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もし高天神城が落ちる前に本能寺の変が勃発したら  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』


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因縁

 鉢形城は今の埼玉県大里郡寄居町にあった関東管領山内上杉氏家臣長尾景春が築いた城。その後、当地に入った北条氏邦が整備拡張。北条氏による上野進出並びに武田の攻撃に対する最前線として活用。

内藤昌月「ここを奪う事が出来れば氏政も駿河処では無くなります。加えて鉢形を奪えば……。」

北条の攻撃を防ぐ事も可能となります。

 鉢形城が立地しているのは深沢川と荒川が合流する付近にある断崖の上で最高地点は標高122メートル。

内藤昌月「ただ……。」

どうやって奪えば良いものか?

矢沢頼綱「この事についてだが……。」

一人の人物が入室。

内藤昌月「……あなたは確か……。」

「はい。藤田信吉に御座います。」

藤田信吉は北条氏政の家臣として対武田最前線の1つであり、越後との境も為す要衝沼田城を守っていた人物。

矢沢頼綱「彼には私も手を焼きました。」

つい先日まで北上野攻略を担当している真田昌幸の攻撃を防ぎ続けるも、5700貫もの所領と武田信玄の次男海野信親の娘を娶ると言う好条件で以て武田への転属を決断。


 田中城。

高坂昌元「藤田を信用出来ますか?」

真田昌幸「私の目が曇っていると?」

高坂昌元「いえそうではありません。ただ……。」

地位と金で転ぶような者を……。

真田昌幸「藤田は北条に対して思う所がありましてね。」

その思う所とは?


 箕輪城。

矢沢頼綱「藤田信吉と聞いて気になる所ありませんか?」

内藤昌月「藤田と言えば……。」

北条氏邦の養子先。

藤田信吉「はい。氏邦は私の父と養子縁組を結ぶ事により藤田に入り込みました。家を維持する事を考えれば仕方の無い事でありますし、私も良い仕事を与えていただけたのでありましたが……。」

藤田信吉の兄が氏邦の手に掛かり……。

藤田信吉「突然の事でありました。毒が盛られたとの事。意見の食い違い原因でありました。その後私が兄の跡を継ぎ、沼田を任されたのでありましたが……。」

いつ自分が同じ目に遭う事になるのか?


 田中城。

真田昌幸「疑心暗鬼となっている点に目を付け殿に相談。彼が求めているのは安定した立場にありますので。」

高坂昌元「武田の一族に?」

真田昌幸「はい。ですのでその後……。」

藤田信吉が沼田の統治で不備を来し、真田昌幸が尻拭いした後も。

真田昌幸「信吉の地位が揺らぐ事はありませんでした。」

依田信蕃「余計に心配なのでありますが?」

真田昌幸「内政に付いては不安な点があります。しかし彼は……。」

いくさには滅法強い。

真田昌幸「信吉も氏邦も互いを許す気は無いでしょう。もしここで氏邦が後れを取るような事がありましたら、間違いなく……。」

北条氏政は鉢形に向け兵を動かします。

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