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ンザンビの召喚士  作者: 鰯 寛之
プロローグ2
112/113

衝動

 エドガー・マルティンスはウィトン・シュタールの無意識の海を探求していた。なにかあるはずだ。彼の闇深くにある希望の光が。


 ヤドカリのように、今まで多くの人間の体を住処としてきた。それは醜い自分の姿を隠す意味でもあった。言うなれば、私は恥をさらすことを恐れて、他人を利用してきたのだ。だから、多くの人の恥ずかしい一面をたくさん知っているし、それを知る度に救われたように感じた。醜いの自分だけじゃない。どいつもこいつも、醜さをひた隠しにして生きているのだ。


 しかし、ウィトン・シュタールの内面は違った。彼の深層心理は空虚だった。醜さを隠すどころか、それをあからさまに表に出して生きていた。それは、純粋さだった。だから、彼の闇は汚れのない漆黒だった。


 汚れがないということは、いわば無防備でトゲだらけの藪を突き進むようなものだ。彼の内面は今、傷だらけだった。普通ならば、傷をつくるという経験によって、その対処を講じるものだが、彼の無意識に学習能力というものは皆無、それどころか、まるで好きこのんでトゲを全身に受けているようですらあった。それは彼にとって罪滅ぼしの意味があるのかもしれない。彼はこの世界を創造した神の立場で、今、その贖いの儀を執りおこなっているのだ。


 エドガー・マルティンスは彼の深層心理の海を漂いながら、救いとは何かを考えていた。彼にとって救いは死かもしれない。時に価値は逆転し、正攻法のやり方が意味をなさないことがある。ウィトン・シュタールはまさにその一例だった。


 ”衝動”がもし彼の中にあるのであれば、まだ助けられる可能性はある。エドガー・マルティンスはその”衝動”を探した。


 ウィトン・シュタールの無意識に、たったひとつだけ、他とは趣の違う色を見つけた。それは淡い黄色で、漆黒のなかで震えるように、わずかに灯っていた。エドガー・マルティンスはそれが”衝動”かどうかわからないまま、無我夢中でつかまえた。もはや、それに賭けるしかなかったのだ。


 それは紛れもなく”衝動”だった。


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