再会 その2
「だから、どういう事なんですか、先輩」
「だから、それが、どうしだというんだ、新城篤志」
そう言って、ようやく彼は振り向いた。その眼差しはとても優しく、これがあの岡本幹彦では無いという錯覚すら産んでしまう。|囁く者(ウィスパ-)、岡本 幹彦
「波紋、…踏み出すその一歩さえ、人の生死と無関係ではいられない。人は ただ、生きているというだけで何かを殺し続けている生き物だ。それを能動的にやるか、やらないかでこんなにも違ってしまう、いや、違えられてしまう」静寂の中、響くその声は神託のようにも聞こえるほどに荘厳ではあった。
「僕は貴男の哲学を聞きに来たわけではない」飲み込まれないように、そう言った。
「そうか、ではそろそろ君の知りたい事に答えようか、起点はここで、終点がたまたまそこだっただけの話だ。…腕を組むというのは、内心のガードが堅くなっている印だってな、新城篤史」
知らないうちに自分はそうしていたようだ。
「人の心の中には多かれ少なかれ悪い蟲がいてな、ふとしたきっかけで、それが顔を出す。ま、普段はやつらはたいしたしたことなどできはしない。理性や常識や本能とかいったもので押さえられているしな。しかし、それにちょいと方向性と意志を持たせてやるんだ。簡単に言えば“誘蛾灯”のようなものだな。しきりに首筋をさすっているな。息苦しい話かい? 新城篤史」
「…、先輩ッ!?」信じられない体験、自分の首を絞める自分の右手
「そう、その起点は、ここだ、ただの言葉さえ使いようによっては、凶器足り得る。ようこそ蟲達のざわめくこの世界へ、新城篤史」




