十八、色気の作戦
私は久しぶりに美咲と仁美と日曜日に遊んでいた。各々卒論はまだまだ終わらないが、たまには息抜きしようと昼からみんなでカラオケに来ていた。
「イェーイ!久々のカラオケたのしぃーっ!」
「本当、最高!」
「あ、私ハイボール頼むけど、2人は?」
私は2人にそう問いかけると、美咲はレモンサワーと叫び、仁美はカシオレでと手をあげた。私はかしこまりましたとモバイルオーダーでパパっと頼んだ。
「ってか、写真見たけど水河選手と知り合いってヤバいねー。」
そう言いながら美咲は自分のグラスを一気に空にした。
「私もまだ会ったことなかったから、香奈はタイミングよかったね。」
仁美は曲をポチポチ選びながら話してきた。
「本当に良かった!テレビで見た通り爽やかでカッコ……。」
私は仁美から朝比奈に伝わり、彼に情報が通るとヤバいと思い口をつぐんだ。
「……なんで、途中でやめたの?」
「そんなんで神山君、焼きもち焼かないでしょ?」
2人はケタケタ笑いながら話していたが、否定もできずに私は黙ったままでいた。すると2人は顔を見合わせてこちらに近付いてきた。
「え、マジ?あの無反応に近い、神山澄が?!」
「やだー!そんな、神山君、見たことない!」
お酒の力も入ってるからか、グイグイ2人がさらに近付いてきた。
「……いいよ、その話……ハズい。」
「かんちゃんも照れて可愛い~。」
「で、ちなみに神山君とは……どこまでいったの?」
「………………それが……。」
『うんうん。』
2人はキラキラした顔で頷いていた。
「………………手を繋ぐとこまでしか……。」
『うんうん………………え?』
「やっぱ!?そうだよね?!可笑しいよね?!」
「待って……香奈って付き合ってどれくらい経った?」
「2ヶ月過ぎました……。」
「かんちゃん、よくチューとか我慢してるね。」
「………だよね!?」
「香奈からしちゃえばいいじゃーん。」
そう言うと仁美は唐揚げを頬張った。
「でもさ、もしかしたらさ……。」
「ん?何?」
美咲も続いてポテトを頬張った。
「……したいとか……ない、人なのかなって……。」
『え?』
「プラトニック……っていうの?それなのかなって……。」
「マジか。」
「確かに、神山君ならあり得る。」
「だよねー!だって、今までそういう事に興味なかったから、今の関係で満足してるとこある気がして……。」
「かんちゃん、、たまってるね。」
「……2人とも引かないで聞いてくれる?」
「いいよ。」
「どうぞ。」
「……もう最近、会う度にムラムラしちゃってしょうがない……。」
『ほぉ。』
「だってあの顔で、あの身体だよ?!それに家だと眼鏡付けたり、しまいにはこの間なんて……。」
「何々?!」
「聞かせて!」
2人は興奮ぎみに聞き返してきた。
「シャワー浴びて、髪の毛濡らした状態で出てきたの……首筋に流れた水までガッツリ見てしまった。」
「きゃー!エロー!」
美咲は興奮しながら叫んでいた。
「それでいて、キスとかはしないくせに……スキンシップは多いから、隣に座るわ、手をつなぐわ、頭ナデナデするわ……生殺しがスゴい……。」
「神山君、天然クラッシャーね。」
仁美はストローをわざと咥えタバコのようにしながら話した。
「そりゃあ、巻頭雑誌、増刷の嵐にする男だわ。」
美咲も真似してストローを咥えながら言ってきた。
「それか私に魅力が、ない、のかなぁ……。」
私は自分で言ってて、切なくなってきた。
「いや!かんちゃん、諦めるのは早い!」
「そう?」
「ここは悩殺作戦実行しよう!」
「えぇ……悩殺?」
「そうだよ香奈!大体、香奈のスタイルは世の男はイチコロよ!」
「えぇ……大袈裟な。」
「そうと決まったらカラオケは中断だ!」
美咲がそう言ったとたん、オーダーしてたドリンクが届いた。私達はあと思いながらとりあえずそれは飲みきろうかと少し冷静になった。
――――――――――――
