第九章:越境
正午、俺とユウキ先輩は山の中から
国境付近の詰め所が見える場所に陣取り、その時をまっていた。
ちょうと日が真上に昇ろうかというその時、
警備兵が慌ただしく騒ぎ出した。
「反逆者のユウキ・ミツカセが見つかったらしい!
ここで捕まえればお手柄だぞ!」
そういって警備兵の一人が声を上げている。
すぐに周りの警備員が騒ぎ出す。
反逆者を捕まえれば、かなりの報償がでるはずだ。
警備員の眼の色が変わるのが、ここからでもわかる。
「おい、俺達もいくぞ!
西砦の奴らに手柄を横取りされてたまるか!」
俺達がいま見てるのはトルアノ連邦とを結ぶ関所の東側になる。
もう少し離れた所には西の関所があり、そこにも砦があって警備兵が待機している。
あぁ・・・・よく見れば、あの最初に声をかけた奴・・・。
兵士があらかたいなくなっても、最初に
反逆者の知らせを告げに来た者は残っていた。
まったく、危険なまねをしやがって・・・。
「ユウキ先輩、いきましょうか。
ちょうど、警備兵もいなくなったようですし。」
「ふふっ・・・そうだな。
マルミちゃんも、なかなかやるものだね。」
「あいつの前ではそういうこと、言わない方がいいですよ。
すぐ調子にのるから・・・。」
「ふふっ、なるほど、気をつけよう。」
そういって、俺とユウキ先輩は足早に
最後に残った警備兵に近づく。
「おい、マルミ。」
「は、はにゃっ!
な、な、な、なんだ・・・カナートか・・・。
び、びっくりさせるなよぅ・・・。」
マルミは俺が声をかけただけで、飛び上がるようにびっくりしていた。
まぁ、警備兵だまして連れ出すなんて、平気な顔してやられても困るけど、
ずいぶんと無理してがんばってくれたんだな・・・。
「さぁ話は後だ。
いまのうちに関所を抜けよう。」
ユウキ先輩に促されて俺とマルミは関所を一気にかけぬける。
無人の関所を越えて、トルアノ連邦に入り、しばらく距離をかせいでから
俺達は少し休憩をとることにした。
「まさかとは思ったけど、本当におまえがいるとはな、マルミ。」
俺の問い掛けにマルミは少しばつが悪そうに笑う。
「にゃははは・・・。
なんていうか、成り行きでねぇ・・・。」
「セルフィアはどうなったんだ?
無事なのか?」
てっきり、二人で来ていると思っていたのだが
関所にいたのはマルミ一人だった。
「うん、セルフィはファルナ先輩ともう少し話をしたいんだって。
でも、カナート達が捕まっちゃうとまずいからさ。
私だけでも行くよっていって、でてきたんだ。」
マルミは、士官学校に通ってはいるが、騎士ではなく
楽隊の方に志望している。そのため、軍事的な訓練はほとんど受けていない。
そんな中で、ああやって一人で行動するのは、すごく勇気のいることだと思うぜ。
「まったく、一人でおまえは無茶しすぎだぞ・・。」
「にゃはは・・・。
でも、助かったっしょ?」
マルミは満面の笑みを浮かべてそう答えた。
「ちぇっ・・・まぁそれなりにな。」
「にゃはは、結構結構。
カナート君、お礼はトルアノ名物、ハシゴ饅頭で手を打とうじゃないか。」
マルミの頭の中は、もう首都トルアノについて、銘菓を食べることに切り替わっていた。
まったく、切り替えの早い奴・・・。
「おまえまで、こんな目にあうことなかったのにさ、
まったく、馬鹿な奴。」
「にゃはははは・・・。
ま、まぁ長い旅行だと思えば、これもまたよし、ってね。」
「ははっ、長い旅か・・・。
マルミちゃんは良いことを言うね。」
ユウキ先輩はマルミのことが気に入ったようだ。
頭をなでなでして、かわいがってあげている。
「ちょ、ちょっとユウキ先輩・・・。
あまりマルミを甘やかせないでくださいよ。」
「にゃはは、妬いてるのかな、カナート君。
ほれほれ、うらやましかろう?」
マルミは頭をなでられて上機嫌のようだ。
まったく、甘やかせるとすぐこれだ・・・・。
「ほら、先を急ぐぞ。
今日中にアリトナ村には着いておきたいからな。」
アリトナ村は国境のすぐ近くにあるトルアノ連邦の小さな村だ。
とりあえずはそこで、ユウキ先輩の手当をして傷が治るのを待ちたい。
目の前に広がる平野の先には、ゆったりと人家が放つ明かりが見えていた。




