6ページ目 — 「嘘の始まりと終わり:真実」
一打ちごとに、タツは受けた暴力を思い出していた。
「なぜそんなことをしたのだ、若者よ?」
だが、ふと彼の頭の中を、見覚えのあるいくつかの人影がよぎった。
その瞬間、タツは額を地面に打ちつけるのをやめた。それでも、両手で腹を押さえたままだった。
「俺は……」
「わからない……」
すると、木がつぶやきを漏らした。
「ならば、理由を見つけねばならぬ、若者よ。」
「だがそのためには、まず新たな運命を受け入れなければならない。忘れることは選択肢にない。」
「え……?」
「まず初めに。お前は善い人間か、若者よ?」
タツはわずかに顔を上げ、木のほうを見た。木は目を閉じており、その枝と葉が動き出し、広がって、丘全体を覆っていった。
そして、葉が消えて明るさが辺りを満たすと、すべてが普通に戻ったように見えた。空は青いままだったが、今度は太陽が出ていた。森は相変わらず広かったが、丘のまわりにはいくつか歪みが見て取れた。だがタツの目を引いたのは、少し先にある、たくさんの家が並ぶ村だった。あの不快感さえ消えていた。
しかし、丘の中央から少しずれて伸びる木に目をやると、そこには短い茶色の髪の少年がいた。浴衣のようなものを着ている。木の真下で休んでいるようだった。
タツが木を見ると、木は片目でぱちりとまばたきをしただけだった。
ところが突然、横たわっていた少年が目を開け、数秒のあいだ空を見つめたまま動かなかった。やがて身を起こし、あらゆる方向を見回した。
少年は戸惑っているようで、何かを探しているようにも見えた。
それを見て、タツは立ち上がり、話しかけようとした。だが少年の肩に触れようとした瞬間、タツの手はまるで幽霊のように少年をすり抜けてしまった。
「な……なに……?」
少年もタツと同じくらい戸惑っていた。ここがどこなのかもわからず、自分の服装にさえ戸惑っていた。
だがそのとき、突然、森の木々の合間から爆発が起こった。
見たところ、爆発はそう遠くない場所で起きたようだった。しかし、その眺めも長くは続かなかった。数秒後、先ほどの近くで、少し離れたところにもう一度爆発が起こったのだ。
気づかぬうちに、少年は爆発のほうへ歩き出していた。疲れているようで、自分の足さえ制御できていないように見えた。
「何やってんだよ、このバカ!」
タツはすぐさま少年の前に立ちはだかり、腕を広げて止めようとした。
「そっちに行ったら怪我するぞ!」
だが、すべては無駄だった。少年にはまるで一言も聞こえていないようで、タツの体を完全にすり抜けていっただけだった。
そしてタツは、困惑した眼差しのまま、この状況を──理解はできないながらも──受け入れ、少年のあとを追った。
動物たちは彼のよく知るものにとても似ていた。少し違うものもいたが、本質は同じだった。森は他のどの森とも変わらない普通のものに見えた。だがその奥を覗き込むと、タツの中に恐怖が膨らんでいった。
「ここは……どこなんだ?」
少年を追いながら、タツは自分の周りをぐるぐると回り、森のあらゆる場所とあらゆる動物を見つめた。
「ちょっと待てよ……」
そう言うと、タツは歩みを止め、数秒間じっと地面を見つめてから、来た方向へ向き直って叫んだ。
「木! どこだ!? 何が起きてるんだ!?」
少しでも声が届くようにと、両手を口の周りに添えた。だが、それでも何も起こらなかった。
タツは長いため息をついた。目を閉じ、目をこすった。
「サトゥ?」
目を開けると、タツは広場の真ん中にいた。目の前には大きな焚き火があった。その周りでは、数えきれないほどの人々が、美しい音楽に合わせて踊ったり話したりしていた。
しかし、すべては中断された。先ほど丘で見かけた少年が、地面を這いずり、やがて立ち上がって、どこかへ向かって走り出したのだ。