シャワーを浴びて頭を拭いていると、ロッカーに置いていたスマホが震えたので、俺はそれをチェックし始めた。開いてみたら香奈さんが今日の夜、そっちに行っていいかなという内容だった。今日は仁美さん達と夜まで遊ぶ予定だったはずなのになと思いながら、いいですよと返信した。
「なぁ、神山、これから飯行かね?」
「あ、すみません。ちょっと、無理です。」
「えー、だって青葉達遊んでるんだろ?」
「そのはずだったんすけど、何か切り上げてこっち来るらしいっす。」
「ほーん。なんだろな?」
「さぁ?」
「お前に会いたくなっちゃったとか?」
「……ですかね?」
「否定しないのかよ、うざ。」
「……朝比奈さんも仁美さんに聞いてみたらいいんじゃないんすか?」
「へいへい。」
俺は急いで髪を乾かし始めた。ここからだと香奈さんの方が先に着きそうだなと時計をチラ見した。付き合った後、改めてカードキー渡したから部屋で待ってるだろうけど、明日はお互いに朝早い日だからどっちにしても急がないとだな。
「じゃあ、朝比奈さん、おつかれーす。」
「おう。お疲れ。」
俺は朝比奈さんに別れを告げて車へと向かった。
――――――――――――――――
私は無添加中心に取り扱っているスーパーに寄り道していた。急に行ってしまうからたぶん夕飯も食べてないまま来そうだったので、さすがにそれは可哀想だなと思い寄ったまでだ。
「冷蔵庫……何残ってたか思い出せないな……。」
私は野菜コーナーを見ながら、メニューに悩んでいた。すると背後から肩をポンポンと叩かれた。誰だろうと振り返るとそこには変装した水河さんがいた。
「え、水河さん?!」
「しぃーっ!香奈ちゃん、声でかい。」
私はやばっと思い、口をふさいだ。
「どうしてここに……?」
「ん?夕飯の買い出し。」
「よく来られるんですか?」
「たまーにね。自炊しなきゃいけない時だけ~。」
水河さんはそう言うと近くにあったトマトを取った。
「へー、水河さんって自炊するんですね。」
「そうだよ~香奈ちゃんみたいな彼女いないから。」
「へ?」
「俺が先に会ってたらなぁ……なんてね。」
「あ、ははは。」
(ど、どこまでが冗談なのかとても分かりにくい……。)
「神山は……優しい?」
「え、あ、はい。」
「ふぅ~ん。彼女はやっぱ特別なのかな?」
「ど、どうなんでしょうか……。」
「神山の中学時代の写真あるけど……見たくない?」
「……っえ、見たい!」
「じゃあ、連絡先教えてよ。」
「えぇーと……。」
(この間の神山の反応を見る感じ、まずいよな……。)
「す、すみません。やっぱり――。」
「寝顔の写真もあるよ?」
「あ、下さい。」
私は欲に勝てずに水河さんと連絡先を交換してしまった。心の中で神山ごめんと唱えた。
「香奈ちゃんってさぁ、神山といて楽しい?」
「……へ?」
「いや、あいつまぁまぁなバスケバカじゃん?絶対にデートとかあんましなさそうだし。」
「あー、確かに家が多いですかね?」
「でも神山がいいんだ?」
「んー、、はい!」
私の返答に水河さんは驚いていた。
「すごい、いい返事。」
「え、あ、なんか照れるな……へへ。」
「あいつにこんないい子、もったいない。」
「逆ですよ!」
「……え。」
「あんなに今までバスケ中心だったのにそこに迎え入れてくれて、優しくしてくれて、私にかける時間もったいないはずなのに……。」
「…………。」
「だから私も隣にいて恥ずかしくない人になります!彼は毎日努力してるから、私も頑張らないとなってなるんです。ある意味切磋琢磨しあってるかなと。」
そこまで私が言うと水河さんは笑いだした。
「はー、久しぶりに涙でた。」
「私、変なこと言いました?」
「いーや。神山が怒る理由がよくわかったよ。あいつ昔から気に入ってるの取ると、すげぇ嫌がるのよ。それが面白くてついついからかっちゃう。」
「へー、水河さんは神山が好きなんですね!」
「…………それは気持ち悪いからやめようか、香奈ちゃん。」
私の発言に水河さんが初めてブラックな顔を見せたので、失言だったなとすぐに反省した。




