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Ritter

なるほど、ただでは通さないと。

「ウェル、エルルさん。下がってて」

「い、いや……皆で戦った方がいいに決まって―――」

俺の問に抗うエルルさん。しかし、別の声。

「待ってた方がいいよ」

ウェルだ。優しい声色を拡げて話す。

「それが……"おとこのたたかい"ってやつなんでしょ?」

いや、多分違うと思うよそれ。

きっとエルルさんも呆れて……

そう思ってエルルさんを見やれば。

ウッ、とエルルさんが噎せていた。と思えば、次の瞬間は何故か涙ぐんでいた。

「そうか……お前もそんな年になったんだなぁ……」

え、何今胸にじーんと来たの?

何で?え、何でよ?

あとアンタ、俺のその"そんな年"以前のこと知らんだろ。

エルルさんが涙を流しだし、ついにはおいおいと泣き出した。

だからなんでだよ!?

「キョウヤ、キョウヤ……!戦いに勝敗は関係ないぞ!戦いとは、どれだけ思いを伝えられたか!刀と刀、剣と剣!剣は心の代弁者なのだ!行け、行け!」

うーん……一言言いたい。

一体どこの誰なんだお前……

なんなの、泣き出すと酔っちゃうの?

それともあれなの、中学二年生の鏡なの?

「主……」

変なテンションのエルルさんを脇に、ウェルがそっと耳打ちしてくる。

「危なかったら私の名前を。そうじゃくても、必要なときに呼んで。例えば、剣が足りないときとか……ね?」

最後にちろっとウインクをかまし俺のにやけ面をかっさらっていった。

かわいい……

「ごほん」

と、咳払いの音。

「あー、話は終わったかー?」

「終わったよ」

騎士はようやく会話に入れて嬉しいのだろうか。

「ならば、勝負といこうか。無論、結末はとうに決まっておろうがな?」

いいじゃないか。

「上等だ……!」

刀を真っ直ぐに騎士へと向ける。

すれば、満足げに鼻をならし騎士も剣を手に取る。

「では、少しばかりその手並み、拝見といこうか……!」

かと思えば、騎士はもう地を蹴っていた。

速い!死霊やアンデットなどとは訳が違う!

剣は突きの構え。ならば受けるのは良くない。

だったら!

「フウァッ!!」

繰り出される単純な突き。しかし、恐ろしく速い!

それなら!

「ゼェッ!!」

受け流せばいいじゃないか!

突きの斜め右下からすっと刀の右腹をあてる。

軌道が逸れ、剣は明後日の方向へと向かう。好機だ。

そのまま刀を剣に沿わせて一気に間合いを詰め、返しながらの一斬。

「フッ!」

「何!?」

繰り出される上段斬り。しかし、間一髪で避けられた。

そのまま後ろへ大きく跳ばれ、間合いを切られた。

「ほう、中々面白い……。たかが小兵かと思えば、貴様手練れであったか。我のあの突きをいなす者などいつぶりであろう。気に入った、我が名乗りを挙げようではないか」

優雅にそう語りかける騎士。どうやら、俺は今物凄い栄光的なものを貰ったらしい。

お偉いさんの名前を聞く、という。

……意味ねー!

まあでも、騎士の名前は気になる。早く教えてほしい。

と、その時は来た。

胸を張りながら、剣を再び突き立てこちらを見据える。

「我、ゼアネラ駐ニズリス騎士団初代団長―――」

団長という言葉に、一瞬俺の肩が震えた。と思った。

「騎士、ヨルオルだ」

騎士……改めヨルオルがそう声を張り上げた。

ヨルオル。相応しい名前だと思う。

ならばこちらも名乗るのが礼儀だ。

「俺の名は風間キョウヤ。剣士で魔術師、魔術師であり陰陽師。"転職者"のキョウヤだ!」

転職者。咄嗟に頭に浮かんだ言葉。しかし、自分で言うのもなんだけれどぴったりだと思う。

「転職者……?聞いたことのない者だ。しかし、キョウヤ。貴様には面白いものを見せて貰えそうだ……!」

高らかににやつくヨルオル。

次の瞬間、ヨルオルは再び地を蹴っていた。

火蓋は今、切って落とされた。


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