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あの日消えたみんなが配信をしている件 〜集団失踪者のダンジョン攻略、コメントだけが命綱です〜  作者: にぎりウニ


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17/17

【#16】振り返ってみた

 目を覚ますとそこは見慣れた拠点の部屋だった。二つ並べたベッドのうち、隣のベッドでは、レオがスヤスヤと寝息を立てていた。胸が上下している。

 それを見て、ようやく俺は息を吐いた。


「……生きてる、でいいんだよな」


手を伸ばしかけて、やめる。


「俺たち、死んだんじゃ……」


 鮮明に蘇る痛み。熱さとも言える燃やされたような刺激は、今でも身体が震えるだけの恐怖を鮮明に刻み付けていた。


 あの時自称神との会話もあまり深く理解していない。つまり自分が帰る世界が存在する可能性を持った人間を育てるためにダンジョンを、いや、この世界を作ったと言っていた。

 とんでもないエゴイズムが込められた箱庭ゲームだと俺は思った。視聴者も俺も概念……急に世界5分前仮説みたいな話を持ち出してきやがって。ファンタジーかと思ったら哲学SFでしたってそれめちゃくちゃ人選ぶジャンルだぞ。


「まぁだけど、観測が作る世界か……」


 と、ひとりごちる。まだちゃんと理解はしていないが、つまり俺たち一人一人は自由意志を持った物語という事か。なんかちょっと違う気もするけど、検閲みたいな事でもない限りあの自称神が介入してゲームを壊すなんて事態にはならなそうだ。


「検閲か。そういや皆はどうなってるんだ?」


 俺はふらつきながらノートパソコンに近寄り掲示板を立ち上げる。ゴーレムを起動するとむしろこちらに説明を強いられそうで今は遠慮したい気分だった。アイツの言う通り1層をクリアしたのであれば見える情報も増えているだろう。


「あービンゴか」


”死んだ人はとりあえずこちら part2”


————

001:名無しのプレイヤー

やあ(´・ω・`) ようこそ、バーボンハウスへ。

このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。


このスレッドが検閲されずに見えてるって事は『死んだ』んだな?

