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4.子供用キッチン

 私が子供の頃、テレビで子供用のキッチンを宣伝しているのをよく目にした。それは女の子たちの憧れの玩具だった。


 我が家の孫娘もおままごとセットでよく遊ぶ。そんな彼女を見ていて娘が呟く。

「この子にも買ってあげたいなあ」

 そう言って娘がスマホで検索している。私が子供の頃に女の子たちの憧れだった“あれ”をだ。

「買えばいいじゃない」

 妻がそう言うと娘は目の色を輝かせた。

「えっ! 買ってくれるの?」

 苦笑しながら私の顔色を窺う妻。どうやら、給金をせっせと運んで来る私にはそれなりに気を遣ってくれているようだ。


 これまでも娘は可愛い我が子に色んなものを買い与えた。そして、支払いはすべてこちら持ち。苦笑はするものの妻はまんざらでもない様子だ。財布を握っているのは妻なのだから私が文句を言う筋合いはない。妻が家計のやり繰りをちゃんとやってくれているのだから、妻が「いい」というのなら、いいのだ。そして、そうと決まったら行動は早い娘。


 数日後、“それ”は我が家にやって来た。

 私が帰宅すると、娘が彼女に言う。

「ほら、じいじに見せてあげな」

 母親のそんな言葉には耳を貸さず、彼女は可愛らしいキッチンに夢中だ。いったいどれくらいの時間遊んでいるのだろうか。周りには野菜や果物が散乱している。彼女はそれらを順番に鍋やフライパンに入れてはひっくり返して床にまき散らす。

「わぁ!」

 彼女が片付けてはひっくり返すのを繰り返すのは承知しているとは言え、せっかく片付けたものをひっくり返されるとがっかりもするのだけれど、その豪快な仕草にはかえって関心すらする。


 こんなに小さいのにキッチンに立つのは、やはり女の子だからなのだろうか。彼女が大きくなって手料理を振舞ってくれることを想像しながら、それまでは長生きしなくてはならないと思うのである。




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