1 奪ったは良いけれど…
「ソフィリア、僕との婚約を解消して欲しい。」
食堂、という公の場において婚約者……いや、ここは元婚約者と言えば良いのだろうか……クリミオから告げられたのは無情にも婚約解消の話。
「……セリアンヌさん、ですか?」
悲しそうに、下を向きながらもソフィリアは婚約者のクリミオが熱愛する女性…セリアンヌの名前を呟く。
「あぁ。僕はセリアンヌを愛しているんだ。」
迷いの無い口調でクリミオは言った。
ところで、先述の通り。ここは食堂。公の場であるということは、つまり、ソフィリアの友達もいるということ。
とはいっても、ソフィリアの場合には、友達という言葉は学園の殆どの人間を指す。ソフィリアは人気者なのだ。
「ちょっと、待ちなさいよ!何で、セリアンヌなんかを選ぶの⁈」
「なんか、とは何だ!僕は、セリアンヌの優しさに…なによりも美しさに惚れてしまったんだ。中途半端な気持ちでソフィリアと結婚なんて出来ない!」
「何ですって…!」
あちこちから批判の声が漂う。
何故ならば、多くの者がソフィリアを好きだから…。この貴族達が集まる学園にして、なによりも実力を重視する校風のの中、誰よりも努力家であるから。
ザワザワと食堂がわめつく中、それを収めたのは当人であるソフィリアだった。
「皆様、私の為のお言葉ありがございますわ。しかし、セリアンヌさんも努力して、クリミオ様の御心を掴んだのです。皆様もセリアンヌさんのの美しさはご存知でしょう?きっと、あの美しさを維持するのは並大抵のことではありませんわ。」
そういって、ことの成り行きを見守ろうとニヤニヤと意地の悪い顔をしながらこっそりとドアから見ていたセリアンヌを指し示す。
気づかれていることに気がつかなかったセリアンヌはギョッとした。
いっておくが、セリアンヌは確かに美しい。栗色のふわふわとカールした髪に大きなタレ目は美しいと言わざるをえない。しかし、ソフィリアも全然負けてない。黒く艶めいた髪にシュッとしたつり目。2人は対照的な美しさを持っていた。
鶴の一声ならぬソフィリアの声を聞いた生徒の大半の声が納得した。
「まぁ、ソフィリアさんが良いと言うなら良いわね。」
周囲がニコニコと祝福ムードとなる中、内心めちゃめちゃ焦ってる人間がいた。
その人間は、意外にもセリアンヌだ。
sideセリアンヌ
え、え、え、なにコレ?どゆこと?
私、今エンディングを迎えたのよね?なんでソフィリアはあんなにも嬉しそうなの?あんた、彼氏をポッと出の女に取られたのよ?ここは、怒り狂って怒鳴りちらすでしょう?というか、むしろそうしてやれよ。あんたとクリミオの今までの付き合いは何だったんだよ、あんたは鬼か!
……じゃ無い。もう一度言う。これはどうゆう事だ?これじゃあ、ゲームと違う……。本当なら、怒り狂ったソフィリアに周囲があいそをつかして孤立。その今までのソフィリアの人気を引き継ぐのは私。……最後の最後でやってくれたわね……。もう、ここでゲームが終了する以上、私にはこれからどうなるのかがわからないわ……!
なんて、悶々と考えていると
「……でも、そうなるとセリアンヌさんはこれから大変ね。だって、もう“婚礼の祝宴”の時期が近いでしょう?」
嫌味でも何でもなく、心配そうに呟くソフィリア。
婚礼の祝宴?
えーと、それは前世とかじゃなくてこの世界の授業で聞いたことあるよーな、無いよーな……
「あぁ。それが問題なんだ…」
「仕方ありません…私も協力させて頂きますわ!」
「本当か⁈有難う、ソフィリア。」
「私の代わりにやって頂くのですもの。……私がセリアンヌさんを立派な淑女にしてみせますわ!」
話がよくわからない内に進んでいく。何で私がソフィリアに淑女にされなきゃいけないんだ。しかも微妙に言い方が失礼だ。私が立派な淑女じゃないみたいじゃないか!何、凄い大変な任務を負ったみたいなやりがいのある顔をさせてんだよ。ていうか、ふったばかりの女に物を頼むとかクリミオはクリミオで最低だな。……いや、クリミオが好きで攻略したばっかの私が言うことでも無いけど。
「では、これからよろしくお願い致しますね?私、頑張らせて頂きますわ!」
ソフィリアは、悪役令嬢とは程遠い(ヒロインの私よりヒロインみたいな)笑顔で私に向き合った。




