表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの日消えたみんなが配信をしている件 〜集団失踪者のダンジョン攻略、コメントだけが命綱です〜  作者: にぎりウニ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/9

プロローグ

 キンッ! 


 甲高い金属が触れ合う音が薄暗い通路に響く。今俺の目の前にいるのは緑色の体躯と長く発達した耳鼻を持った”バケモノ”だ。俺の腰ほどの背丈だが力は強く素早いし、何より武器としてその手にはこん棒を持っている。

 なぜ一見木製にしか見えないこん棒と俺の短剣がぶつかって金属音がするんだ?

 

「はぁ……少し前なら部屋でゴロゴロSNSを眺めてたのにさ。何が嬉しくてこんな薄汚いモンスターと戦闘なんかしてるんだよ」


 そう嘯きながらも俺は油断なくそのバケモノとの間合いを図る。当然だが俺は元の世界で刃物なんて包丁くらいしか手にした事はないし、こんな小汚い二足歩行の生物を捌くのは未経験だ。


 ザッ


 姿勢を低くしたモンスターのサイドステップ。と見せかけて少し詰まる間合い。こいつ上手い! ……上手いのか? 俺は素人だしそんな事は分からん。でも驚かされたのは事実だ。 


『おい、腰が引けてるぞ!』


 俺の後ろをフヨフヨと浮かんでいる、ピンポン玉のような大きさと形をした何かが話しかけてくる。何かというか俺のゴーレムなんだが、何で出来ているか不明なので何かである。


「ちっ、見ている側はスポーツ観戦気分だろうよ」


『右から来るぞ!』


 反射的に右から迫るこん棒を不格好なバックステップで避ける。ちっ、憎たらしいがヤジに助けられた。集中が切れている証拠だ。

 コイツの攻撃は正直避けられないほどじゃあない。だがまだ躊躇する。俺は攻撃出来るのか? 生き物であるコイツを、武器はある、大丈夫だ。クソ、心臓の音がうるさい、息も切れてきた。だけど勇気だけが出ない。戦う勇気だとか立派なそれじゃない。命の加害者になる事が怖いのだ。


「クソッここにきてからこんな事ばっかりだよ」


『おい、また油断してるぞ!』


 うるせぇ。今度のは見えてる。まったく見ているだけの奴ら(・・・・・・・・・)は気楽な物だ。

 このゴーレムには自我がない。じゃあなんでこんな流暢にしゃべっているかと言うと、コイツはただのデバイス。

 コイツを通しておれのダンジョン攻略が元居た世界で配信されているからだ。

 コイツの発言はつまり視聴者コメントをただ読み上げているだけなのである。

 振り上げられたこん棒を見ながら、後ろに下がる。いや下がれなかった。いつの間にか壁を背中にしていたようだ。焦って足元が絡む。


 ドサッ


 俺は不格好に尻もちをついて、自分に襲い掛かるだろう衝撃に備えて覚悟をした。よかった。少なくとも俺は悪くない。いや逆か。悪いのは俺だけだ。なんにせよ気楽な最後だ。

 しかし衝撃は意外にも手元に訪れた。持っていた短剣に生々しい肉の感触。直後に襲い掛かる生暖かい液体のシャワー。


 恐る恐る目を開けると、俺ががむしゃらに構えていた短剣の柄を胸から生やし、バケモノが絶命していた。柄が生えているんじゃない。俺の持った短剣が偶然刺さったのか。と、不思議と冷静に現実を受け入れた直後、バケモノはサァと光の粒子になり消えた。


「勝った、わけじゃないな。終わっただけだ」


『いまのは危なかったな』

『ちょっと泣いてて草』

『なんか語ってら』

『意外と余裕あるか?』


 はぁ、こんな所来てまでインターネットしてんのは救いなんだか救われないヤツなんだか。コメントに指摘されている通りどこか俺は余裕があるのかもな。身体が動かないのも本当、攻撃するのが怖いのも本当。でもそれを演じていると、心のどこかに嘘があるのかもしれない。そうあるべきなんだって。

 今日はこんなもんか~と、自分が来た道を戻りながらひとりごつ。


「あーあ、俺の人生変わっちまったなぁ。俺もそっち側だったのにさ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