1.おままごとセット
マジックテープがくっ付いた野菜や果物のおままごとセット。彼女はそれがお気に入り。
小さな手で小さな包丁を握りしめてりんごを切ろうとする。ところが包丁を切れ目に上手く入れられなくてりんごが転がって行く。
「うう、うう」
まだ単語にならない言葉を発して私の顔を見る。
転がったりんごを拾って彼女の前に置く。また転がって行ってしまわないように、今度は私が手で押さえておく。彼女は再び包丁をりんごに充てる。その包丁が切れ目に入るようにりんごの角度を調整してやる。今度は上手く入った。小さな手で力を込めてりんごを切る。見事にりんごを切ることが出来た。
「おー」
上手に出来たことをアピールする様に声を発して私の顔を見る。誇らしげな顔が可愛い。
「上手に出来たね。すごい、すごい」
頭を撫でて褒めてあげると、今度はトマトを手に取る。それを置いたら私の手を取る。どうやらまた抑えておいて欲しいらしい。そうすると上手に切ることができるのを覚えたようだ。私はまた同じように切れ目に上手く包丁が入るように角度を変えてやる。見事にトマトが真っ二つ。
「おー」
「すごいね。上手」
満面の笑みを浮かべて、今度はキュウリに手を伸ばす…。
遊び終わるとお片付け。
「ないないしようね」
一緒に箱にしまう。しまい終わると箱を持ち上げてひっくり返す。そして再び包丁とりんごを手にする…。
テレビの画面にはお気に入りの刑事もののドラマ。本当はこっちを見たいのだけれど、可愛い孫にはかなわない。気長に遊ぼう。