皆が驚いて見つめ、走り出した少年の隣にいた緑の髪の少年は、ただ心配そうな表情を浮かべるだけだった。
それを見て、タツはうつむき、かすかに微笑むと、少年を追いかけて同じ方向へ走り出した。
夜の濃い青があたり一面を満たしていたが、ときおり村中の蝋燭の明かりにかき消されていた。穏やかな音楽は、そよ風とよく調和していた。焚き火の熱が、夜の冷たさに締めつけられた手を温めていた。そしてタツは、少年についていこうと走った。そうすれば真実がわかるはずだと、確信していた。
素早い足取りで、タツはある家の脇で足を止めた。路地の奥には、切られた木材と、何かが入った袋がいくつか置かれていた。少年はそこで身を縮めていた。苦しんでいるようだった。
タツは少年のほうへ腕を伸ばしたが、途中で止め、手を握りしめた。そしてうつむき、目を閉じ、歯を食いしばった。頭の中で、他人を助けられる状況にいたすべての場面を思い返し、ただ「俺には関係ない」と言ってきた自分を思い出していた。
「サトゥ?」
大人の男の声がタツの耳に響き、彼は目を開けた。気づくと、そこには身を縮めた少年を見下ろす男がいた。
「こんなところで何をしているんだ? 祭りで楽しんでいるはずじゃなかったのか?」
「まさか、また隠れて練習していたんじゃないだろうな?」
それから少年を指さし、咎めるような、少し苛立った口調で言った。
「その姿と服……そんなふうにして……」
「お父さんがまたあなたに怒るよ……」
タツは少年に視線を戻した。服は少しくたびれていて、誰かに傷つけられたかのようだった。あるいはその逆かもしれない。
「なあ、ずいぶん疲れているようだな。家まで送っていこう。」
そう言うと、男は先に歩き出し、立ち止まって、少年がついてくるのを待った。
それを聞いて、タツはパーカーのポケットに手を突っ込み、男についていくことにした少年のあとを追い始めた。
音楽はもう遠く、もうすぐ聞こえなくなりそうだった。それは当然のことだった。
「君が学院に入るためにとても努力しているのは知っている。それに、君ならきっと合格すると私は確信している。だが、その厳しすぎる鍛錬のせいで、みんな、特に君のお母さんが、とても心配しているんだ。お母さんが心臓に持病を抱えているのは知っているだろう? いつも遅くに帰ってきて、もし何かあったらどうするんだ?」
「失礼なことを言うつもりはないが……君は鍛錬に集中しすぎて、家族をないがしろにしているのかもしれない。もし学院に入れたら、家族と離れて過ごすことになるんだぞ。」
「まあ……余計なお世話かもしれないが、私は君が心配なんだ。みんなそうだ。それは君の才能だけの話じゃないんだよ。」
男は少年にそう言った。タツはただ、二人についていきながら、その言葉を聞いていた。だがなぜか、その言葉が自分に向けられているように感じていた。
やがて、少年と男は一軒の家の前で立ち止まった。二人は数秒間、何かを話していた。一方タツは、その真ん中あたりで、少し離れて二人を眺めていた。
二人が握手を交わすと、老人は手を振って別れを告げた。少年は扉のほうを向き、じっとそれを見つめていた。
「新しい章の始まりだな。」
そう言うと、タツは歩いて少年の隣に並んだ。扉を見て、腰に手を当てた。
「まあ、気持ちはわかるよ。俺は真剣に考えたことなんてなかったけど、ほら、わかるだろ?」
それからため息をつき、続けた。
「アドバイスが欲しいなら、物事はそういうもんだって、ただ受け入れればいいと思う。」
「実を言うとさ」
うつむいた。
「そうあるべきじゃないんだけど、俺はそう見てるんだ……たぶん、俺が悪いんだろうな……」
タツが話しているあいだに、少年は扉に近づいた。
「え?」
十分近づくと、少年はドアノブに手をかけた。
「おい、人が話しかけてるときは、ちゃんと聞けよ!」
扉を開ける前、少年は隙間から揺らめく光が漏れているのを見た。まるで炎のようだった。そして、ため息をついた。
