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星騎士  作者: ぱんだまる
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第十九章:ブリトニアの将

水と芸術の都、マルアイア。

芸術文化の発信地として栄え、トルアノ連邦のホルンと並ぶ

大陸最大の貿易都市でもある。


星騎士ミリファリア様率いる聖騎士団がここの守備を担う。

聖騎士団の規模としては3個師団程度で公騎士は一人、他は英騎士と小騎士が数名。


このマルアイア攻略には参加したのはトルアノ連邦とブリトニア皇国の2国。

ボルトーナ王国は、政情不安を理由に物資支援のみとなった。


トルアノ連邦からは、公騎士のメイ・ロミーネ大将と英騎士のフィルバレス中将が

計2個師団を率いて参戦。公騎士のユウキ先輩も連隊長として参戦する。

ロミーネ大将の元にはサルターラ参謀が副官として同行する。


ブリトニア皇国からも2個師団が参戦。

星騎士クライアート・ブリトニア大将率いる斬撃師団と、

公騎士であるユメ・シノザキ少将の飛兵師団。


星騎士や公騎士の数、兵士の数だけをみれば戦力的にはやや有利である。

もちろん、ファルナ先輩の蒼騎士団や神都を守護する中央騎士団から

援軍が差し向けられれば、途端に不利になる危うい状況ではある。

だが・・・。


「ミリファリアは、神国の星騎士の中では一番弱い。あれでもな。

 ミリファリア程度には、俺抜きで勝てるぐらいじゃなきゃ、

 この先、ラスティアやレーナレーナといった、戦いに長けた星騎士と渡り合えないぜ?

 トルアノ連邦だけでは、たった一人の星騎すら相手にできないというなら

 ブリトニア皇国としても、神国と本格的に戦うことはできないな。」


マルアイア攻略のための軍議で、ブリトニア皇国側の星騎士である

クライアート・ブリトニアは、マルアイア攻略については

トルアノ連邦の部隊だけで行うように、と提言してきた。


「ばかな!何のための同盟なのだ!

 おまえ達はここまできて、何もせずに待っているだけだと言うのか!?」


礼によって我らがサルターラ参謀はご立腹のご様子。

まぁ参謀じゃなくても、この段階でそういうこと言われたら、ちょっと困るな。


「神国には星騎士が5人はいるはずだ。

 マルアイアが攻められれば、星騎士の誰かが援軍にくる可能性が高い。

 その時は、俺がそいつの相手をしてやるよ。」


この男のいうこともわからないではない。

例えば、南方戦線を任されていた蒼騎士団率いるファルナ先輩は

撤退したとはいえ、有事の際にはマルアイアに駆けつけてくるだろう。

当然、そうなればトルアノ連邦側でも星騎士一人を

何とか相手にしなければならなくなる。


それなら、比較的、戦いには向いてないミリファリア様を相手にしろ、というのだ。

だが、公騎士二人で星騎士一人を相手にする、というのはかなりきついと思う。


「ふざけるな!

 どうせ、我が国だけ戦わせて、漁夫の利をえるつもりであろう!

 そうはいかぬぞ!皇国からも兵をだすのが筋であろう!」


俺の意見としては、とっとと引き返しましょうよって思っているが

火に油をそそぐこともできず、成り行きを見守っていた。


「わかったわかった、うるさいオヤジだな、おい。

 よし、うちからはユメをだそう。

 それなら文句はないだろ?」


そういって、隣でむっすりした表情で控えていた、

20にもならぬであろう少女に話しかける。

一応、あの若さでも少将なのだそうだ。


「クライアート様、ご自分が戦いたくないからといって、

 私に押しつけるのはやめて頂けますか?」


言葉は冷静だが、かなり怒り心頭といった雰囲気がにじみ出てる。


「こんな子供一人もらった所で、何がかわるというのだ!

 貴様、我々を侮辱するにも程がある!」


その言葉を聞くやいなや、ユメと言われた少女の顔が

子供と言われたことに腹をたてたのか、もともとむっすりしていたのが、

さらに手をつけられないぐらいの不機嫌さになる。


「・・・トルアノ連邦の参謀閣下は分別もつかぬお人なのでしょうか。

 私はブリトニア皇国の将軍位をライカ皇女より賜っています。

 その私を、愚弄するということは、ブリトニア皇国の将軍位を、

 ひいては皇国そのものを、愚弄するということになります。

 それを承知で、そのような大言をはかれているのでしょうね?」


参謀が、まぁ・・・火に油ってやつだ。

ユメ・シノザキ少将は、冷徹なオーラをひしひしとほとばしらせている。


「ひ、ひぃっ・・・ち、ちがっ・・・」


・・・参謀、びびりすぎだろう。

参謀殿はあたふたしながら、ロミーネ大将の後ろに逃げ込んだ。

まったく、どこの子供だよ、あんたは・・・。


「シノザキ少将、無礼をお許しください。

 我々連邦のものは、まだまだ皇国の事情に疎く、

 皇国の武を知らぬものも多いのです。

 サルターラには、私の方から言い聞かせますので、

 この場はお許し頂けますようお願いいたします。」


仕方なし、といった感じでロミーネ大将が謝罪する。

実際、ブリトニア皇国は他国の将軍並みの力量があって、

はじめて士官になれると言われるぐらい、個々の力量が高い。


騎士位の保持者も神国ほどではないが、かなりのものだし

ユメ・シノザキ少将は公騎士でもある。

ブリトニア皇国の少将で、公騎士というだけでも、

かなりの力量をもつであろうことは想像に難くない。


それを、子供というだけで軽んじるのは

参謀殿があまりにも無知という他、言いようがない。

本当に、なんでこんなのが参謀なのか・・・。


「はっはっは、ユメ、びびらせすぎだろう!

 いやいや、ロミーネ大将、こちらのユメが大人げなくて迷惑をかけた。

 こちらからもあやまろう、すまない。

 こいつも、ちょっと短気だけど、根はいいやつなんだよ。」


クライアートが間にはいって、この場は収まる。

ユメ・シノザキ少将からは冷徹なオーラが消えることはなかったが。


その後、参謀殿無礼の手前、ブリトニア側の意見を無視することはできず

こちらは星騎士を温存した形で、マルアイア攻略を行うことになった。


まったく、参謀殿も余計なことしてくれるよ・・・。

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