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今日から僕らは歩み始める2

「まずは、寄生型の異形をいち早く排除することから始めないといけない」


 対異界隊を宛にすることは出来ない。あのレベルの異形を感知できるのは特級か、その上の総督だけだ。


 特級のほとんどと総督は……ダリアの構成員だ。

 そいつらに復讐を誓ったのが、あの戦争だ。

 異形と対異界隊の上層部が手を組んで起こした戦争は、多くの一般人を巻き込んでレジスタンスを壊滅させた。


 レジスタンスは、ダリアという組織名にたどり着くことも出来ずに、俺に全てを託して散った。


【悩悩幽鬼】はその戦争にも参加していたダリアの構成員……これは復讐の機会だ。


「あと2週間くらいで侵食は始まるはずだ。それまでに、異形の召喚者を仕留める」

「異形の召喚者、ですか?」


 あの場に【悩悩幽鬼】以外の末世級異形は感じられなかった。

 だけど【悩悩幽鬼】は戦争の時に見た感じ、単騎戦闘タイプだったはずだ。異形を召喚するような我術ではないはずだ。


「恐らく人間の敵がいる。そいつを見つけ出して殺さないと、先手を取られて取り返しがつかなくなる」

「心当たりはあるんですか?」

「……正直、見当もついていない」


 異形を呼び出すのが普通の陽術とは考えられない。

 我術を身につけているということは陽力と陰力を内包しているだろう。


 人間のダリア構成員が、対異界隊以外にもいる。


 考えたくもないが、ダリアは想像が及ばない範囲に広がり、根を張っている可能性が高いだろう。


「だが触れれば、隠している陰力も陽力も感知できるはずだ」

「2週間の間に全生徒を?」

「生徒だけじゃなくて先生や警備員、外部からの来訪者も全員だ。ルイーズにも協力してもらう」

「分かりました!」


 猶予は2週間。

 来訪者のタイミングが分からない以上、気を抜くことは出来ない。


 だが、侵食を阻止出来れば、異界化を抑えられる。

 それは【悩悩幽鬼】や他の異形の弱体化も図れる。


「てことで、明日から頼む」


 ルイーズの協力無しでは、2週間の間に潜んでいる敵を見つけ出し、排除することは叶わない。

 腰を曲げ、頭を下げる。


「やめてください凱くん。あなたは私の希望、お礼が欲しいだけですよ!」

「俺に出来ることなら何でもする」

「言いましたね? なら、私を殺してくださいね!」

「ははっ、それは無理だわ」


 シリアスな雰囲気を壊す笑い声が漏れてしまった。

 いつもと変わらない無茶苦茶な願い、その発言が逆に俺を安心させた。

 いつもと変わらないものが安心へと繋がる。


「先に帰っててください。私は少ししてから帰るので」

「そうか、色々ありがとな」

「ええ」


 部室を出ると、耳にイヤフォンをして壁にもたれている女生徒がいた。


「三坂? 帰ったんじゃなかったのか?」

「あ、呪羽! 大丈夫なの!?」

「ああ。心配かけちったな」

「べ、別に心配で待ってた訳なんかじゃないけど……良かったわ」


 な、なんというツンデレ……っ!!


 声に出さなかったのは流石に可哀想だと思ったからか、それとも


「どうかしたの?」

「……いや、なんでもない! どうせなら一緒に帰ろうぜ」

「え、ええ、もちろんいいわよ」


 少し暗くなった校舎を2人揃って歩き始めた。

 西日で伸びた2人の影を見る人の存在に、俺は気づいていなかった。


 ちなみにこそばゆいツンデレはその後も続いた。


 〇


 6月2日


「全生徒、確認し終わりましたね」

「ああ、いなかったな」


 三坂という人望溢れる生徒会長と一緒にいれば、勝手に向こうから生徒がやって来てくれると思っていたが、間違いではなかった。それで会えなかった生徒には部活の勧誘と言う名目で突撃した。

 来訪者はほぼ無理矢理だが、握手してもらって確認した。


「最近呪羽って変わったよなぁー」

「やっぱりそうだよな! 明るくなったというか、活気があるというか、うん変わった」


 そんな感じの好印象がクラスメイトの中に広まり、


「なんちゃら同好会の勧誘がやばいらしいぜ」

「探偵同好会っしょ!? あの幽霊みたいな先生が顧問の同好会! 前髪で目が見えない男の先輩がやってくるらしい」


 うん、前髪長くて悪かったな。

 これは父親譲りの髪型だし、母親譲りのくせ毛のせいで気味悪く見えているだけだ。

 ま、俺が大勢に認知されることが今までなかったしわ寄せ(?)が一気に襲ってきた気分だ。


 そう言えば、顧問の闇風先生が体調壊して学校来てないんだったな。そろそろ教師の確認も済ましたいし、早く治って欲しいな。


「まだ寄生されている人は多分いないわ」

「そうだといいんだけどな」


 異形の存在密度が高くなれば、その場の異界化が進み、異形の力は増す。

 俺が未来で侵食に気が付けたのは異界化という侵食をかんじとったからでもある。

 つまり、ある程度の生徒が寄生された後でしか気が付けない可能性が高いのだ。


「……このままでいいのか」


 もし、召喚者を見つけることができず、異界化が進んでしまった場合、【悩悩幽鬼】がこっちの世界に顕現する。あらかじめ【悩悩幽鬼】の力を知っていてどんな戦い方をしてくるか知っているとはいえ、死んだ原因となった力は分かっていない。

 陰陽力を使えるのは確実だから、ルイーズと共闘するのは危険だろう。


 武器はすでにルイーズに頼んで手配済みだがーーそれでいいのか?


 対異界隊の本部には……アレがある。

 あまり使いたくはないが、その気持ちを押し殺してでも取り返しに行くべきなのかもしれない。


「何を悩んでいるんですか? 前の戦争の時もそうでしたが、どうせ凱くんは迷って迷って行動しちゃうんですから、長々と迷うのはよくないですよ」

「うっ、辛辣」

「それで何を迷っていたんですか?」


 このままルイーズに対異界隊の本部に乗り込んでアレ……母親の遺骸を加工して作られた刀武器【呪羽】を強奪しにいくといえば協力してくれるだろう。

 しかし俺と違ってルイーズと対異界隊との関係は完全には切れていない。


 対異界隊から自主的に除籍した波伊庭家は、傭兵のように対異界隊に力を貸している。

 その貢献度に免じてルイーズの処分は事実上の無期観察処分となっている。


 本部に乗り込むようなことがあればいくら波伊庭家であろうと彼女を守り切るのは難しいだろう。


「誰が召喚者なんだろうと考えてただけだよ」

「ふ~んそうですか」


 守る対象の最たる人が藍・L・ヴィクトリアだ。


 彼女の未来を守る。


「行くか」


 そのために俺は一人で対異界隊の本部に乗り込むことを決意した。

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