入城と開会
先は、まだ建物の中ではなかった。
そもそもあの門の前に割と長い広い庭っぽいところを通ったし、城壁も越えたし、流石にもう建物だろうと思ったが……まだか……
中は空の見えるアーチ。これまた長く奥まで続いており、商店街とかで見る空の見えるアーチ通路、あれの吹き抜けたバージョンみたいな、灰色のが連なる。
左右の草地はきっときれいな芝生だったに違いない。しかし、今やそんな面影も見当たらず、無駄に伸びた草と何故か生えている巨木の連なりが、その空間を支配している。
そういえば、死霊が急に全く現れなくなった。
これも何か大規模な行動への布石だろうか。
しかし今は考えすぎだ。今は真実を知らなきゃいけない。
アーチをくぐりながら、巨木のせいで暗い両脇としまを描く日光を真上からとと同時に受ける。
「これ……ほんとに紛争ばっかしてた街だよな……?」
綺麗過ぎて、最早怖くなってきたので聞いてみる。
ほんと、紛争なんかや魔物討伐なんかとは程遠いくらい、幻想的でなおかつ美しい。
「してなきゃそもそも廃墟にすらなってないでしょ」
「うっ……その通り、だ……」
ごもっともです、ウェルさん……
「じゃあ……ここでも人、死んでるのかなぁ……」
何気ない質問。しかし、空気を重くしてしまった。
更にウェルがその空気をより重たくするような返しを。
「きっとあの庭でも、何人も殺されてるんだろうね……それに、この道でも……」
沈黙が響く。
ウェルの言葉に、進むこの道をまっすぐ見れなくなった。
勝手にこの道で人が死ぬのを想像して、吐き気がしてきた。
この木々と草木の栄養源が人の死骸だと思うと、更に喉から物が上がってくる。
無理矢理それを引っ込めながら、ただ黙って進み続ける。
「ごめんなさい……」
ウェルの謝罪が後ろから聞こえる。
「ごめん、こっちが悪い」
話を振った俺が悪い。謝るのは俺の方だ。
そこまでは声に出さなかった。
無言になって、喋ることなく歩く。それだけ。
歩く、移り変わらない木々の景色が少しだけ続く。
そして、端へとたどりつく。
アーチの終着と同時に壁へと突き当たる。その壁に開けられた通路。その穴。
なんというか、何処ぞの茶色い炭酸飲料のビンみたいな形の通路が、次の空間への入り口になっている。
光が照っていて、次の場所がどんななのかは視認出来ない。
だからこそ、躊躇いもなく入り口を潜った。
「おおお……」
足を進めた数秒後、その美しさにやっぱり足を止める。
虹色に散りばめられたステンドグラスの天井で拡げられた光の照りつける部屋。
というか部屋にしては大きすぎるけど。
大回廊、という感じか。
アーチと同じように、通路となっている。用は、建物になっているかいないかの違い。それだけだ。
まだ続くのか……
やっぱりいくら進めど死霊は出てこない。
それが怖いが、今は進むしかない。




