再会 その1
「たとえばだ、それは死ぬっていう事実を知ったその時に似ている。結局無くなるというのになぜ自分たちは生まれて来てしまったのかという理不尽、その中で惰性のように生きている。そんな感じに似ている」
それは、奇妙な信頼関係だった。
男は口笛を吹いていた。なんの曲目かは知らないが、やたらと軽快で、人生は喜びに満ちあふれているかのような雰囲気だった。この重厚な、圧倒されそうな雰囲気の中、よくそんなものをくちずさむことができるものだ。
男は特殊強化プラスチックという箱の中で身じろぎ一つせずに座っていた。人を小馬鹿にしたような皮肉げな微笑を浮かべ、尊大に見えるように足を組み、じっとこちらを伺っている。
ここにいるのは別人だ。自分が尊敬、というよりは心酔していた岡本幹彦はこれではない。彼はこんな下卑た微笑みが似合うような男ではなかったし、こんな人を見下したような視線など持ち合わせてはいなかった。
あの人は常に正義とは何かを悩み続けていた。そんな人だったハズだ。落ち着け新城篤史と自分に言い聞かせながら、彼は内心のいらだちを隠せないでいた。
「別段、僕は微塵も変わっていない」檻の中のその男は、彼を見ようともせずにそう言った。
「世界の在り様は、観察者に依る」その声は、聖職者のように心のすべてを見透かすかのようだった。
「どう、いう事ですか、先輩」
「『世界は優しいと勘違いできるほどには残酷で、その残酷さを気づかせない程度には優しい』そう言って彼女、高島 法子は消えた」