一先ず乙カレ。


詳しくは前スレを参照する事を勧めるが、

死に方によっては混乱しているだろうから深呼吸でもして一度休んで来い


このダンジョンで明確な死は訪れない。

1層クリア者なら「魂のコンテニュー」で通じるだろう。

ダンジョンそのものがアイツの能力だから、ここでの死は肉体的な死ではないという説が有力だ。


未クリア者ならそういうもので一先ず理解してくれ。

死ぬときの痛みはそのまま普通に死ぬほど痛いし苦しい。

でも目覚めたらここだ。今のところ分かっているのはそこだけ。


このスレは考察だとかに使ってもいいし、心の安寧を保つ事に使ってもいい。

~~~~

008:名無しのプレイヤー

ちなみに検閲されるだろうから正直に聞くけど、

神にあった奴いる?


010:名無しのプレイヤー

>>008

俺は会ったし話聞いた。

わけワカメだったけど、このダンジョンは”ろ過装置”で俺たち=魂を育て

スキルとかレベルとか眷属とかあーだこーだして、

成長したら(ダンジョンクリアしたら)新しい世界を作ったり、

異世界転生したりするって解釈した。


あの自称神はそれを観測して日本?て所に近い世界から(省略)可能性を拾って

復元するなり帰るなりしたいんだと思われ。

まぁここは推測。てか分からんしあんま俺たちに関係なさそう


015:名無しのプレイヤー

>>010

なるほどなそういう解釈もあるか。

いやそういう解釈で正しいのか?


なんだめっちゃカジュアルだな。バカのフリしてめっちゃ頭いいぞお前


016:名無しのプレイヤー

いや、こういうキャラでもやってなきゃ平静保てないでしょ。

ここが何スレか忘れたのん?


あんま人来ない事が救いだよね。スレの速度的に。


———


 はぁ~なるほどな。やっぱりどこいっても頼れるのはインターネットだわ。


「ん……ううん。悠真? 悠真!」


 ベッドで寝ていたレオが飛び起きて駆け寄ってきた。生きていたという実感が確証に変わり、安堵の気持ちが胸にあふれる。


「おはようレオ。ボス討伐よくやったな」


「でも俺! 悠真の事守れなくて」


「んな事気にすんな。俺だってお前を守れなかった。反省はお互い様ってことで、二人でこれから強くなろう」


 俺はパタリとノートパソコンを閉じて、キッチンに向かう。その時に視界の端に見えたが荷物もどうやら戻ってきているようだ。

 あの時居たのがボス部屋だから戻ったのか、身に着けていたから戻って来たのか、そもそも戻るシステムなのか。

 ただ検証するつもりにはならないよな。あんな痛い思いは出来れば二度としたくない。


 ゲームみたいだけどゲームじゃない。俺が娯楽として読んでいたあの小説がいざ自分の身に降りかかるとゾンビアタックだとかそういう戦法は気軽に取れないものだなと思う。

 自称神が俺のこれを物語だと言っていたとしても、そんなことはどうだっていい。

 俺にとっては、これが現実だ。


「腹減ったな。なんか飯でも食うか」


 冷蔵庫のモニターを確認すると、今のポイントは32000ptあった。1日中配信してた上にキャンプ飯とボス戦だ。相当な注目を浴びていたようだ。


 メニューは何にしようかな。吸血鬼って何食うんだ? 今更ながら悩ましい。オムライスは刷り込み好物みたいなものだし、同じものを作っても芸がないだろう。


「ん~あれにするか」


 俺は冷蔵庫のモニターを使っていくつかの食材を購入した。


「まずは、下ごしらえだな」


 購入した鶏肉を一口サイズに切り、醤油と酒、にんにくとショウガで作ったタレに漬け込む。あれ? 吸血鬼ってにんにく大丈夫なのか? ちょっと確認するか。

 俺はカウンター越しにレオへニンニクのチューブを見せる。


「おーいレオ。これ匂い強いんだけど大丈夫?」


「ニンニクだろ? 別に大丈夫だし、あと吸血鬼って匂いでニンニク嫌いなわけじゃないから」


 へぇ~そうなんだ、知らなかった。まぁ大丈夫との事なので引き続き調理。

 漬け込む間、薄力粉と片栗粉を1対1で混ぜ合わせて行く。長年の研究から、なんだかんだ1対1でいいかという研究結果が出ているのだ。


 もう何を作るか分かっていると思うが、鍋に油をすこし深めに注ぎ加熱する。いつもならここで米を仕込み始めたり、付け合わせを仕込んだりするのだが、ワンボタンで出来上がりが購入出来るので今回は割愛だ。キャベツの千切りが普通に売っていた。

 このダンジョンで手に入れた唯一のチートだよな。今のところ何も恩恵なんかないし。

 そういやなんだかんだスキルとか探索アイテムとか深くは見てないな。また後でそれは見ようかな。


 よし、漬け込み時間はこんなものだろう。本当は半日くらい行きたいが腹ペコだ。

 タレにつけた鶏肉に粉をまぶして、油の入った鍋に投入していく。コツは粉を付け過ぎないで、なんなら叩き落とすくらいの気持ちでいる事だ。油吸ってべちゃべちゃになるんだよな。


 箸で上手く浮いた鶏肉を転がし少し色づいたあたりで一度上げる。油を切る網がないのでダンジョン飯の時に利用した網の再利用だ。シンクに網をかけてそこにあがった鶏肉を乗せる。

 くぅ!すでに美味そうだ。だがこれではまだ半生のものもあるので、余熱で熱がじんわり中心に行くように置いておく。


「なぁレオ、俺が死んだあとってどんな感じだったんだ?」


 カウンター越しの雑談にしては少し重たいか。まぁでもいつまでもしんみりしててもな……俺の好きな愛読書に『本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ』と記されている。


「う、うーん。悠真の光魔法で回復出来たから魔法で倒した」


 あまり語りたくないのか言葉数が少ない。というか要領を得ない。


「なんでお前まで死んだんだよ」


「なんだよ! なんかデリカシーないよ! え、開き直ってるの?」


「まぁもういいかなって済んだことにしても。今おれら生きてるし」


「……相打ちになったんだよ。影から突撃したのはいいけど仕留めきれなくて、殴られて咄嗟に魔法を使った」


 しぶしぶとレオが説明する。二度目だが影潜り上手くいったのか、それに俺の光魔法も。なるほどな。


「なるほどな……よくやった。ありがとうな。お前のお陰で俺は、よくわかんなかったダンジョンの秘密だとか色々知る事が出来た。影潜りもホントすげぇな」


 素直に褒めてみる。レオはその言葉を聞いてうつむいている。表情はこちらからは見えない。


 そろそろかな? 俺はきつね色未満くらいになった鶏肉を再度熱した油に入れる。先ほどより少しだけ高めの温度である。

 やっぱり二度揚げなんだよね~コツはさ。すぐに色が変わるので冷蔵庫から取り出したキャベツの千切りを大き目の平皿に盛ってそこへ二度上げした肉をドスン。

 油切れが充分じゃないがまぁいいだろう、若さで勝負だ。


「よし! 出来たぞレオ」


 完成したそれをカウンターに置いて、2人分の茶碗にご飯をよそる。即席の味噌汁があったのでpt購入し、椀に湯と注いで完成だ。


「……今日のごはんはなに?」


 探索の振り返りについてこれ以上言葉を交わす必要はないとレオも感じたのだろう。食事の話題を振ってくる。やっぱこれくらいの温度感がいいよな。

 

「唐揚げって料理だ。熱いからやけどすんなよ」


「わかった! いい匂い!」


 よしよし、お互い切り替えられたな。やっぱり飯は偉大なのである。


「「いただきます!」」


 レオと俺は同時に唐揚げにかぶりつく。サクサクとした衣の下には弾力のあるもも肉。

 サクッぐにゅっと楽しい歯ごたえで押し返し、隙間からじゅわりとあふれる肉汁。鼻に抜ける漬けタレのほどよいにんにく風味が食欲を刺激する。


「な、なんてジューシーなんだ」


「うっまい! うまいよ! 悠真!」


 あまりにも美味い。ご飯が進みすぎる。醤油とサクサク衣の香ばしさがガツンと脳みそに染みる。


「おかわり!」


「自分でやれ。やり方わかるだろ?」


 そう言われて、ドタバタとキッチンに茶碗をもって走る王子様の背中を見ながら思う。  やっぱ俺たちはこういうのが性にあってるよな。

 冒険の続きはもう暫くこの幸せをかみしめてからでいいか。

 そんな事を思い、俺もキッチンへと向かうのであった。


ひとまず。本稿を1章完結のエピローグとして毎日投稿をストップします。

ここまでお読み頂き有難うございます。


現在2章と同一世界軸の別作品を平行して執筆中となりますので、

また投稿が再開されたらお楽しみ頂けますと幸いです。

是非感想などで、次回の投稿が2章の続きか別の失踪者での作品かお寄せ頂けましたら

非常に執筆の励みとなりますので、参考にさせてください。

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