世界平和のために
オススメしたかったという言葉通り、とても美味しかったそのお店でテイクアウトもやっていたのでサンドイッチを購入して、もう少し街を見てから帰ると伝えると、アキラもシビもき合ってくれるそうで有難くその申し出をうけた。
もう一度街の外れまで歩きたいという私にアキラも首をかしげつつ付き合ってくれた。
「魔物は村には入って来ないのね。集団で襲ってくることはないの?」
「ああ、滅多にないから安心していい。」
「なるほど…」
滅多にということはたまにある、との事だろうが…半日街を回って思うことが沢山あったが、これ以上は人がいない訳では無いここでアキラに確認するよりサーシャのいる部屋で聞いた方が良いだろう。
大声で話すことでもないので、隣に立つアキラに1歩近づいて裾を引いた。
「ねえアキラ、」
「へっ?」
「部屋まで一緒に来てくれる?」
見上げると何故か驚いた顔をしていたが、ダメだったらサーシャと話して報告すればいいかと小首を傾げたら、シビにぺろりと頬を舐められた。
「ふふ、シビもね。今後のことで少し話したいの。」
「あ、そ、そうか。そうだよな。構わない。」
どうやら一緒に来てくれるらしいアキラにお礼を言って部屋までたどり着き、まだ集中していたサーシャに買ってきたサンドイッチと飲み物を渡して部屋に防音の魔法をかけた。
「外で聞くのはどうかと思ったから聞かなかったのだけど、なぜ魔物は街を襲ってくることが無いのに皆魔物を恐れているのかしら。」
街で話を聞いた限りだと、街の中にいる限り平和であること。ならば魔物よけのようなものが設置してあるのかと思いきやそういうものは一切ない、ということが分かった。
魔物の方はこちらのテリトリーには入ってこない。
つまり、魔物が人間を襲うのは人間がその魔物のテリトリーに入りこむ、または余程お腹がすいた時、ということである。
そう考えるとこちらさえ上手くやれば魔物に襲われることもないのではないか。むしろテリトリーを荒らす人間の方が…と思ってしまうのだ。
サーシャとアキラはどう思っているのだろう。
ベッドに座る私の膝に乗ったシビは私と同意見らしい。抱っこしてとばかりにこちらに前足を上げてアピールしてきた。もちろん可愛いので抱いた。
「私は…そこまで考えたことなかった。」
「確かにカレンの言うことも一理あるかもしれないな。」
二人とも、話を真剣に聞いてくれて助かった。魔物は悪なんだよ!ってタイプでは無いとは思ったけれど、昨日来たばっかりの癖にと言われたら返す言葉が無いからだ。
「魔王というものが本当にいるならば、話をしてみたい。何故こちらに魔物を送り込んでいるのか。勇者が課せられた魔王を倒す、というものは、魔王を殺す、ということなのか。果たしてそれで世界が平和になるのか。幸せなのは人間だけな気がしない?それじゃあ世界を救ったと言えるのかしら。」
疑問だらけではあるが、旅をしながら答えを見つけたい。一緒に考えて欲しい、そう伝えるとサーシャもアキラも頷いてくれてホッとした。