第三十一話 命令
桜色の都へ転移する前に、マヤリィは配下達に念話を送り、それぞれに命令を下します。
《こちらマヤリィ。こちら第5会議室。これより私は黒魔術師部隊『クロス』とともに桜色の都に転移する。今後、皆が取るべき行動について命令を下すので、よく聞くように。
まず、ジェイ。第5会議室に転移し、桜色の都へ行く私の伴をしなさい。
ルーリとランジュは玉座の間に待機すること。
ミノリは「予言者」バイオを連れて第4会議室へ転移。 そしてネクロも第4に合流し、バイオを見張って頂戴。
なお『クロス』の副隊長であるシャドーレのみ流転の國に留まるよう命じ、第4に行かせることになっている。
シロマは速やかに自室に戻り、魔力の回復に専念し、ユキもそのまま自室に留まりなさい。
私が留守の間は、流転の國最高権力者代理をルーリに任せる。不測の事態が起きた場合はルーリの命令に従って各自行動すること。皆、分かったわね?》
すると、マヤリィが指示を出した順番通りに皆が念話を送ってくる。
《こちらジェイ。これより第5会議室に転移したのち、ご主人様に付き従い桜色の都へ転移します》
《こちらルーリ。引き続き玉座の間にて待機致します。そして流転の國最高権力者代理として、万一の場合には皆に命令を下します》
《こちらランジュ。これより玉座の間に転移致します》
《こちらミノリ。桜色の都の予言者並びに『クロス』の副隊長を伴い、第4会議室へ転移します》
《こちらネクロ。これより第4会議室に転移し、ミノリ殿に合流致します》
《こちらシロマ。ご主人様の有り難きお言葉に甘えまして、自室に戻り魔力の回復をさせて頂きます》
《こちらユキ。引き続き自室にて待機致します》
全員の返事を聞くと、主は再び念話を送る。
《皆の返事、然と受け取りました。あと…これは『クロス』の者には伝えていないけれど、私は先ほど「予言者」に対して禁術である『能力強奪』を使役した。だから、その点に関しては安心して頂戴。…私からは以上よ。桜色の都から帰還したのち、また玉座の間で会いましょう》
マヤリィは念話を終えると、ジェイの転移を待った。ジェイはすぐに現れた。
「ご主人様の命により、参上致しました」
『クロス』がいるので、今は側近の顔。
「ご苦労様。…では、ミノリとシャドーレは第4会議室でバイオを見守っていて頂戴」
「はっ」
「畏まりました」
いつの間にか、シャドーレもマヤリィの配下みたいになっている。
「あちらの準備も良さそうね」
ダークの指示で『クロス』の隊員達が整列したのを見て、マヤリィとジェイが近付く。
マヤリィは出来る限りの大声で、
「これより、そなた達とともに桜色の都へと転移する。これから魔法陣を展開するゆえ、決してその場から動くな!」
威厳に満ちてるっぽい喋り方で命令する。
てんでサマになってない姫を見て、ジェイは大丈夫かなと不安になったが、魔術師部隊は活気に満ちあふれている。
(この御方が、流転の國の主様…!)
(話に聞いた通り、お美しい御方だ…!)
(後で少しでもお話出来ないかな…!)
『クロス』はシャドーレを除く全ての隊員が男性で構成されている。
皆、流転の國の主の姿を間近で見るのは初めてなので、その美しさに見とれて浮かれている。
ダークだけが沈痛な面持ちで立っている。
「『長距離転移』」
マヤリィの一言で巨大な魔法陣が展開され、瞬時に一同は桜色の都へ『転移』する。
転移魔法は今でこそミノリも使えるようになったが、かなり難しい。
現在、桜色の都にそれを使える者はいない。
「やはり『転移』魔術は素晴らしいですわ…!」
シャドーレは『長距離転移』の際に出現した美しい魔法陣の余韻に浸っている。
その間、ミノリは先ほどの念話を思い返していた。
(ご主人様が『能力強奪』を使役されたとなれば、バイオの「予言」の能力は既に失われている…)
これは、絶対に『クロス』の副隊長であるシャドーレに気取られてはならない。勿論、目覚めた後のバイオにも。
ミノリは、バイオを見張れと命じた主の声を思い出し、気を引きしめるのだった。
転移魔法を最初から使うことが出来たのはマヤリィとジェイのみ。
ミノリは苦労してようやく習得した様子。
因みに、転移の宝玉はマヤリィが無尽蔵に生産し、各々に持たせているので、皆のアイテムボックスには常に転移の宝玉が入っています。
発動するだけでも高難度の『転移』を簡単に宝玉に込めるマヤリィは、やはり宙色の大魔術師と呼ばれるに相応しい魔力の持ち主なのでしょう。




