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八ツ色物語〜失われたヴァイス属性魔法を駆使して平和を掴み取ってみせる!〜  作者: 君影 ルナ
いっしょう

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1-63 色の変化(2)

「また……変わった……?」


「ん。微妙に、だがな。変わっているかもしれない、と思って観察しない限り気がつけない程微妙にな。」


 そんな……魔法を使うたびにコロコロと目の色が変わっていたら、他の人も日によって変化があってもおかしくはないだろうに。でもそんな人の話は聞いたことがない。


 という疑問はラナンキュラス大先生がぶち破った。


「いいか、このカルテの患者は多分ヴァイス()属性持ちのモノだ。」


「……何故そう言い切れるんですか?」


「だってよく考えてみろ。オランジェ()属性持ちがいくらオランジェ()属性魔法を使っても、同じ色を重ねるだけ。それに対してエンレイは七色の魔法を扱えるから、使った魔法によって目の色が変わるように見えるんじゃないか?」


「な、なるほど……?」


「だがまあ、これについてはまだまだ分からんことが多い。どの色の魔法を使っても変わるのか、それとも一定条件をクリアした魔法の色に変化していくのか、それとも……」


 ラナンキュラス大先生がそこで言葉を止め、フム、と考え込んだ。


「ま、そこら辺はこれから実験なり何なりして明らかにしていけばいいか。ってことで、もう一度検査をしてもらう。一昨日とはまた違った色の変化だからな、もしかしたら数値にも変化があるかもしれない。」


「分かりました。このことはラナンキュラス大先生の良いようにお願いします。医療的な、専門的なことは私には分からないので。」


「了解。んじゃ手始めに腕出せー。」


…………


 身体的な検査を一通り終え、ラナンキュラス大先生は私を連れて中庭へと移動する。


「じゃ、今度は魔法を使って実験をしていくか。」


「はいっ!」


「色の変化が分かりやすい方がいいし、今の目の色の反対……所謂補色とかいうのを参考にしてみるか。ええと、そうだな。赤とか橙、黄色辺りだといいか。」


「その中だと赤色くらいしか使えないですね。」


「んじゃ、それで。」


 赤のライト魔法は一番最初に習得した簡単な魔法だ。対して黄色の閃光魔法は未修得。そして橙色は無い。そうなると赤色一択になる。


「では、使っていきます。」


 ポッと掌の上に明かりを灯すが、はて、何か変わったりしただろうか。


「……どう、ですか?」


「ウーン、一度使ったくらいじゃあ変わらないみたいだな。」


「じゃあ何度も使ったり消したりしてみます。」


「おー」


 それからは何度も何度も、それこそかつてないくらい赤のライト魔法を無意味に使い倒す。


 点けて消して点けて消して点けて消して点けて消して消して点けて……。


 だんだん自分が何をしているのか分からなくなるような錯覚に陥るが、それでも尚魔法を使い続ける。


 そしてきっと昨晩の魔法の練習よりも回数をこなしただろう頃合いで一度手を止めた。さすがに頭がおかしくなってしまいそうで。


「は、は……」


「何だお前、軟弱だなぁ。」


「いや、意味もなく魔法を点けて消すを繰り返していると脳みそがおかしくなっちゃいますって!」


「フーン、そんなもんか。」


「そんなもんですって! それで、昨日の練習くらいの回数はこなしましたけど、何か変化はありますか?」


「いや、全く変わらないな。」


「えー……」


 すごく頑張ったのに……。結果に結びつかないと分かると急にドッと疲れてきたような気がした。


「フム……色の変化は回数ではない、と。魔法の回数、つまり量ではないと仮定するのならば……質?」


「魔法に質ってあるんですかね?」


「あるだろう。今お前がやってみせたのがまさに質より量だったろう? そういうことだ。」


「なるほど……」


 練習という名目すらなく無意味に魔法を使うのではなく、きちんと意味を持たせて使え、ということか。それなら……


「色の判別が少し難しくなるかもしれませんが、青の治癒魔法を使い続けてみてもいいですか? 幸いと言っていいかは分かりませんが、ここには怪我人が多くいらっしゃいますし。」


