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【二十六】志を同じくする仲間

 数日後、私は神酒の家を訪ねた。彼女が協力してくれることになった故、知っていることを共有しておこうと思ったのだ。


「第一に、実在するかどうかはまだ分かってないけど、盗賊集団スサノオっていう組織の噂が存在する」


 私の説明に合わせて、神酒は筆を走らせる。


「スサノオは、高祠之国の三神器って呼ばれてる秘宝を集めていると言われてる」

「噂とか言われてるとか、スサノオについての情報はかなり曖昧だね」

「そうなの。辻斬りとか刀狩りの鬼とか、闇に詳しそうな連中にも聞いてみたんだけど、確固たる証拠は無いんだよね」


 神酒は「う~ん」と唸る。それから、思い出したかのように私に質問を飛ばした。


「ところで、三神器っていうのは?」

「この国で最も格式高い三つの御宝の、総称らしいよ。一つは天叢雲剣、八岐神社にあったんだけど、おそらく襲撃犯に持っていかれちゃった。一つは八咫鏡」

「八咫鏡って、裏闘技の景品になってたよね?」

「うん。まあ防人の調べで、実際には所有してなかったと判明したみたいだけど」


 そして最後、これは神酒も知っているはずだ。きっと驚くんじゃないかな。


「そんでもう一つが、八尺瓊勾玉」

「八尺瓊勾玉って……え? 私の故郷にあるやつだよね?」

「やっぱり知ってたんだ」

「知ってるも何も、私、小さい時からあの綺麗な石を見るのが好きだったんだよね。暇なときは朝夕眺めてることもあったくらい。見かねた村長が首に掛けさせてくれたのは、いい思い出だよ。そっか、あの石は盗まれちゃったんだね」

「うん、残念だけど。そう言えば、実は私も、天叢雲剣を眺めるのが好きだったんだよね。同じく、朝夕眺めてた」

「あはは、流石は神器と呼ばれるだけあるね。やっぱり、人を夢中にさせる魅力があるんだ」


 おっといけない、話が逸れてきちゃった。慌てて軌道修正するように、私は無理くり話題を戻す。


「第二に、八岐神社の襲撃と神酒の故郷の襲撃には、共通点がある。それは、どちらも《《神器の強奪》》が伴っているってこと。むしろそれが目的って考える方が、しっくりくる」

「なるほどね。神器を狙っているというスサノオの噂があって、実際、神器を強奪する目的と思われる謎の襲撃が発生している。故に、そのスサノオって組織が疑わしいわけだね」

「そういうこと。第三に、八咫鏡については何も分かっていない。無事なのか既に盗まれたのか、何もね」


 そう説明すると、神酒は合点がいったような顔になった。「ああ、そういうことか!」と納得した様子だから、見立て通り合点がいったんだと思う。


「桜華はそれで、あんなに裏闘技に固執してたんだ」

「ああそのこと。その通りだよ。八咫鏡を探す中、一粒万倍の裏闘技について聞いた。だから、どうしても確かめる必要があったの。まあ、途中からそれどころじゃなくなっちゃったんだけどね」

「ふうん、そっかそっか。それで今、生明が八咫鏡について別で調べてくれてるんだよね?」

「そうだね。生明が居る村には、細かい事は割愛するけど、神の御鏡っていう鏡の秘宝がある。それと八咫鏡は関係あるのか如何か、調べてもらってるところ」


 もしあれが八咫鏡だったら、嬉しいけど素直に喜べない。何故と言って、あの村に八咫鏡があるということは、八岐神社や東の村と同じく襲撃される可能性を孕んでいるという事になるからだ。なるべく早めに真相を明らかにして、その答えによっては何かしらの対策を打たないとまずい。


「それから第四に……あれ、特にもう無いかも」

「ええ……」

「じゃあ、協力者について話しておこうかな。北の方に鍛冶屋があるんだけど、そこの鴨脚(いちょう)ってやつも神酒と同じように協力してくれてるんだ。ついでに言うと、朱里さんと碧斗くんは今、その鍛冶屋で住み込みで働いてる」

「そうだったんだ。どうりで、長屋を訪ねても居ないわけだ」

「ああごめん、先に言っておけばよかったね」


 謝ると、神酒は(かぶり)を振った。


「いいよ、謝ることない。それなら、今度その鍛冶屋に案内してよ。協力者なら会っておきたいし、それに、朱里さんと碧斗くんにも顔を出したい」

「分かった」


 一通り話し終え、彼女と別れて帰路に就く。空はまだ明るく、これから橙色に染まり始めようという時間だ。それなのに、どうしてか唐突に橙色を経由せずして陰り始める。——厚い雲だ。真っ黒い雲だ。


「いや~な天気」


 そう呟き、傘を持って来なかった私は廃屋へと駆けた。お土産のお団子が濡れたら、最悪だ。




【捌話 薄倖の生残り ~完~】

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