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一話目  笑えよ

一話目にしてはちょっと長いかな?

 ロンドンのとある博物館で警報が鳴り、特殊部隊の叫び声が町中に響き渡る。


「捕まえろ!必ずだ!」


 そう叫ぶのは対怪盗用に結成された特殊部隊、名は対怪盗用特殊部隊超警察。これまでも数々の怪盗たちを捕まえてきた彼らにとって、今回の事態もいつも通りに怪盗を捕まえて終わるはずだった。


 だが今回だけは決してなめてかかってはいけない相手だった。館内には既に大量の血痕、矢で頭部を繋がれた死体。ワイヤーによって首・腕・指・胴・足が捻られているものもあった。そしてもちろん宝が展示されていたであろう、破壊されたショーケースも。


 ——緊張。

 彼らにとって忘れかけていた感情が一気に押し寄せる。外に出て彼らは目撃した。月光に照らされた、宝を盗んだであろう体中を血液で包んでいる人物を。そしてそれが宙に立っている姿を。


 「Cheers(バイバイ)」


 そう一言口を開くとそいつは、まるで初めから宙に足場があるように、当然のことのように、優雅に空を歩きロンドンを去っていった。その姿はまるでファッションショーに参加している絶対王者のごとく美しい姿だった。この一連の犯行は開始からたった三十分の出来事であり、世に知れ渡るまで一日と時間はいらなかった。


 ——————————————————


 世界中の怪盗。その全員が口をそろえて言う。今世界で一番名を轟かせてる怪盗はこいつだと。


 怪盗のであるにもかかわらず、残酷さを兼ね備えてる奴はこいつだと。その怪盗の名はA。出生、性別、年齢等、Aの身元が割れる情報はこの世には何一つ残されておらず、その全てが謎に包まれている。


 だがその実力は本物であり、Aが狙った宝は確実にAの手元に落ちる。そんな完全無欠とも言える怪盗A。この者は今、唯一自身のことを知る人間と共にある策略を練っていた。


 時刻は日本時間で午前四時二十分。太陽が上がる少し前の時間帯。とあるマンションの一室で二人の人物が二日後の計画内容の確認をしていた。


 「では、先述したとおり私は職員に変装して龍の剣を盗み出すから君は脱出の手配をしていてほしい」


 そう指示を出すのは、見た目が二十代後半の、身長は百七十五センチほどの男。服装は、白のシャツに黒のジャケット、紺色のボトムスであり、黒髪の短髪。アイドルグループにいてもおかしくはないほどに整った顔立ちをしている。


 「心得ています。それと、ご申し付けられていた道具の修理が完了しました。ご確認ください」


 「わかった。あとで見ておく。ありがとう」


 「もったいないお言葉です」


 男に返事を返すもう一人は、二十代前半の見た目で背丈が百七十センチほどの黒髪短髪の少女。その姿は黒のワンピースでおおわれており、ところどころに見える肌は透き通るように白い。


この少女、朝倉みかんこそがAのことをこの世で一番知っている人物であり、唯一の人物だ。


 十年前両親に捨てられ路頭に迷っているところをAに発見された。その際にAから拳銃を手渡され一切の痕跡を残さず両親を殺害。その腕をかわれAの助手となる。


 その後Aとともに行動し名前を変え、髪を染め、何か国もの言語を習得し、現在に至っている。勿論であるがこの朝倉みかんという名も偽名だ。


 「じゃあ私はさっそく潜入してくるから。決行当日、急に知らないやつが表れても怪しまれるからね。連絡は最低限にしてくれ」


 「了解しました。お気をつけて」


 そう言うとAは龍の剣が保管されている博物館の従業員の服に着替え、マンションを出て行った。


 —————————————————— 


 「今回ついにこの博物館にもいや、わが国にもAからの予告状が届いた。我が国の誇りのためにも龍の剣は守り抜き、奴を捕らえなければならない」


 「しかし鈴木警視、どうやってAを捕まえるのですか?Aは変装の達人らしいですし、なにより奴は怪盗道具を使ってくるでしょう。それに我々日本国は対処できるのでしょうか?せめて拳銃の使用許可がでさえすればまだ可能性はあるのですけど・・・」