煙が空気に漂っていたにもかかわらず、星はまだ見えていた。ほんの一瞬、村の上を流れ星が横切った。まさにそのとき、少年は扉を開けた。タツがかつて、額縁を見に行ったときに昔の家の扉を開けたのと同じように、同じ気持ちで、同じ恐れを抱えて……
「この部屋、前の俺の部屋と同じ広さだと思う。」
タツは窓の縁に腰かけていて、月明かりが背中を照らしていた。少年はベッドで眠っており、扉は閉まっていた。タツは、少年に話しかけようとしているにもかかわらず、一人で喋っていた。
「まあ、家具を少し減らしたら、もっと広いかもしれないけど。」
それから窓の外に目をやった。そこではまだ、大きな焚き火の周りで、人々が踊ったり、食べたり、遊んだりしていた。
「なあ……」
「俺、お前が羨ましいんだと思う。」
そのあと、少年のほうへ視線を戻した。
「たとえお前がいろんなことで混乱してるように見えても、みんなお前のことを気にかけてるみたいじゃないか。」
そう言って、タツはかすかな笑みを浮かべたが、それはほんの数秒しか続かず、すぐに笑みは消えた。
「まあ……それだけでお前の人生がいいものだってことにはならないけどな。」
「むしろ、お前のほうが苦しむ可能性が高いってことが、はっきりするだけかもしれない。」
「少なくとも、俺はそう思う……」
少年の部屋の扉を見ながら、言った。
「この村に来てから、みんなお前のことを心配してるみたいだ。少なくとも大半は。それに、さっきあの男が言ってたことには、俺も賛成だ。家族を心配させちゃいけない。もしかしたら、何か悪いことが起こるかもしれないんだから。」
自分が何を言ったのかに気づくと、少年のほうを向き、両手を振り、首を横に振りながら慌てて言った。
「あ、い、いや、何か起こるって言ってるわけじゃないし、起こってほしいわけでもないんだ。ただ、ほら……人生って予測できないだろ。」
だがそのあと、腕を下ろし、また軽く微笑んだ。
「はは……誰を騙してるんだか。お前は俺の言うことなんて何も聞こえてないのにな。」
「でも……それでも」
「お前のことで一つ知りたいんだ。たった一つだけ。」
「どうやったらそんなふうに生きられるんだ?」
「何を間違えなかったんだ? 何をしたらみんながお前のことを心配するんだ? みんながお前を気にかける理由は何だ? どうして?」
「だが、それこそが当たり前であるはずではなかったか、若者よ?」
突然、先ほどの木が部屋の真ん中に現れた。まるで最初からそこにあったかのように。
そして、小さく驚いたタツは、部屋の中央のほうへ振り向いた。
「え?……ああ……お前か。」
素っ気ない口調で、タツはただ、座っていた姿勢を整えるだけだった。
「驚きだな、若者よ。」
「本当に、行くべき場所にたどり着いたのだな。一時は、逃げ出すかと思ったぞ。」
「わかるだろう、若者よ。」
木はそう言うとき、少年のほうを見たが、すぐにタツへと視線を戻した。
「それ、どういう意味だよ?」
「あいつは怯えてて……混乱してたんだ……」
言葉にしようとしながら、手を少し動かした。
「まさにそのことなのだ、若者よ。」
木はただ微笑みながら話していた。
「あ……もういい、くだらない話は。何の用だよ?」
「よろしい。ゆっくり行こう、若者よ。」
それから木は、数秒間ため息をついた。
「ふむ。」
「見たものについて、どう思った、若者よ?」
「この場所のことか? 全部?」
「そうだ、若者よ。」
「今まで見た中で一番変な夢だな。間違いなく、俺が読んだどの漫画よりもイカれてる。」
「なるほど、若者よ……」
「ここは村みたいだし、ここの人たちはみんなすごく親しそうで、みんな目標があって……それに……みんなそれを大切にしてる。」
暗い瞳で、タツは視線と腕を少年のほうへ向けた。
「少なくとも、そう見える……」
