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「ギルド長の俺、1ヶ月のつもりで旅に出たら5年経っていて元仲間全員ヤンデレになっていた」  作者: 赤い赤鼻


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第1話 俺達のギルド

王都でも指折りの冒険者ギルド。


『黎明の翼』。


そう呼ばれるようになった今でも、俺は時々思い出す。


始まりは本当に小さなものだった。


剣士のレオナ。


聖女のセレナ。


魔法使いのリリア。


獣人のミア。


そして俺、アルト。


たった五人。


金もなければ名声もない。


宿代すら払えず、五人で一部屋に雑魚寝していた時期もあった。


それでも楽しかった。


みんなで依頼を受けて。


みんなで飯を食って。


みんなで笑って。


いつか王都一のギルドになろう。


そんな夢を語っていた。


そして現在。


俺達が作ったギルド『黎明の翼』は、本当に王都でも指折りのギルドになっていた。


「……終わったぁ」


俺は机に突っ伏した。


目の前には大量の書類。


依頼報告。


王都との契約。


予算管理。


新人育成。


気が付けば夕方だった。


「俺、冒険者だよな……?」


思わず呟く。


最近は剣よりペンを握っている時間の方が長い気がする。


コンコン。


ノックの音が響く。


「入ってくれー」


扉が開き、副ギルドマスターのエマが入ってきた。


「まだ仕事してたんですか」


「今終わった」


「嘘ですね」


「なんで分かった」


「顔です」


ひどい。


だが否定できない。


エマは机の上を見るとため息を吐いた。


「今日は帰ってください」


「まだ仕事が」


「帰ってください」


「はい」


最近勝てない。


ギルドマスターなのに。


俺が立ち上がった時だった。


窓の外が目に入る。


王都の街並み。


旅人達。


冒険者達。


楽しそうに歩いている。


それを見ているうちに、ふと思った。


「なあ、エマ」


「なんですか?」


「俺、最後に休んだのいつだっけ」


エマが少し考える。


「三年くらい前では?」


「そんな前?」


「そんな前です」


思わず苦笑する。


三年。


まともな休みが三年。


おかしくないか?


「俺さ」


「はい」


「最近冒険とかしてなくない?」


エマが嫌そうな顔をした。


「嫌な予感がします」


「旅に出たい」


「却下です」


即答だった。


「一ヶ月だけ」


「却下です」


「頼む」


「却下です」


「なんでだよ」


「皆さんが許しません」


俺は頭を掻いた。


まあ、それはそうかもしれない。



その日の夜。


創設メンバーだけが集まる会議室。


五人でギルドを立ち上げた頃から使っている部屋だ。


「相談?」


レオナが腕を組む。


相変わらず綺麗だ。


王都最強クラスの剣士として有名になった今でも、昔と変わらない。


「何かありましたか?」


セレナが心配そうに聞いてくる。


金色の髪を揺らしながら優しく微笑む姿は、もはや聖女そのものだ。


実際聖女なんだけど。


「緊急案件?」


リリアも首を傾げる。


王国最高峰の魔法使い。


だが俺達の前では昔と変わらない。


「ご主人様ー!」


そしてミア。


飛びついてきた。


「うおっ!?」


「えへへー」


「だからご主人様じゃないって」


「やだ」


昔助けた時からずっとこうだ。


懐かれている。


たぶん。


「離れろ」


レオナが言う。


「なんでー?」


「近い」


「レオナだって近いじゃん」


「私はいい」


「ずるい!」


また始まった。


仲良いなぁ。


「仲良くしろよ」


四人が一斉にこっちを見た。


なぜだ。


俺何か言ったか?


「それで相談って?」


セレナが話を戻す。


俺は咳払いした。


「実はな」


四人が真面目な顔になる。


「少し休みを貰おうと思う」


沈黙。


数秒。


誰も喋らない。


「……は?」


レオナが口を開いた。


「休み?」


セレナが目を瞬かせる。


「それだけ?」


リリアが首を傾げる。


「じゃあみんなで行こう!」


ミアだけは元気だった。


「いや、一人で」


空気が凍った。


「却下だ」


レオナが即答する。


「なんでだよ」


「なんでもだ」


「私も同行します」


セレナが微笑む。


笑顔なのに少し怖い。


気のせいだろうか。


「それが最適解ね」


リリアも頷く。


「一緒ー!」


ミアが俺の腕を抱きしめる。


「だから一人で行きたいんだって」


四人が黙る。


俺はため息を吐いた。


「最近思うんだよ」


静かに言う。


「世界樹見たことないなって」


「……」


「海も見たい」


「……」


「温泉も入りたい」


「……」


「美味いものも食べたい」


四人が黙ったまま聞いている。


「せっかく冒険者なのにさ」


俺は笑った。


「冒険していない気がするんだ」


少しだけ静寂が流れる。


最初に口を開いたのはセレナだった。


「アルトさん」


「ん?」


「それは少し分かります」


優しく微笑む。


「ですが」


「ですが?」


「一人はダメです」


「なんで!?」


「危険ですから」


「今さら?」


「今さらです」


真顔だった。


リリアも頷く。


「賛成」


「お前まで」


「一人旅なんて許可できないわ」


レオナは腕を組んだまま言う。


「私も反対だ」


「ミアもー!」


全員反対だった。


俺は椅子にもたれかかる。


参ったな。


思った以上に説得が難しい。


だが。


この時の俺は知らなかった。


もし今ここで無理やりでも旅に出れば。


この四人がどれほど不安になるのか。


どれほど俺を想っているのか。


そして――


たった一ヶ月のつもりだった旅が。


五年にも及ぶことになるなんて。


夢にも思っていなかった。

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