 「・・・そのことなんだが、今回やっと日本でも対怪盗用特殊部隊超警察の結成許可が下りた」


 館内にいる職員、警察官が一斉にどよめく。対怪盗用特殊部隊超警察の結成許可。それすなわち怪盗に対するありとあらゆる武力行使が認められたということだからだ。


 「それが本当なら怪盗相手でもなんとかなるかもしれませんが・・・」


 「言いたいことはわかる。だからこれは公表しない。ここにいる者、そして警察の中でもごく一部の者にしか知らされることはない。それだけ国のお偉いさんも本気なんだろうよ」


 今度は一斉に皆が静まる。皆、対怪盗用特殊部隊超警察は他国でも多く結成されていることを知っている。そのほとんどが良い結果を残していることも知っている。


 そしてそのすべての国の部隊がAに敗北したことや、Aに殺害されたことも。これに関われば自分の命が危ないかもしれないということも。


 「今回、多くの国から必ず今回は捕らえるようにと言われている。失敗はできない」


 「国はなんと?」


 一人の男性職員が鈴木に向かって問いかけた。


 「今回失敗すれば、未だ一度も怪盗による被害を、対怪盗用特殊部隊超警察を設立していないのにもかかわらず出していないという、我が国の平和のイメージが崩れる。何としてでもとらえるように。とのことだ。まあ我々も奴を逃すつもりはないが。」


 沈黙と静寂が続くなか、鈴木が口を開く。


 「作戦は、この館内にて、龍の剣を囮にし、奴が龍の剣がある部屋に入ったのち一斉にかかって捕らえるというものだ。ここまでで何か質問があるものは?」


 「あのー」


 近くにいた一人の女が声を上げる。


 「何故龍の剣をこの博物館内に置いておく必要があるのですか?確かに歴史的に見ても重要で大切なものだから傷つけるわけにはいかないってのはわかるんですけど、怪盗に盗まれる可能性があるなら絶対に置いておく場合じゃないでしょ。偽物にすり替えとくとかすればいいじゃないですか」


 「それなんだがな、龍の剣は展示室から簡単には持ってけないんだよ。センサーが働いてどうしても部屋の出口のシャッターが下りてしまうんだ」


 部下である女の質問に鈴木が答える。鈴木の言う通り、展示室から龍の剣は持ち出すことはできない。出入口が閉まるだけでなく、部屋中が鋼鉄で瞬時に覆われるようになっているため壁の破壊も容易ではない。


 勿論時間をかけて破壊することもできるが、それだと修理に時間がかかり、Aの犯行予告時間内に間に合わなくなる。出入口のシャッターを抑えようとしてもシャッターの下部分は鋭い刃物になっておりどんなものでも切り裂いてしまう。他にも様々な要因が絡みつき、結果として龍の剣は移動不可なのだ。

 

 「とにかく、怪盗が出した予告状通りなら、奴の決行は二日後の八月一日だ!何としてでもとらえるぞ!」


 「・・・はい!」

 

 その場にいた者たちの生気のない、だが大きな声が館内に響き渡った。


 ——————————————————

 

 「そこのトラップはもう少し目立たないようにしてくれ。防犯カメラが少し少ないな。全体的にもう少し増やしてみよう。どうした?具合でも悪いのか?少し休むといい。向こうの部屋ならここよりクーラーもきいている。」


