十三、突然の来訪
どこもかしこも大学内では賑やかに客に声をかけていた。一般の人の出入りも多いので、子連れ、高校生、夫婦……年齢、性別問わず沢山の人が出店などを楽しんでいた。私は天気にも恵まれて、みんな良かったねって思いながら空を眺めた。
「私の分まで、楽しんでくれたまえ……若人達。」
「おい、香奈、お前も俺と楽しむんだよっ!これ、飲めよっ!」
「……ありがとう。でも、一緒には回らない。」
「まだ始まったばっかだ!諦めないぞっ!」
「いい加減、諦めたら?」
剛力はガハハと笑いながら、熱血男らしくプロテインを飲んでいた。私にはプロテインじゃなく、フルーツサイダーだったのは誉めてあげよう。私は渡されたドリンクを飲み始めた。さっぱりしてて、中に入った黄桃の角切りが一緒に口に入って美味しかった。その間剛力はスタンプラリー参加者に元気に説明していた。悪い奴じゃないんだけどな。受付が終わった彼に私は質問をしてみた。
「……私のどこがいいの……?」
「ん?気になるのか?」
「まぁ……だってそんな出会ってから日も経ってないのに……いささか疑問。」
「それは……香奈の顔と身体が好みだな!……性格も良さそうだしな!」
「…………具体的かつ素直にありがとう。」
(悪いやつじゃないけど……ないな……身体って……。)
「すみませぇ~ん。俺らも参加したいんすけど……。」
「あ、はい……何人……。」
「どぉも!」
「朝比奈……なにし――――。」
私は朝比奈の後ろに気まずそうに立っている人がいた。どうからどう見ても神山だ。私は朝比奈をテントのすみにひっぱり小声で話した。
「あ、あんた、何一緒に来てんのよっ……!」
「え、仁美が誘ってくれたから。1人で来るなんて心細いじゃん?」
「だからって……他にいるでしょーがっ!チームメイト!」
「いつメンじゃん?俺ら。」
「……調子いいことばっか……。」
「おい、香奈、そいつ誰だ……?まさか、、彼氏かっ!?」
私はハッとして振り返った。ヤバい、ここにはさらに面倒で話をややこしくしそうな奴がいたのを忘れてた。
「違うっ!この人達は……高校の……知り合いっ!」
「なんだよ~、焦るじゃん……おいそこのひょうきんなお兄さん、こいつは俺が狙ってるんでダメだからなっ!はっはー!」
(こいつ、余計な事をいいやがるっ……!)
「へぇ~、君、青葉を彼女にしたいんだ……お目が高いね!」
「お!さすが友人、話が分かるな!そうだろ~?顔も身体も好みなんだ!」
そう言うと私の肩をグイッと自分に引き寄せてきた。
「ちょっと……何して……。」
「何だ、香奈!照れてるのか、可愛い奴め。」
「ちが……。」
次の瞬間、腕をぐいっと力強く引っ張られた。そして胸元でキャッチされた。私は恐る恐る上を見上げたら、神山が苛つきながら剛力をサングラス越しに睨んでいた。それを朝比奈が近くで見ながらひゅ~と口笛を吹き、ニヤニヤしながらこちらを見ていた。
「ん?なんだ?」
「そっちこそ、なんすか。」
「彼氏候補だ!」
「あ?」
(剛力……マジでこれ以上……話をややこしくしないで。)
「まま、お二方、落ち着いて……。」
「朝比奈さんこそ、黙ってて下さい。」
「えぇ、俺のお陰で来れたのに?」
「そうだ、友人Aは黙ってろ。」
「~~~~ッンシャアララップ!!!」
私は3人の男どもにはぁはぁしながら叫んだ。みんなして私が叫んだことに驚いて、目をまん丸くしながら固まっていた。
「剛力……。」
「お、おぉ。」
「あんたは待ってる人、対応しなさい。今度、セクハラ発言したら私ここ去るから。」
「……はぃ。」
彼は言われた通り受付に戻った。
「朝比奈……。」
