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流転の國 vol.1 〜突如として世界を統べる大魔術師になった主人公と、忠実で最強な配下達の物語〜  作者: 川口冬至夜


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第三十話 ひれ伏す副隊長

天界滅亡計画はバイオが単独で考えていたことでした。

それに利用される形となった黒魔術師部隊、そして国王陛下。

これから自分達がどうなるのかを考えて黙り込むダークに対し、シャドーレは真っ先にマヤリィの御前に跪きます…。

「バイオはいつ目覚めるのでしょうか…?」

ダークが心配そうに聞く。話の間もずっと意識を失ったままだ。

「ちょっと時間がかかるかもしれないわね」

マヤリィはそう言って、

「その前に、私はツキヨ殿にお話がある」

「ツ、ツキヨ様に、でございますか?」

「ここだけの話、天使達が攻めてくるというバイオの『予言』は嘘だったの」

マヤリィは声を潜めて、二人に告げる。

「なんと…!」

「この國にいる元天使ユキを味方に引き入れると同時に流転の國に協力を要請して、天界を滅ぼすつもりだったみたいよ。…天使達に復讐する為に」

『クロス』の隊員達はすっかりホテルのロビーもとい第5会議室で寛ぎモード。こちらに聞き耳を立てている者はいない。

「っ…!確かに、バイオは自分を見捨てて殺そうとした天界の者達をずっと恨んでいるようで、私に力があれば復讐出来るのに、と話すのを何度も聞いたことがあります。それがまさか本当に復讐の機会を伺っていたとは…!」

「それでは、流転の國の方々を戦に巻き込む為に、嘘の予言を…?」

ダークは頭を抱える。このことをなんと言って国王陛下にご報告したら良いのだろう。

「今回、我々は、天界が再び桜色の都に攻め込んでくる予兆を視たというバイオの言葉に従って、早々に流転の國の方々と我が国の黒魔術師部隊の戦力を結集する為に、大変ご無礼ながら事前連絡もなく参上したという次第でございます」

「バイオは当初都に残る予定でしたが、流転の國にいる同志に会いたいという希望で、急遽『クロス』とともにご訪問することになりました」

「今やバイオは陛下の側近。その能力も知れ渡っていますから、多少の我儘は許される立場にあるのです」

ダークとシャドーレが交互に説明する。

「…まさか、我々攻撃部隊が都を留守にしている間に何らかの手段で天界を挑発し、奴らが油断して攻め込んで来た所を、貴女方と我々の連合軍で返り討ちにする計画だったのでは…?」

「そうね、そう考えるのが妥当よね」

ダークの言葉に驚く様子もなく、マヤリィが言う。

「私達の中に『予言』の力を持つ者はいないけれど、誰かが何かを企んでいることくらいは推測出来る。でも、それが誰なのか、個人なのか、複数なのか、そこまでは分からない」

ダークは絶句する。思いもよらなかった事実に驚いているのは自分達だけで、マヤリィはただ答え合わせをしていたに過ぎなかったのだ。

「…私も、まさか「予言者」が単独で計画を実行しようとしていたとは思わなかった。一時とはいえ、ツキヨ殿や『クロス』の中の誰かと共謀しているのではないかと疑ったことを謝らせて頂戴」

「い、いえっ…!今回『クロス』の出動をお許しになったのもバイオの同行をお許しになったのもツキヨ様ですので、間接的に今回の計画に加担させられたことは事実でございます。…つまり、陛下はバイオの暴走を止められなかったということになります」

ダークはそう言ってうなだれる。

これから桜色の都はどうなる?

国王陛下はどうなる?

気付かなかったこととはいえ、友好国であり守護者でもある流転の國を唆し、戦に駆り立てようとした事実は消えない。

「予言者」の言葉を盲信して疑わなかった国王とその周囲の者達の愚かさが浮き彫りになる。

国王の温情で赦された元天使一人の企みで国全体が揺らぐ。

幸いなことに、その企みを事前に察知した友好国によって戦は免れたが、そうでなければ今頃はバイオの計画通り、桜色の都は戦場になり、流転の國も巻き込んで、最終的に天界が滅びたとしても、双方の国においても犠牲者が出たことだろう。

「なぜ…!?一体なぜ誰も気付かなかったのかっ…!こんなに傍にいながら、なぜ私は気付くことが出来なかったのか…!!」

シャドーレは唇を噛みしめる。その目はかつてバイオの裏切りを見抜いた時と同じだった。

そして素早くマヤリィの御前に跪き、

「マヤリィ様、此度は誠に申し訳ございませんでした。この場にいない国王に代わりまして心よりお詫び申し上げます。そして、桜色の都を救って下さった御恩、我々は未来永劫忘れません。こののち、戦を企んだ者をはじめ、その者を見逃した愚かな私どもは如何なる処罰でもお受け致します。…しかし、どうかツキヨ王の命だけはお助け下さいませ。この状況下でお願いをするなどおこがましいことにございますが、陛下は私の命に代えてもお守りすべき御方です。流転の國の主様、何卒、お願い申し上げます」

そう言ってひれ伏す『クロス』の副隊長。その姿からは決死の覚悟が感じられる。

「マヤリィ様、どうかお願い致します」

やや遅れて、隊長もマヤリィの御前にひれ伏す。

今の言葉、本当は隊長が真っ先に申し上げるべきだったんじゃないのかなぁ。ねぇ、ダークさん。


不穏な空気が伝わっていったのか、『クロス』の者達がこちらの様子を伺い始めた。

(今、この話が『クロス』全体に伝わるのは困りますね…)

傍に控えていたミノリがそう思うのと同時に、主が目で合図する。ミノリは頷き、彼等の注意を逸らす為に動く。

「立ちなさい、二人とも」

マヤリィは出来る限り威厳に満ちた声で、

「バイオをはじめ、貴女達の処罰に関してはもう少し考えさせて頂戴。私にはその前にしなければならないことがある」

「はっ」

二人はすぐに立ち上がり、頭を下げる。

「ダーク、私は今から『クロス』の者達とともに桜色の都へ転移する」

「えっ…」

「ツキヨ殿にお話があると言ったでしょう?都へ転移したら、すぐに取り次いで頂戴。貴女達の今後も、彼との会談によって決まってくるでしょう。今回の計画が単独犯であり、しかも未遂に終わった以上、処罰が必要と言われても、出来ることなら私は誰も死なせたくないわ。…勿論、貴女達もね」

流転の國の主はそう言うと、愛おしい者を見るような目で優しく微笑む。

「はっ!こののちは桜色の都の全てを貴女様に委ねさせて頂きます。私どもは貴女様が決定されたことに従うのみにございます。…この先どんな命令が下されようとも、私はマヤリィ様のおっしゃる通りに行動することをお約束致しますわ」

シャドーレは今一度跪くと、深く頭を下げる。

流転の國の主様にして宙色の大魔術師マヤリィ様。

何があろうと揺らがない、絶対的君主に相応しい御方。

「シャドーレ、顔を上げなさい。…嘘偽りのない貴女の言葉、然と受け取りました。私は貴女を信じているわ」

そう言われて顔を上げると、マヤリィは女神のような微笑みを浮かべて、シャドーレを見ていた。

マヤリィは先ほどからずっと二人のことを「貴女達」と呼んでいますが、これは主にシャドーレのことを指している為に「貴方達」ではなく「貴女達」という表記になっています。

つまり、マヤリィは頼りないダーク隊長ではなく、陛下への忠誠心を強く持ち、それでいて冷静に話の出来るシャドーレ副隊長と話をしているのです。

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