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もし高天神城が落ちる前に本能寺の変が勃発したら  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』


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30/43

想定とは

 田中城。

依田信蕃「私がかつて高天神に入っていた時の印象と横田様や出浦様の話とを合わせ考えた家康が布陣する場所は城の西側でありました。砦を拵えた徳川の家臣も同じ事を考えていたものと思われます。」

出浦盛清「実際、それだけの規模を容れる砦が構築されています。」

依田信蕃「しかし家康は私の見解とは異なる場所に入りました。城の東側であります。」

 高天神城。

岡部元信「家康が東に入ったな?」

横田尹松「はい。」

岡部元信「家康は我らがまだ疲弊仕切っていないと考えているのか?」

横田尹松「そうでありましたらあの慎重な家康があれだけの兵を率いやって来るとは考えれません。」

岡部元信「私も同じ考えにある。」

 江尻城。

穴山信君「もしかすると……。」

真田昌幸「何か気になる所が御座いますか?」

穴山信君「三島に兵を動かした時、私の旗で無く……。」

武田勝頼の旗印で出陣した方が良かったのかも知れない……。

穴山信君「氏政に対してはこれで正解と考えている。これまで様子見を決め込んでいた私と小山田が動いた。武田は一枚岩である事を知らしめる事が出来た点に付いてはそれで良かったと考えている。実際……。」

北条は動くに動けない状況に追い込まれている。

穴山信君「そして何より氏政がどのように動こうとも……。」

武田勝頼の行動に制約を加える事が出来なくなってしまった。

穴山信君「ただその情報が……。」

徳川家康にも伝わってしまった恐れがある。

穴山信君「そうなれば家康が城の東側に布陣したのも合点がいく。」

 田中城。

依田信蕃「敢えて脱出口を用意している可能性もあるな?そこに誘い込んで一網打尽にしようと考えている恐れもある。」

出浦盛清「その可能性はあります。ただ……。」

 高天神城。

横田尹松「城の西側を調べました。全く兵が居ないわけではありません。ありませんが……。」

番をしているのは5、6人。

 田中城。

出浦盛清「西側でありましたら高天神勢が全軍で以て進めば突破する事は可能な状況にあります。」

依田信蕃「家康は降伏を認める考えは無い。と言う事は城兵を根絶やしにする予定にある。にも関わらず手薄な場所を用意している理由がわからぬ。」

 高天神城周辺。

徳川家康「忠世。」

大久保忠世「はっ!」

徳川家康「仮に岡部が脱出を試みたとしても、西からはあり得ぬ。彼の地は脱出には不向きである事に加え、武田領に逃げ込むには遠回り。それよりも……。」

死兵となって強行突破を試みられる方が危険。

徳川家康「東側への備え。怠るで無いぞ。」

大久保忠世「御意。」

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