「へ、へい。」
「スタンプラリー、やりに来たんでしょ……うしろ並びな……。」
「あ、はぃ。」
彼は言われた通り再度並び始めた。
「……はぁ。」
「俺には……?」
「はぃ?」
神山は律儀に指示待ちをしていた。
「…朝比奈と並びなよ……。」
「スタンプラリーより香奈さんと話したいんすけど。」
「私……仕事中なんですが……。」
「いつまで?」
「…………い、言わない。」
私は腕組をしながらそっぽ向いた。
(い、言わないってなんだ……子供みたいなこと言ってしまった……大人げない。)
「それじゃ、困る。」
「……こ、困ってみればいい……。」
「じゃあ、あの総合記録で1位取ったら時間貰えます……?」
彼はホワイトボードの本日のスコアと書かれていたのを親指で指差した。
「取れるもんなら取ってみたら……?」
「分かりました。」
彼は素直にそう言うと朝比奈のとこに向かった。朝比奈はえぇマジでと言いながらビビっているようだった。私は再度ホワイトボードを見た終了時刻まで残り2時間。データ集計が終わるまで1時間。わりと強者がいたのでそんな簡単には抜けない記録なはず。
「…………何しに来たんだろ……。」
私は溜め息を漏らしながら普通に業務に戻った。その後も混むことはないけれど、次々にお客さんはやってきた。2時間後、休憩に入るために次の人と交代した。
「香奈っ!俺と休憩したら、全部奢ってやるぞ……?」
「剛力、本当にごめん。そんな気分じゃない…。」
「……お前、さっきのやつに惚れてるんだろ。」
「はぁ?!何、急に……。」
「分かりやす……萎えたぁ~、、もういいや、また後でな。」
そう言うと、彼は手をぴらぴらふりながら去った。あいつマジで見た目だけで狙ってきたのか。でもあの猛烈アタックから逃げられるならいいやと思い、私は中間地点の受付に向かった。ここから北に進むと情報処理学部の建物があり、そのまま向こうに進むと中間地点のテントがある。
「お疲れ様ぁ~。」
「あ、青葉さん!見てくださいよ!すごい人いるんです!」
「……すごい……人?」
私はまさかと思いデータ記録を見た。美術部が作ったアプリでデータが更新されていくので、どんどん最新データがタブレットに届くようになっている。そのタブレットの10項目あるミッションの内、5項目がパンダという名前の人が1位になっていた。
「……ぱ、パンダ……?」
「そうなんです!パンダの仮面をかぶった謎のお兄さんなんです!」
「パンダの仮面……。」
「さっき、どっかの運動部がスカウトしてましたけど断られてましたね。しかもすごーいスピードでクリアしてるんで、これだと最速タイムじゃないですかね。」
「はは……。」
「あ、連れのウサギの仮面の人もなかなかいい感じで、どっちも何者なんでしょうか?」
「ウサギ……はは、わ、私行くね。」
「はい、お疲れ様です~!ちゃんと休憩取ってくださいね!」
「あ、うん、ありがとありがと。」
私はそこから一番近いキャンパス内のラウンジに向かった。自販機でアイスティーを買い、空いてるカウンター席に座った。そしてアイスティーを一口飲んで、一息ついた後、手を合わせてそこにおでこをつけた。
「…………何やってンのよ……あいつら……。」
私はスマホを手に取り、朝比奈に電話した。長い間待ったが出ない。私は3回くらいかけ直してみたが、いっこうに出る気配が無かった。
「……あいつ、絶対にわざとだ……仁美と会う日はマナーにしないの知ってるんだから……。」
私はスマホで時間を確認した。たぶんそろそろ2人があそこに向かうかなと思う場所に先回りしてやろうとラウンジを後にした。




