終章
放課後 風がそよぐ丘の上で
三月も終わりのこの日、オレは桐生と一緒に真さんの墓参りに来ていた。
明日からはまた本格的に、戦士としての修行が再開される。二人でゆっくりと時間が取れるのは、もう今日だけだろう。
入院中や、補習を受けている間ずっと、考えていたことがある。それを伝えなきゃならねえ。
真さんの墓は、郊外の小高い丘の上にある無縁仏の霊園にあった。
日が落ちた薄闇の中を、二人で無言のまま歩いていく。
しゃがんで線香を上げ、手を合わせる。短い黙祷が終わり、オレはすうと息を吸った。
「真さん。最後、会いに行けなくてすみませんでした。あと、桐生を戦いに参加させることになってしまって、すみませんでした」
まずは頭を下げる。後ろで桐生が何か言いたげな顔をしていたけど、結局は何も言わなかった。
「でも、オレたちはそのおかげで助かりました。積極的にコアを使えとは絶対に言いませんが、これからもオレたちを助けて欲しいと思っています」
このあとが肝心だ。緊張で喉がカラカラになる。
一、二度深呼吸をして、
「オレは桐生連が好きです! あなたの娘を、世界で一番愛しています‼」
叫んだ。
一度口にしてしまったら、あとはせきを切ったように自然と言葉が出てきた。
「オレは桐生のきれいな顔も、変な言い回しも、笑うと実は可愛いところも、自分のことを後回しにしちゃうアホなところも、全部大好きです!
こいつを傷つける奴は誰であっても許しません! どんな奴とでも戦います! こいつは、オレが必ず守ります‼ だから」
……これだけは、本人の目の前で言いたかったな。
「だから、連のことはオレに任せて下さいっ‼」
静かな墓地に、オレの声が奇妙な重みをもって反響した。
しばらくオレは、自分の言ったことを心の中で繰り返し、改めて自分の中できっちり消化してから、ゆっくり立ち上がると振り返った。
そこには、オレを見上げて楽しそうに、そしてこの上なく嬉しそうに微笑んだ桐生……いや、連がいた。
「ありがとうございます、翼さん。……私も、あなたのためならばこの命、かけても惜しくはありません」
そう言った連の瞳はまっすぐだった。たぶん、本心だろう。
でも、オレが欲しいのはそんな言葉じゃない。
「……それは、少し違うだろ。そうじゃない。……オレは、お前とずっと、この先一緒に生きていきたい。連、オレのために死のうとするな。命をかけるな。オレのために生きようとしてくれ」
連は一瞬きょとんとしたような顔をしたが、すぐに「はい」と力強く頷いてくれた。
吊り下げられた星の下。戦士は愛しい者へ優しいキスとともに誓う。
天に在りては比翼の鳥となり、地に在りては連理の枝となろう。
天が定めたその時まで、オレはお前のそばでこの世界を生きると約束しよう——




