騎士討伐
纏った鎧の重厚な見た目とは裏腹に、素早く無駄なく駆けるヨルオル。
動きを察知したその間に、もう間合いに入られていた。
右足を踏み込み、緩く肩に担がれたヨルオルの剣。
「フッ!」
先程の突き技よりも速い神速の一撃が、弧を描き俺に襲いかかる。
ずるいだろ!速すぎだろ!チートだろ!
「いっ……!」
すんでのところで対応、刀を斬り上げて剣先にぶつけ、キィンと澄んだ音と共に剣を弾いた。
間一髪だ。あと一瞬でも遅れていればきっと命はなかった。
高く掲げられた刀を引き戻そうと手繰る、その瞬間。
ほんの少しの風圧が右肩を撫でた。
しかし、今この場に風などは入ってこないはず。つまり!
咄嗟に右肩を刀で護る。直後、刀身の真ん中に剣がぶつかった。
ヨルオルが追撃に出た瞬間だった。
衝撃に少したじろぎ、峰が肩に擦れ、押されて痛む。
危ない危ない。風に気付かなきゃ今ごろ肩から上がおさらばだったろう。
……なんかこの下りさっきもやっ――――
「セッ!」
「ぎっ!?」
ヨルオルがすかさず突きを食らわし、俺は辛うじていなす。
そのままヨルオルが斬り、俺が受け。
まずい。普通に死ぬかも知れん。
無駄なこと考えると死ぬ。ってこの思考すら無駄なことだろ!って!
「セイッ……ラッ!!」
また不意をついた斬撃、今度は2連撃。
一段目は下がって回避し二段目の斬り落としは刀の腹で軌道を反らして斜め明後日にずらした。
少しばかり地面に突き刺さるヨルオルの剣。
好機。
全身全霊をかけてかけて、一度の大きな跳躍。
狙うは……首もと!
「ゼエエエエエエッ!!」
首目掛けて渾身の突きを一発、ぶちこむ。
吸われるかのように狙い目に向かう突き。
刀の出せずすぐに動けない今なら、確実にやれる。
届け、そのまま真っ直ぐに!
「ふん……甘い」
声の刹那。俺の刀は見事にヨルオルの首の真横をかすめた。
刀の中程を抑え込む、そのヨルオルの剣によって。
無理矢理に力を振り絞って防御に至れたであろうヨルオル。
しかし、戦闘開始時から何一つ、その表情が変わらない。
目が死んだ魚のよう。口元はずっと変ににやついてて、眉ひとつ動かさず。
声すらトーンも動かず荒げもしない。
ただ、その腕その剣だけは、本気でぶつかってくる。
その剣が、彼の本心を表していると言えるだろう。
そして今、その剣は。
笑っていた。
変なことを言っている。剣も刀を笑わないし叫ばない。
しかし、事実。
彼の剣は、まるで言葉のよう。
ぶつかることで、思いを伝えてくる。
「面白い……やはり見込んだ通りだ。信じられん。キョウヤよ、本当にお前は騎士ではないと?」
「ああ。ただのモブだよ」
眉をひそめるヨルオル。
しかしそれも元通りになり。
「それでは世の中、もう騎士などは必要ないらしい……ならばこそ、望むところだ」
「望むところじゃないぞ」




