第64話 いざ尋常に
ギルドへと入ると、何となく予想はしていたがやはり周りの冒険者からの視線が集まる。
いつまで経ってもこの視線には慣れない。
「じゃあ早速演習場に行きましょうか」
「……あ、そうですね、多分エミリアとジュリもいると思いますから」
「えっ? エミリアちゃんは分かるけど、ジュリってあの狂犬の事よね?」
憐れジュリ、やはり狂犬という認識で皆に知れ渡っているのか。
「まあそのジュリで合ってますけど、一緒のパーティーを組んだんですよ」
「……また女の子を取り込んだの?」
「またって何ですか!? ジュリは冒険者としての腕は確かですし色々あってパーティーを組む事になっただけですよ!?」
サラッとマイラさんにとんでもない事を言われて思わず大声で反論する。
一体マイラさんの中での俺の人物像はどうなっているんだろうか? 一度じっくりと話し合わなければ……。
割と真剣にそんな事を考えながら演習場へと向かう。
階段を降りて今では見慣れた演習場へと入ると数人の冒険者達がそれぞれ訓練をしていた。
そしてその一角にエミリアとジュリの姿を見つけた。
「エミリア、ジュリ、お疲れ様」
声を掛けると二人は揃って振り向くと手を止めて駆け寄って来る。
心無しか二人共表情が一変して輝いている様に見えるのは気のせいだろうか?
「アル!」
「うわっ!?」
エミリアは駆け寄って来た勢いそのままに抱き付いて来た。 防具の上からでも分かる柔らかな膨らみに思わず慌てそうになってしまうが何とか冷静に対処する。
「特訓は順調?」
「うん! ジュリの教え方が上手だから! あっ、アルも上手だからね!」
「ははっ、ありがと……ジュリもありがとな、エミリアの特訓の相手をしてくれて」
「と、友達の為なら大丈夫です。 それに、形はどうであれ、少しでもエミリアとアル様に恩を返さないといけないから」
「別に気にしなくても良いんだけどなぁ……それより、やっぱりアル様って呼び方は変わらないのか?」
「当然です! 私にとってアル様はアル様ですから!」
「あ、そう……」
最早何を言っても変わらないだろう、溜息を吐きながら諦めた。
「ねぇ、本当にパーティーを組んだだけなの?」
後ろからマイラさんがジト目で尋ねて来た。
いや、言いたい事は分かるけど、本当にそうなんですよ?
「あ、こんにちは」
「こんにちはエミリアちゃん、それからそちらはジュリちゃん……だったわね? 私はマイラ、冒険者でアルファンド君とエミリアちゃんとはこの間知り合ったの、よろしくね」
「…………」
名前を名乗り手を差し出すマイラさんだが、ジュリは警戒する様に鋭い視線でマイラさんを睨む。
「こらジュリ、失礼だろ?」
「あぅ!?」
ジュリの性格は知ってるからこうなるのは分かっていた。
仕方なくジュリの頭に軽くチョップをしてマイラさんの前へと誘導してやる。
その際、本当に軽くやっただけなのに頭を押さえながら何処か恍惚とした表情で見てくるジュリになるべく目を合わせない様にする。
「ほら、きちんと挨拶はしないと」
「アル様がそう言うなら……冒険者のジュリよ」
「……えっと、よろしくね」
互いに握手をする二人だが、マイラさんは若干引いた様な表情で俺を見てきた。
やめてくれ、そんな目で俺を見ないでくれ……!
「ところでアル? アルも特訓をしに来たの?」
「ん? あぁ、さっき剣の受け取りに行ったんだけど行く時にマイラさんに会って、それで剣の確認も兼ねてマイラさんと試合をね」
「アル様? この人のランクは……?」
「Bランク、それにオルガとパーティーを組んでる格上の冒険者だよ」
俺の言葉にジュリが鋭い視線でマイラさんを見た。
「そ、そんなに言われる程じゃないんだけどね~」
「アル様、大丈夫ですか? いくら剣が治ったと言っても、それに今日は止められるあの人がいないし、私には恐らく止められないと思います……」
ジュリの言いたい事は何と無く理解した。
前のオルガとの一戦の様に、再び剣を折られる事と怪我をするのではと心配してくれているのだ。
以前はアーリアさんが間に割って入ってくれたから何とかなったが、今日はいないのだ。
「大丈夫だよ、この間のはあいつが本気になったからで、今日はあくまで試合だからそこまで大した事にはならないから」
「……それなら、良いのですが」
「じゃあマイラさん、始めましょう」
「えぇ、勿論よ」
俺の言葉にマイラさんは腰に携えているポーチに手を入れ、そこから二本の剣を取り出した。
当然の様にマジックポーチを持っている事には最早驚かない、それよりも武器の方だ。
二本の剣は通常の剣の半分程の長さしか無い、所謂短剣と呼ばれる剣である。 それを両手に構え、マイラさんはこちらを見据える。
両手剣使い、初めて見る……面白そうだ!
警戒は怠らないが、初めて見る武器に気分が高揚するのを隠せない。
同じく剣を構えながら、俺はマイラさんに対峙した。