「ああ…そうだったね。彼は本当に素晴らしい少年だ。父から剣術を学び、両親を誇りに思ってもらえるよう、生涯を訓練に捧げてきたんだ。」
「すべて彼自身の努力によるものだと言えるだろう、若者よ。」
「だが今の彼は、少し混乱している。まるで別人のようだ。」
「それで、何が言いたいんだ?」
それまでの出来事をすべて目の当たりにした後でも、タツは相変わらず同じ意見だった。そう言って、彼は腕を組むと、その木をじっと見つめた。
「見ての通り、この少年は皆に慕われている。子ども、大人、老人、皆にだ。それは称賛に値するものだ。それを手に入れるためなら、人はどれほどのものを差し出すだろうな、若者よ?」
「それでお前は……」
「そこまでにしとけ、何が言いたいかはもうわかってる。」
腕と首の両方を振って否定のしぐさをしながら、タツは言った。
「それに、そんな話をしても無駄だ。いい人生についての俺の考えは、もう決まってるって知ってるだろ。」
「本当にそうか、若者よ?」
「ああ。」
「ならば、お前は以前の人生に戻りたいということだな?」
「お前を慕っていたのは、あの三人だけだった人生に。」
その言葉を聞いて、タツは心を閉ざした。表情は、髪の影に隠れてしまった。
「まあ、本当に慕われていたのかはわからないがな。何しろ、親もなく友もない悲しい少年には、四方八方から“同情”が降り注ぐものだろう、若者よ?」
両手を強く握りしめ、確信をこめて言った。
「知ってるみたいに話すのはやめろって、もう言っただろ……」
「私はお前自身よりも、お前のことを知っている、若者よ。」
「お前が、自分の送っていた人生を好いていないこと、そして一度も好いたことがないことを知るには、十分なほどにな。」
「お前は、二度目の機会のためなら何でも差し出すだろう。同じ過・ち・を繰り返さないためなら、何でも差し出すだろう。」
「彼の人生のためなら、何でも差し出すだろう、若者よ?」
「はは……」
タツは笑い始めた。最初は息が漏れるだけのような単純なものだったが、時間が経つにつれ、ちょっとしたあいだ続く笑いの連続になった。
木はただ、彼を見つめるだけだった。
「バカバカしい。」
タツの言葉を聞いても、木は黙ったままだった。
「やっぱり、お前は何も知らないんだな。俺が経験して苦しんできたことはあるけど、今はまったく違うんだ。当然だろ。わかりきってる!」
「あいつは」
少年を指さし、それからあざ笑うような態度で木に視線を戻した。
「最高の人生を送れるのかもしれない。でも、それは俺の問題じゃない。あいつの人生なんてどうでもいい。ここにいる全員どうでもいい。俺が気にするのは自分自身と、俺を気にかけてくれる人たちだけだ。それだけだ。」
「もしお前が、あいつの人生のほうが俺のよりいいって俺を納得させられると思ってるなら、時間の無駄だ。だって、あいつの人生が俺のよりいいのは明らかだからな。」
「それに、俺はそのままであってほしいと思ってる……」
後ろを向き、窓のほうを見て、心からの笑みを浮かべた。
「だって、俺がこれまで経験してきたことがあっても、今はまったく違うんだ。俺には理由も、目標も、俺を気にかけてくれる人たちもいる。仮説と真実一つで、それを台無しにはさせない。ああ、それだけは絶対に。」
「妙だな……こうなるはずではなかったのだが。」
タツのこの長い言葉のあと、木はただ独り言を呟いた。それに、タツは振り向き、驚いて木を見た。
「まあいい。同じことだ。うまくいく。」
「何の話をしてるんだ?」
タツは言ったが、その顔にはもう笑みはなかった。
「お前はまだ、あの面白い人生に戻りたいと思うかもしれない。だが、ひとつ小さな問題がある。」
「え……?」
突然、タツは夜の高い通りに立っていた。
「さあ、調べるがいい、若者よ。」
驚いて、タツは隣にいた木のほうを振り返った。木はずっとそこにいたようでもあり、同時に、今初めてそこに現れたようでもあった。
