天啓
刀はしっかりと剣を抑え込んだまま。
剣を引き抜くことすら出来ずにいるヨルオル。
どちらも得物はない。しかし!
「ウェル!」
俺は一言名前を告げる。
そしてノールックのまま背中側に腕を伸ばし、それを待つ。
次の瞬間、ガシッと金属の軋む音がその手から上がる。
もう一つの刀、化竜転鬼がその手に収まった音だった。
腕を回し、正面に刀を構える。
今こそ……好機!!
「ぜえええええっ!!」
張り上げた声と、上段に上げた刀。
詰める距離。ヨルオルがいくら素早くとも、避けきれるはずのない間合い。
そこから、渾身の上段斬りを放つ。
「終わりだあああああ!!」
諦めたのか、立ち上がりそのまま動こうとしないヨルオル。
もういっそ両断しろと言うかのように。
青く燐光を纏った俺の刀、もといウェルが神速で落ちていく。
本当に、本当にこんなにあっけなくていいのか。
本当に、本当にこれが本気の結末?
違うんじゃないかという疑念はある。
しかしそれでも、俺はこの一撃で終わらせる気。
騎士の最後は、こうして訪れ―――――
「……強制召還」
ない。
キィィィン。
檄なる鋼の音。
「何!?」
全力の刀から、腕へと伝わる雷のような衝突衝撃。
刹那、不意に刀は空を向く。
ヨルオルのその右腕は前へと突き出され。
その右手には。
落としたはずの剣が腹を見せ。
やはり正面から、俺の一刀を受けていた。
そのまま体が連れていかれそうになるが、地を踏み締めて押しとどまる。
何が……何が!?
何が起こった!?
立ち尽くしていたはずのヨルオルが、刀に踏まれている筈のヨルオルの剣が。
俺の刀を弾いた!?
迎撃してきた……のか?
どうやった、どうやったんだ!?
確かに、刀はそこにあったはず!
この一瞬で、何をした!?
よろめき、耐えられず少し後戻り。
さらなる迎撃に備え、すぐに構えは戻す、が。
ヨルオルは顔を伏せ、その場から動こうとしない。
ただ剣を横にした体勢、そのまま。
何か溜めているのか、それとも技後硬直か。
一つの挙動すら怪しい。
刀で牽制しようとするが、そもそもこっちを見てこないので疏通出来ない。
ならば、問いかけるのみ。
「今のは……!?応えろ!!」
叫ぶが、届いているのかどうか。
「ふう……そうだ……私の固有スキルの紹介がまだであったのだ」
届いた。声は通じる。
そう言って戦闘状態を緩めつつ、刀を胸の前に立てて見せるヨルオル。
刀の腹をこちらに立たせ、向ける。
そのまま邪悪なにやつきを浮かべながら、その実態を口にした。
「強制召還……我の剣戟を剣戟たらしめんとする、私のちょっとしたカードである」
そういいつつ、おもむろにその剣を放った。
剣が地面に当たる、その直前、剣が光を放ち輝いて。
次の瞬間、剣はヨルオルの右手に帰っていた。
「原理は単純、名の通り自らの所有物を強制的に手元へ転移させる。それだけの物である」
先の手順をもう一度。
繰り返すヨルオルの前、俺は、彼には到底辿り着けないだろうと思う。剣の美しさも、戦の正しさも。
それでここに来て切り札追加とか、戦況酷いなおい。
でも、その首飛ばすのは俺。
たかがこれくらいの戦い。無策に突っ込まなければ勝てる……!
所詮、騎士は騎士なのだ。
刃を立て、刃の先を俺に見せ付けてくる騎士。
「ふむ。そろそろ頃合いであるな」
そう微笑んだヨルオル。
「ここからは本気で行くとしよう……!」
まだ本気じゃねぇのかよ!?