 適切な指示を出し続ける鈴木太一(すずきたいち)をモニタールームで監視を任された新人警察官二人が、見て話す。


 「すげーよなぁ」


 「なにが?」


 「鈴木警視だよ。若くして警視ってのも十分すごいのに対怪盗用特殊部隊超警察のリーダーにもなったらしいぜ」


 「まじ?働きすぎじゃね?」


 「なにがそんなにあの人を突き動かすのかねぇ」


 (鈴木太一。二十七歳で警視になった秀才。身長百八十センチ体重八十キロ。茶髪で目つきが鋭いのが特徴。欠点という欠点がなく部下からの信頼も厚い。結婚もしており、三歳の娘と一歳の息子がいる。誰にでも優しく接することができるが怪盗相手は別。特に僕を・・・。厄介極まりないな。始末するべきか、否か。)

 

 決行は明日に迫っている。今彼を始末するのは簡単だろう。だがその後のことを考えられないほどAは馬鹿じゃない。


 始末するなら完璧な作戦を練ってから、彼がひとりになったときのみだ。だが直感が、Aの直感が彼は今まで相対してきたどんなやつよりやばいと言っている。誰にでも優しい態度をとり、裏表がないように振舞ってはいるがAだけは彼のその危険性に気付いてた。


 (たとえ今ではなくとも、今後脅威になるのであればいずれ・・・)


 「おい!何ぼーっとしてるんだよ。そこの監視カメラ担当はお前なんだぞ?しっかり見張っててくれ」


 「あっ、はい。すみません。少し考え事を」


 「ちっ。ちょっとばかし顔がいいからって許されると思ってんじゃねぇぞ。だから嫌だったんだよ新人と一緒に任務をするのは」


 (聞こえてますよ~。そういうのは本人が離れてから言っててほしいもんだね)


 そんなぼやき話を聞き流しつつ、Aは監視カメラで罠の場所、特殊部隊の顔や特徴をしっかりと覚えていく。しかしあまり集中しすぎてもかえって不審がられてしまうかもしれない。考えすぎかもしれないが念には念をだ。そんな中で役に立つのが、Aがもつ瞬間記憶能力だ。この特異体質こそが、Aが長年捕まらなかった要因の一つだろう。


 (———なんとも楽な仕事だね)


 心の中でそう呟く。そして、


 「さて、こんなもんでいいだろう。・・・怪盗!どこかで見ているんだろう?姿を見せたらどうなんだ!」


 画面の向こうで太一がそう叫ぶ。最初は聞き間違えだと思った。ありえないことだったからだ。だが瞬時にそれが現実だと悟る。決して顔や行動には出さないがAの脳内は既に疑問で埋め尽くされていた。


 (なぜ?どこで?ありえない。いつしくじった?ハッタリ?)


 様々な思考がAのなかで飛び交う。


 「どういうことですか?鈴木大佐?」


 鈴木と同行していた部下の女が問いかける。


 「私がもしAならどうするか考えていたんだ。今回の犯行を成功させるのにどんな行動が得策かを。奴はほぼ確実に潜入を選ぶだろうね。決行予定日は明日、警備も厳重だし、この博物館は日本の中でもトップクラスにセキュリティが強い。そんななかで決行当日にのこのこと来るとは思えない。私がAなら、絶対に何日か前には潜入しておく」


 (・・・正解)


 「しかし、隊長が先述した通りこの博物館のセキュリティは完璧に近いです。それに我々の目もあります。そんな中で潜入などいくらAでも・・・」


 部下の女が動揺しながらも声を上げる。


 「だからこそじゃないかな。これだけセキュリティが強ければ一度侵入を成功させたらかなり強いよ。」


 館内が一斉にざわつく。もしかしたら隣にいる人があの怪盗かもしれない。そんな恐怖から泣き出すもの、嗚咽(おえつ)する者もいた。


 「聞こえてるか!怪盗!」


 (聞いてるよ)

 

 「どこに隠れているかは知らんが、逃げられると思うなよ」

 

 (思ってるよ。奪って逃げられるって)

 

 「お前は必ず私たちが捕まえる。何としてでもだ」

 

 (・・・幸運を祈るよ。隊長さん)

ちょっと会話文を多くしすぎちゃった様な・・・。

とんとん拍子知れないけどそこは大目に見て!

この後一気に二話掲載する予定。数話はもう完成してるからね。

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