「なっ……何だ……?」
少し先まで歩いてみると、通りの隙間で赤みがかった光が点滅しているのが見えた。さらに近づくと、鉄の柵が壊れているのに気づいた。まるで何かがそこを突き破って、下へ落ちていったかのようだった。
下を見た瞬間、彼の視線は愕然としたものに変わった。そして目を大きく見開いたまま、言った。
「あれは……ダイキの親父さんの車……」
「そんな……そんな……そんな……」
それを見ると、彼は車に近づこうとし始めた。少し厄介な道だった。まっすぐな下り坂で、茂みや木々が邪魔をしていたが、それほど多くはなかった。
「そんな……そんな……はずない……」
車からある程度の距離まで来ると、タツは割れたバックミラーの中に顔を見た。距離のせいで誰だか判別できなかった。だがそれが、彼がさらに前へ進む理由になった。
彼は呆然としたまま、車に向かって走り出した。十分近づくと、潰れたドアを何度も開けようとしたが、うまくいかなかった。
どういうわけか、車のガラスはそれほどひどい状態ではなく、いくつかひびが入っているだけだった。車の前部は完全に潰れていた。車自体は、木にぶつかっていた。
「開けろ。」
タツは何度もガラスを殴りつけ始めた。
「開けろ……」
「開けろ……」
「開けろ!」
そして最後の一撃で、ガラスはいくつもの破片になって砕け散った。
一瞬の迷いもなく、タツはガラスの空いた隙間から腕を入れ、内側からドアを開けることができた。そうした瞬間、一つの体がドアを伝ってタツのほうへ滑り落ちてきた。
それはダイキだった。額から血を流し、顔色は青白かった。
歯がきしみ、涙がタツの顔を伝って流れ始めた。
彼はひざまずいた。
固まったまま。タツは車を見つめていた、ただ車だけを。タツの中で動いているのは涙だけだった。だがそのとき、視界の隅で緑の光が点滅し始めた。
ゆっくりと、本当にゆっくりと、タツは光のほうへ首を向けた。
そして、後部座席の窓を見たとき。彼は、決して考えもせず、夢見もせず、想像もしなかったものを見た。
彼は、彼を見た。自分自身の体を。同じく血を流し、青白く、ただ、ネックレスを握っている。
すべてが真っ暗になった。
タツはまだひざまずいていたが、もう先ほどのように車の近くにはいなかった。
突然、木の声が彼の耳に響いた。
「物事はそういうものだと、ただ受け入れればいい」
「お前はそう考えているのだろう、若者よ?」
「俺は……」
彼の頭の中を、過去と未来で友人たちと過ごした、あらゆる幸せな瞬間が駆け巡った。
「私……死んだの?」
「そのようなものだ。厳密にはそういう仕組みではないが……そう考えてよいだろう。」
木は、ところどころ間を置きながら言った。
「あいつらも……なのか……?」
ゆっくりと、タツは腕で目を覆い、泣き出しそうな表情で、肺が耐えられる限りの空気を吸い込んだ。
「申し訳ない、若者よ。だが、それが運命なのだ。」
数秒間、涙をこらえたあと、タツは一気に息を吐き出し、ゆっくりと顔から腕を下ろした。顔は乾いていたが、涙の跡が残っていた。
「それで……」
「これから……どうなるんだ?」
「眠っていた少年を覚えているか?」
「奇妙に思えるかもしれないが、あれはお前だ。車の事故のあとの、お前だ。」
「ああ……そうか……筋が通るな。あいつ、迷ってた……」
タツはもう、表情を伴って話してはいなかった。少なくとも、そう見えた。
「これが、お前がずっと望んでいた人生だろう、若者よ?」
「ああ……そうだと思う……」
「よろしい……ならば、今お前にはその機会がある――」
木が言い終わる前に、タツが遮った。
「いや……」
「いいんだ……いいよな? 俺は運命をあるがままに受け入れなきゃいけない……」
「でも……この人生は俺のものじゃない……それに、他の誰かの運命を受け入れることなんてできない。」