「そう、だなぁ……ちょっと今は全体的にバタバタしていて、お前とはいえ外部の人間にウロウロされるのはちょっと、なぁ……」


「あ、そういえばそうでしたよね。すみません。」


 そもそもあの診察記録が置いてあったことが問題だったんだ。あまりにも今の私に必要な情報がピンポイントで用意されている気味悪さも拭えない。


「というか今更ですけど、侵入者を特定したりとかはしなくていいんですか? 私なんかに構っている暇とか……」


「そういうのは下の者に任せている。というかそうお願いされた、というか。今日の俺は急患が来ない限りここでドッシリ構えていればいいんだとさ。


わざわざあの診察室にモノを置いたことを考えても、今一番狙われている可能性のある人間は俺だ。だったら下手に一人になったりうろついたりしない方がいいってさ。


俺一人でオランジェ()属性数十人分以上の働きができると考えたら、俺を失うのはノコギリ荘に大ダメージだから、と。」


「そう、ですか……」


「そんでその間暇……ゲフンゲフン、時間の余裕があるからな。どうせ時間を使うなら効率の良いことをした方がいいだろう? それにお前なら俺と違ってガイスト討伐にも行っているし、何かあれば対処してくれるだろう。」


「用心棒的な?」


「そ。オランジェ()属性持ちはその魔法の特性からしても戦闘向きではないし、だからこそお前みたいなのがいてくれると、他の職員も安心するってんだ。」


「と言っても私、魔法で攻撃とかできないですけどね。」


「それはほら、常識的に考えて皆魔法で攻撃してくると思い込んでいるやつの裏をかけるって思えばいいだろ?」


「あー確かにそれは良い手かもしれません!」


 あのラナンキュラス大先生に頼られてる、と思うと少し嬉しい。いつも迷惑ばかりかけてしまっていたから、今回は助けになれるかもしれないと思えば俄然力が沸いてくるというもので。あと初めて認められたようで嬉しい、という気持ちもあり。


「じゃあ私、頑張っちゃいますよぉ!」


「ほどほどにしろ馬鹿。」


「はーい!」


「ったく……」


 仕方ないな、と言わんばかりにため息を吐いたラナンキュラス大先生。何か私の保護者みたいだ、だなんて言えばきっとどつかれるんだろうな。喉元まで出かかった言葉をなんとか飲み込んだ。


「ラナンキュラス様!」


 そんなほのぼのした会話を断ち切るように、職員さんが中庭に駆け込んできた。一気に場の空気が緊張で張り詰める。


「どうした。」


「それが……クロユリ様がおいでで……」


「……何かあったのかもしれない。通せ。」


「かしこまりました!」


 ラナンキュラス大先生の言葉を受け、職員さんはバタバタと急いで中庭を出ていった。


「一体何の用で来たんだ……?」


「その言い方……ラナンキュラス大先生が呼んだわけではないんですね。」


「そりゃーそうさ。わざわざクロユリサマをお呼びしてまで事を大きくしたくは無かったし。」


「そ……」


 やっぱりラナンキュラス大先生はクロユリさんのことが苦手なのかな? 会話する時も今も、少し声に棘がある気がするし。


「向こうも俺のことは苦手だと思うし、それでも来たというなら何かしらあるんだろう。」


「……悪い報告とかじゃなければ良いんですけどね。」


「うわ、そんな意味深なこと言ったら本当になりそうだからやめろ馬鹿!」


「痛っ! ラナンキュラス大先生の馬鹿力!」


「なんだとぉー?」


 と、いつものようなわちゃわちゃしたやり取りをしている間にもクロユリさんはここに来ていたらしい。


「……今、どういう状況?」


 本気で困惑した声で、私達に問いかけた。

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