少し考えればわかった筈だ!
召還一つごときが本気な訳ないと!召還を多用すると、どうして思い付かなかった!
風切りの音がすると同時に、俺は刀をもといウェルを横に薙ぎ、何もない空を切らせた。
無意味だと思われた、その直後。
その刀の腹に剣が飛んでくる。
見事に刀の腹に当てられ、剣が弾き飛ばされた。
またしても当たり。……辛うじて……
何度目かの剣の投擲を弾き、じりじりと後退させられている俺、現状。
その目で追うのは、弾いたその剣。
空を舞い俺の傍へと突き刺さって着地した剣。
しかし刹那、剣がパッと弾けて消えた。
消えたのだ。しかし、最早動じる馬鹿はいない。
何故なら、もうその剣がヨルオルの右手に、握られているのだから。
召還の乱用。これほどにたちの悪い間違った使い方は存在しないと思う。
何、お前の転職乱用のが酷いだろだって?
ま、まあ……ははっ……今回は、聞かなかったことにしといてやる。
「ふっ!」
そんなうちに、また投げられる剣。
こちらから剣を弾きにいく。
強く踏み込み、パリイ。
一瞬の接触の後、強く高く飛んでいく剣。
ホームランかスリーベースヒットかそこらの好球だ。
そのまま天高くへ……となるわけがなく、軌道半ばのところで剣が弾けた。強制召還だ。
どこにあろうが、どんな状態であろうが「強制」の前では関係ない。
ヨルオルのその腕に、剣が戻る。
そして再び投擲し、俺へと向かう。
俺は後退しつつ迎撃し、かっとばす。
大きく軌道を描き、しかし半ばで剣は強制召還を喰らう。
ヨルオルのその腕に、剣が戻る。
そして再び投擲し、俺へと向かう。
俺は後退しつつ迎撃し、かっとばす。
大きく軌道を描き、しかし半ばで剣は強制召還を喰らう。
ヨルオルの腕に、剣が戻る……
ひたすらに押されて下がって。
同じ受けの繰り返し。
そしてついに。
ガタッという音を立てて、背中に固く冷たい大きなものが触れる。
押せるような重さではない。
これは、壁。壁に遮られた。
ならばと横へ向かうが、しかし。
「クソッ!」
角のほん真横であった。
まずい。完全に追い詰められた。
後退出来ない、その状態のまま。
「喰らうがいいっ!」
剣を投げつけたヨルオル。
自由に動き回れず腕も可動域が限られる角。
しかし、弾くくらいなら造作もない!
パリイ。
しかし、その直後にはもうヨルオルの右手に剣が。
再び投げられる。
パリイ。
しかし舞い戻る。
「しぶといなぁ」
今度は足元を狙った定位置の投擲。
刀の切っ先を合わせ、感覚で到達点を合わせる。
直後、鳴り響く金属音。当たり。
しかしまだ終わらない。
今度は頭。
刀の腹で跳ね返す。
まだ。
腹部。
刀で叩き落とす。
まだだ。
左肩。
縦に旋回させて絡めとる。
まだまだまだまだ。
一撃。
迎撃。
一撃、そして迎撃。
三、四、五度目に向けて刀を構えた、直後。
「甘いぞ!」
完全に投げられると考えていた俺の思考は見事に騙されていたらしい。
投擲ではなく、自ら距離を詰めてきたヨルオル。
次の瞬間、刀……もといウェルは見事に絡めとられ、空を舞って弾かれた。
「ウェル!」
俺の得物が、これで完全になくなった。
「ふう、やっと終わりだな。長かった。中々に面白いやつだったが、ついぞ『転職』とやらは見せてくれなかったな……転ずる者よ」
剣を俺の喉元に突き付け語るヨルオル。
しかし、その裏に。目にした。
地を蹴り、背後から襲いかかろうとするエルルさんの姿を、その目に。
「エルルさん、待って!」
あえて声を出し、ヨルオルに後ろを向かせる。
「今仕掛けても死ぬ。死ぬのは俺だけでいい。だから、今すぐ逃げて!」
思ってもないことを叫んでおく。
「だが……!」
「否定してはいけない!」
そういいつつ、指先で俺は「あるもの」を指し示す。
ヨルオルはエルルさんを見据えたまま。
今こそ合図の時。
「エルルさんにはまだ、守るべきものがあるでしょう!」
いいつつ、その「あるもの」を拾って投げる造作。
もう一度、もう一度。
エルルさんの目は、俺をしっかり捉えている。いける。
「そ、そうだ……そうするしかない……」
「さあ、殺せヨルオル。俺だけを!」
ヨルオルの視線が俺に戻る。
その後ろで、エルルさんがウィンク。
忍び足であるものを取りに行く。
視線を悟らせず、ずらさせずにしなけらば。
「お前の勝ちだ。俺は転職を使う隙すら与えられずにやられた!それだけお前とは格が違うということだ!」
「ほう……敗けを認めるか、少年。潔いが、しかし同時に面白くはない。もっと君と戦えると思っていたがな」
会話なんて聞き流した。
エルルさんの準備は整った。
もう既に構えている。
さて、行動の時か。
「さあ、早く殺せよ。騎士」
「ふむ……では、最後に言い残すことでも?」
「そうだな――――」
視線を泳がせるように、それとなくエルルさんに視線を向けた。
合図。エルルさんが頷いた。受理された。
ならばまあ、警告ぐらいはしてやろう。
「――――背中の傷は武士の恥とか何とからしいが、お前は大丈夫か?」
「何?」
直後。ヒュッ、と風切りの音がしたと思えば。
ボフッと弾ける音がして。
エルルさんに投擲されたウェルが人に変化し、ヨルオルに変形させた腕で襲いかかった。
「遅ーーーいっ!」
その竜の爪とヨルオルの剣が交差した瞬間、俺は部屋の中央へと走り出す。目指すものは!
全速で目標に向かい、走り様に拾い上げる。
そう。俺が持てば軽く、エルルさんには投げられなかったものを。
怒りの剣を、その手に掴んだ。
そのまま弧を描き、拮抗するウェルとヨルオルの元へ。
「ありがとう!」
「お前こそ!」
通り様にハイタッチ。
いい仲間ってのは、こういうやつらだ。
全速で詰める。韋駄天こそ使わないが、十分に加速は出来る!
間合いを詰める。こちらに気付き鍔ぜり(?)を解こうとするヨルオル。しかし、遅い!!
「嘘も……作戦のうちなんだぜえええっ!!」
鍔ぜりに横いれする形で、ヨルオルに斬りかかった。