「機会を得ることはできるかもしれない。でも、俺はその機会を頼んだことは一度もない。」
そう言うと、彼は木を見た。わずかな希望を放っていたその瞳は、もう何も放っていなかった。
タツはひざまずくのをやめ、ゆっくりと立ち上がった。
「これは夢じゃないんだよな?」
「いや、夢ではない、若者よ。」
タツは約5秒間、何も言わずに木を見つめていた。やがて:
「俺はこの人生を返す。いいな?」
「こんなの、ただ受け入れるなんてできない、わかるだろ?」
「それに、ちょっとおかしいよな。前に読んだ本みたいだ……」
笑ったが、心からの笑みではなかった。
「やっと、誰かのために何かいいことができるのかもな。」
「それを俺はやるつもりだ。」
「ああ……若者よ。」
「お前は何度も曖昧な態度を取った。それはお前自身の特徴なのか?」
「何のことかわからないな。」
二人は微笑みを交わした。
「あれを見たあとで、そのように行動するとは思わなかった。これもお前の人生哲学の一部なのか?」
「わからない……」
「だが、人生をただ返すというわけにはいかぬのではないかな、若者よ。」
「お前の魂は、すでにあの体に囚われている。握手一つで物事が解決するわけではない。」
「じゃあ……返すには、何をすればいいんだ?」
「わからぬ。本当に、わからぬのだ。それはお前が自分で見つけねばならぬことだ。」
木が話すあいだ、タツは顔に残った涙の跡を拭った。
「お前はあの少年の体で目を覚ますことになる。彼の名はサトゥ・ガケン。」
「彼は父親と共に、生涯をトレーニングに捧げた。フェンシングアカデミーに入学するためだ。父親がずっと抱き続けてきた夢を追って。」
「簡単だと思うな。何しろ、学院に入りたいのは彼だけではないのだから。」
「なんで俺を助けてくれるんだ?」
タツは尋ねた。
「それは気にするな、時が教えてくれる、若者よ。」
「最後に一つだけ。自分でものごとを複雑にしすぎるな。」
「幸運を祈る、タツ。」
二人が遠ざかっていくように見えたとき、木はそう言った。
「最後にもう一つ聞いてもいいか?」
木は彼を見て、彼が言うのを待った。周囲は一秒ごとに明るくなっていった。
「なんで、俺なんだ?」
木はただ微笑んだ。そして、すべてが白くなった。
ᖯ ᥣ ᥱ ᥉ ᥉' — 異世界の祝福
◇◇◇◇◇◇◇
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!! このエピソードでプロローグは完結です。わかってます、わかってます、プロローグにしてはかなり長いですよね。でも、タツが感じた混乱を、あなたにも感じてほしかったんです、わかりますか? なので、改めて感謝します。
出来事の流れは少しわかりにくいですが、うまくつながっています(私の意見では)。未解決のままの出来事もありますが、先のほうで回収されます。
物語はこれから、世界の仕組みの展開に重点を置く方向へ進んでいきます。プロローグをタツの心理だけに完全に絞ったのは、しばらくのあいだタツの成長をあまり気にせずに、他のキャラクターも掘り下げられるようにするためでもありました(とはいえ、タツもどのみち成長していきますけどね、はは)。
あ、そうそう。考えを変えました。以前は「これからは短めのエピソードを投稿しよう」と思っていたのですが、よく考えた結果、エピソードは私が「ここだ」と思ったところで終わらせることにしました。なので、次回からはもっと長いエピソードを期待していてください!!
もしこの作品が本当に気に入って、続きを読みたいと思ったら、お気に入りに追加してください。読者の皆さんがいることを知り、とても嬉しく思います。そうすれば、新しいエピソードが公開されるタイミングを皆さんも知ることができますし、「ᖯ ᥣ ᥱ ᥉ ᥉' — 異世界の祝福」を応援していただけます。
何から何まで、ありがとうございました!




