十二、その後の話
神山にカードキーを返してから2週間くらい経った。その間に彼からの連絡は綺麗さっぱり何も無かった。跡形もなく、私の思いは返事を貰わずして散った。私はというと、もくもくと大学際の準備をしていた。私は教授に頼まれて美術部とのコラボレーションアートの手伝いをしていた。スポーツとアートの融合ということで、学内のあちらこちらをスタンプラリーしながらアートを見るイベントだ。またメイン各所にはスタッフがいて、ミッションのストレッチやら筋トレをしないと次に進めない。結構わりと皆で必死に考えたし、学内の案内もできると大学側も強力的だ。
「青葉さーん、これってどうします……?」
「あー、それはこっちに置きましょうか……。」
美術部の人達とは初めての関わりだったが、皆優しくて親切だった。それに何かしてれば、彼との事を思い出すことも減るので学祭があって良かったなと心の底から思った。ただ一つの面倒事を除いては……。
「香奈っ!!俺も手伝うよーっ!」
「げ。」
「あ、俺に会えて嬉しいんでしょ~?」
彼は同じ学部でラグビーサークルに入部している同級生、剛力大成だ。今まで全然畑違いだというくらいに関わりがなかったのに今回の件で繋がった出会い。ただ一緒に作業するだけなら良いのだが……。
「学祭、俺と……回るよね……?」
「回らない。」
「なんで、彼氏いないって言ったじゃん。」
「いても、いなくても、回らない。」
「つめたーい、けど、やっぱ可愛いな~。」
「………………。」
私が面倒で無視をしていると、遠くから彼を呼んでいる人がいた。
「……あ、じゃあ、行く!……おれ、諦めねぇからああぁ!」
彼は大声で叫びながら去って行った。私もあれくらい諦めなかったら……いや神山はうざがって会ってくれなくなるな……。
「かんちゃん、何あいつ……。」
いつの間にか隣で美咲がドン引きしながら話しかけてきた。
「知らん……ただ、ほぼ毎日あの調子……。」
「げぇ……。」
「しかも周りは楽しんで、当日一緒のブース担当にされてる……嫌すぎて死ぬ……。」
「あなた、頑張るとこ違うんじゃない?」
「……ははは。」
「……神山君……否定してたね……わりと礼儀正しく…。」
「じゃないと練習の妨げになるからね、人気者って大変だよね~。」
「……かんちゃん。」
彼はあれから記者の質問に堂々と答えていた。元アナウンサーの人じゃない事と彼女でも何でもなくただのインストラクター的な人だと……。
「さっ!、用事があるから行くねっ!」
「うん……。」
私は美咲と別れて、教授の部屋に向かった。今日は1日授業がないのでお願いして、卒論作成の場所を貰った。家だとなんかすぐにだらけそうになるし、外だとお金もかかるからとお願いしたら、今回の手伝いのお礼という条件で借りれた。
「冷房あって、静かで、飲み物飲める……有り難い。」
私は始める前にお昼を食べようとおにぎりを食べ始めた。そしてテレビでも見ようかなとリモコンで電源を入れた。
『これからシーズン到来のバスケットボールリーグから人気のお二人を突撃インタビューします!朝比奈選手と神山選手です!』
「…………タイミングやば。」
久しぶりに見た彼は出会った頃のように淡々と立っていた。それに対して朝比奈はテンション高めに挨拶していた。なんて両極端な2人なんだろうか……。
『今日はお二人にこちらのBOXから質問を選んでもらい、どんどん答えてもらいます!では、朝比奈選手からどうぞっ!』
『うぁわ~、何が出るか楽しみっすね……じゃあガッツリ奥からぁ~。』
(テレビ慣れがすごい……知り合いのこの姿……なんか複雑……いや朝比奈はプライベートも変わらないか。)
『んー?休みの日は何してますか……?わりと朝から散歩してますね!カフェも好きなんで、モーニング巡りしてますっ!』
(あぁ……なんか仁美が会う時間作る為に、朝は散歩してるって言ってたかも……。)
『へぇ~!最近はどんなカフェ行きました?』
『フレンチトーストの店ですね!旨かったです!』
『朝からお洒落ですねっ……では、交代交代にいきましょう!神山選手お願いします。』
「…………。」
彼は何も喋らないでBOXに手を入れていた。
『……好きな食べ物は何ですか……?』
『どうですか?何か、ありますか?』
『最近は豆腐のカプレーゼ……っす。』
「……え、、。」
『チーズは良く聞きますけど、豆腐なんですね!やはりストイックと噂の神山選手らしいですねぇ。』
『……ども。』
『じゃあ、次は――――――。』
私は神山の話していた料理について考えていた。
「……あれのこと……?黙って食べてたから、そんな好きじゃないのかと思ってた……。」
『――――――らしいですね。じゃあ、神山選手お願いします。』
『………………最近あった嬉しい事……。』
『何でもいいですよぉ?』
『好きないくらが沢山食べれたこと……。』
「………………。」
『お、いくらも好きなんですね!やっぱアスリートだから日頃はおさえてらっしゃるんですかね。甘いものも控えてますか?』
『控えてますけど……少し前にドーナッツを久しぶりに食べました……すげぇうまかったので、、また、食べたいっすね。』
『ええ!お前、ドーナッツなんて食べんの?!誘えよっ!』
『……朝比奈さん……うるさいっす。』
『こいつ、いっつもぶっきらぼうでひどいっすよねぇ?!』
『あはは、じゃあ最後にお二人から――――――。』
私はそこでブチッとテレビの電源を切り、食べかけのおにぎりをテーブルに置いた。
「…………やめて、よ……期待しちゃうじゃん……。」
私は椅子の上で膝を抱えて項垂れた。
――――――――――――――――――――
「……おい、さっきのやつ、全部青葉関連だろ……。」
「…………さぁ。」
俺達は通路を歩きながら控え室に向かっていた。
「はぁ……お前さぁ……不器用すぎねぇ?」
「器用だから表彰されてるんすけど。」
「ちがう、ちがう……バスケじゃなくて、恋愛な。」
「またそれっすか……。」
「今ならまだ間に合うぞ……。」
「……無理って言われたんで……。」
「それはお前が恋愛事に興味ない場合だろ……。」
「間違ってたら……どうするんすか……?」
「は?」
俺はその場で立ち止まって、下を向きながら頭をかいた。
「……違ってたら……また……傷つけるだけじゃないっすか。」
「…………。」
「中途半端に近付いて、、また泣かせるくらいなら……もう関わらないほうが……い゙っ゙!」
俺が話してる途中で後頭部を朝比奈さんがなかなかの力でチョップしてきた。
「いってぇすけど……。」
「だぁかぁらっ!そういうとこが不器用だっつってんだよっ!それを青葉に聞いた上で決めろってんの!!」
「…………今さら、連絡……い゙っ゙てぇ……。」
今度は太ももを蹴られた。
「俺を誰だと思ってんだよ……?」
「……騒がしくて、しつこい、人騒がせな人。」
「ね、泣くよ?」
「……でも、誰よりも気にかけてくる優しい人……。」
「……えー、いきなりのデレかよ。」
「で、何してくれるんすか?」
「ふふ、これを見よっ!」
俺は朝比奈さんのスマホ画面を見て、なるほどと呟いた。




