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十二湖は、今日も蒼い ―八峰 遥の天運―  作者: 菜乃花 薫


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13/33

「十二湖は、今日も蒼い」12

「遥さん、学者さんなんですか」


陽菜ちゃんが感心したようにこちらを見つめる。


「学者と言われるけど、フィールドワークの便利屋よ」


ステアリングから左手を放してひらひらと振ってみせる。


「でも、かっこよさそうです。今だってちゃきちゃきと決めてくれてますし」


「う~ん、性分だからかしら」


そんなことを言ってるうちに、車は二ツ井の国道7号線に乗っていた。


「あれ?高速降りたんですか?」


「住宅も見えるし、そう思うわよね。

この道路、国道のバイパスみたいなもので、もう少し走ればまた専用道に乗って大館北ICまで走れるわ」


「へぇ~、詳しいんですね」


「時々走るからね。

でもこの秋田道って工事完了してから全然乗ってないから、違和感があるわ。

7号線に降りた場所、知ってる所より北だもの」


つい最近工事が終わった道の駅まで伸びていたから、非常に違和感があった。

まあ、所要時間が短縮されてスムーズになったのだからありがたい話だけれど、こうやって工事中の路線が繋がると、慣れるのに一苦労する。


「さて、大館市を高架から見ながら走るわよ。

降りたら後は国道7号をひたすら北上ね」


「遥さんと夜景見ながらのドライブ、いいですね」


窓の外には徐々に灯りが増えてきた。


少し経って自動車道は2車線になり飛ばす車も多いが、クロストレックは淡々と制限速度で走り続ける。

燃料メーターはさっきから減ってはいないように見える。


「カール?この時間の給油は大鰐を過ぎないとできないけど、大館の町中に戻って給油していったほうがいい?」


『いや、今の自動車道走行でおおよその燃費と速度、出力の相関は把握した。

イレギュラーがなければ陽菜を家に送り届けてから君の家に着いても十分余裕がある』


「うそでしょ?カタログ値19以下で満タン納車でもなかったのに?」


『嘘は言わないが、あくまで計算上だ。

パンクや故障など、予測しえないトラブルは除くぞ』


「……怖いこと言わないでよ。納車後半日経ってないのよ?」


『壊れる時は壊れる。これは機械モノの鉄則だよ、遥』


「機械自身が言うと説得力あるわね」


聞いていた陽菜ちゃんが笑い出す。


「どうしたの?」


「遥さんとカールって、まるで漫才みたいなんですもの」


『漫才とは、芸能のジャンルでいわゆるお笑いのことか』


彼女はコロコロと笑いが止まらない。


「返しが天才的ね。あんた、お笑いの素質あるわよ。

ほら、陽菜ちゃんが泣き笑いしてるわ」


陽菜ちゃんが涙をこぼしながら口を覆って笑っている。

楽しそうなのはなにより。


2人プラス1台で話をしながら小一時間。

鯖石交差点を右に曲がってショートカットルートを取る。


深夜帯だからパチンコ屋もショッピングモールも電気は消えている。

ファストフード店やコンビニ以外は大分昼と様相が異なるのは当然。


―こういうドライブも久しぶりね。


最近は近場で昼ばかりのドライブ。

こんな時間に車を走らせる機会はなかなかなかった。


「あと1時間くらいで青森に着くと思うけど、陽菜ちゃん、休憩はどう?」


「大丈夫です。遥さんこそ、ずっと運転していて疲れてませんか?」


「ありがと。カールがあれこれしてくれてるから楽すぎて眠くなるわ」


そう言ってステアリングを指で軽くトントンと叩く。


「人間が運転してたらここまでスムーズには走れないわ」


『賞賛の言葉と受け取っておく』



平川市から黒石市経由で旧浪岡町まで戻った。

ここはもう青森市内だが、もうひとつ、大釈迦の峠を越える必要がある。


カールの本体がある梵珠山を遠目に見ながらだが、真夜中の山では何も見えない。


峠を降りて旧道に乗り換え、自動車ディーラー街で曲がり国道に乗りなおす。


「あと20分かからず家に着くわよ」


陽菜ちゃんの話では、会社の奥に自宅が繋がってるそうだ。


安潟組には行ったことあるけど、流石に奥に家があるとは知らなかった。


繁華街の中にある会社が見えた。

夜間だからゲートが閉められているので、ハザードを点けて道路に止める。


「さて、家に着いたけど念の為玄関前まで一緒に行くわ。

場所柄、何かあっても困るし」


「本当になにからなにまで、ありがとうございました」


陽菜ちゃんが頭を下げた。


「だから、いいってば。私も楽しかったし」


そう言い終わると、助手席のガラスを誰かが軽くノックした。


「誰?」


ドアロックはNレンジなので解除されていない。

外部からは開けられないのを確認する。


「あ、善知鳥(うとう)さん、もしかして迎えに出てこられたのですか?」


「お嬢様、そして八峰様。おかえりなさいませ。

社長がお待ちです」


「お父さん、心配してくれてたのね。早く戻って顔を見せてあげたら?」


そう言うが早いか、善知鳥さんがこう言った。


「八峰様、よろしければ少しお付き合いいただけませんでしょうか?」

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